手湿疹とは
手湿疹とは、
外からの物理的刺激や、
アレルギー物質の接触
によって生じる湿疹と定義されています。
(日本皮膚科学会手湿疹診療ガイドラインより抜粋、一部改変)
手湿疹は、
アレルギー性より、外からの物理的刺激によるものが頻度が高い。
男性より、女性に多い。
痒みが強いことが多く、掻きむしることで悪くなりますので、早期の痒み治療を行います。
治療後にも、再発予防に正しいケアを継続することが大切です。
手湿疹の分類
手湿疹の原因による分類
①外からの刺激
最も多く、手湿疹の7割を占める。
皮膚の乾燥やガサガサ、軽度の赤みからはじまることが多い。
刺激が強かったり、長期に及ぶことで、湿疹用の赤み・小水疱がみられる。
②化学物質のアレルギー
化学物質のアレルギーによる手湿疹は、外からの刺激によるものに比べて赤み・小水疱・痒みの程度が強いことが多い。
アレルギー物質が接触した部位から発症するので、指先・親指・手背側に多い。
アレルギー物質の接触により、手首や前腕にも生じる。
③タンパク質抗原に対するアレルギー
皮膚に触れたアレルギー物質に対して、即時型アレルギーを生じる。
蕁麻疹と痒みを生じる。
④アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の患者に生じる。
アトピー性皮膚炎患者は、皮膚バリア機能が低下しやすいため、刺激性の手湿疹を起こしやすい。
手湿疹の見た目による分類
① 角化型手湿疹
中年以降の男性に多い。
皮が固くなったり、ガサガサしたり、亀裂を生じたりする。赤み・小水疱は見られない。
同様の症状が足底にも見られる。
あきらかな原因は不明なことが多い。
② 進行性指掌角皮症
指の先端がガサガサになる。
利き手の、親指・人差し指・中指に多い。
③ 貨幣状型手湿疹
手背に円形の湿疹ができる。
④ 汗疱型手湿疹、異汗性湿疹
両手の手のひら・指の横側に、小水疱が多発し、強い痒みがある。
初期は赤みが目立たず、小水疱が単独で生じる。
次第に失神が増悪して、赤みも目立つようになる。
しばしば、足底にも同様の病変が見られる。
汗の影響もあり、夏に増悪する傾向がある。
ニッケルなどの金属アレルギーを伴うこともある。
⑤ 乾燥・亀裂型湿疹
手のひら・指全体の感想と亀裂が特徴の慢性手湿疹。
通常、小水疱は無い。
乾燥の影響もあるため、冬に増悪することが多い。
手湿疹の鑑別疾患
手の水虫
片手にだけ生じることが多い。
顕微鏡検査で診断できます。
疥癬
赤いポツポツ、ガサガサがみられる。痒みが強い。
手以外の他部位にも、赤み・強い痒みが見られることが多い。
顕微鏡検査で診断できます。
乾癬
白いガサガサが強い赤みを生じる。全身い多発する。
爪乾癬は、爪とその周囲にのみ限局する。
掌蹠膿疱症
手のひら・足の裏に、膿疱が多発する。
長期に慢性的に経過する。
鎖骨や胸骨に関節炎よる痛みを生じることがある。
皮膚筋炎
手背の指関節部分にガサガサした赤みを生じる(ゴットロン兆候)。
指の横側にガサガサした赤みを生じる(メカニックハンド)。
爪周囲の赤みを生じることが多い。
その他の身体初見、皮膚病理検査などで総合的に診断する。
手湿疹の院の治療方針
効果・安全性のバランスがよく、保険適応のものが推奨度が高くなっています。
推奨度が高いものから順番に治療を行います。
手湿疹の治療
皮膚科学会の診療ガイドラインを準拠した治療STEP。
手湿疹の治療 STEP1
まず最初に行います。
適切な診断・評価 |
原因となる悪化要因、刺激因子があれば、それらをさけます。 |
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生活指導 |
保湿剤による皮膚バリア機能の改善。 グローブを用いたアレルゲンや外的刺激の回避。 |
ステロイド外用 |
もっとも中心となる基本的な治療薬剤です。 |
手湿疹の治療 STEP2
次に行う治療です。
ステロイド外用 |
痒みが強い場合は、一時的に「強め」にランクアップします。 適切な外用頻度、塗布量を守ることも大切です。 |
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タクロリムス |
痒みが落ち着いてきた場合は、ステロイドからの変更を考慮します。 炎症が強い時に使用すると刺激感が強いため、維持期に使用します。 |
JAK阻害薬 |
2020年に新しく出た、外用剤です。 痒みが落ち着いてきた場合は、ステロイドからの変更を考慮します。 |
抗ヒスタミン薬の内服 |
かゆみを抑えるために、補助的に使用します。 長期間でも安全に使用できます。 |
手湿疹の治療 STEP3
外用治療でコントロール出来ないときに、外用治療と併用します。
肝障害や腎障害のため内服治療が出来ないときなどでも使用できる安全性の高い治療です。
ナローバンドUVB |
皮疹が広範囲の時に、良い適応です。 |
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エキシマライト |
小範囲に強い308nmを照射する最新の光線治療です。 これまでの治療より効果が強く、従来の紫外線治療で無効だった場合でも効果が出ることがありあます。 病変部位のみに照射が出来るため、安全性にも優れています。当院で可能です。 |
手湿疹の治療 STEP4
外用治療でコントロール出来ないときに、外用治療と併用します。
シクロスポリン |
乾癬やアトピー性皮膚炎などの皮膚炎疾患治療に広く使用されています。 治療効果は高いですが、腎機能障害を起こすことがあるため定期的な血液検査が必要です。また、高血圧になることがあるため、血圧測定も必要です。いずれも、早期発見して休薬すれば改善します。 |
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ステロイド内服 |
一時的な症状緩和に用いることがあります。 効果は強いですが、副作用のため長期間連続内服することはありません。 |