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帯状疱疹

HERPES ZOSTER
最終更新日:2025-10-23

体の片側がピリピリと痛み、数日後に赤い発疹や水ぶくれが出てきたら、それは「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」かもしれません。帯状疱疹は、多くの人が子供の頃にかかる「水ぼうそう」のウイルスが原因で起こる、痛みを伴う皮膚の病気です。
特に50歳以上で発症率が高まり、80歳までには約3人に1人が経験すると言われています 。しかし、近年では過労やストレスから20代~40代の若い世代にも増えています 。
治療が遅れると、皮膚の症状が治った後も数ヶ月から数年にわたって痛みが続く「帯状疱疹後神経痛(PHN)」というつらい後遺症に悩まされることもあります。
この記事では、帯状疱疹の初期症状の見分け方から、原因、最新の治療法、後遺症のリスク、そして「人にうつるの?」「何科に行けばいい?」といったよくある疑問まで、専門家の視点から網羅的に、そして分かりやすく解説します。ご自身やご家族の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。

帯状疱疹とは
帯状疱疹の症状
帯状疱疹の原因
帯状疱疹の治療
最も注意すべき後遺症「帯状疱疹後神経痛(PHN)」とは
日常生活での注意点
よくある質問

帯状疱疹とは?多くの人が発症しうる「痛みを伴う皮膚の病気」

帯状疱疹とは

帯状疱疹とは、体の左右どちらか一方に、帯状に痛みを伴う赤い発疹と水ぶくれが現れる皮膚の病気です 。この病気の原因は、多くの人が子供の頃に感染する「水ぼうそう(水痘)」と同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus, VZV)」です 。
水ぼうそうが治った後も、このウイルスが体から完全に消えることはありません。ウイルスは症状を出さない「潜伏」状態で、背骨の近くにある神経の根元(神経節)に生涯にわたって静かに潜み続けます 。
普段は体の免疫力によってウイルスの活動は抑えられていますが、加齢や過労、ストレスなどによって免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び目を覚まし、活動を再開します。これをウイルスの「再活性化」と呼びます 。
再活性化したウイルスは、潜んでいた神経節から一本の神経を伝って皮膚へと移動し、そこで増殖して神経と皮膚に強い炎症を引き起こします。これが帯状疱疹の発症の仕組みです 。つまり、帯状疱疹は誰かから新たに感染するのではなく、自分自身の体内に元々潜んでいたウイルスが原因で発症する「内なる敵」による病気なのです。
日本の成人の9割以上がこのウイルスを体内に持っているとされており、ほとんどの人が帯状疱疹を発症する可能性を秘めていると言えます 。決して珍しい病気ではなく、誰の身にも起こりうる非常に身近な疾患です。

帯状疱疹と水ぼうそうの関係

  1. はじめて、水痘・帯状疱疹ウイルスに感染した時は、水ぼうそうとして発症します。
  2. 水ぼうそう治癒後も、ウイルスは体内の神経節に潜伏し続けます。
  3. 加齢やストレスが引き金になって、ウイルスに対する免疫力が低下すると、ウイルスが再活性化して帯状疱疹を発症します。

帯状疱疹の発症年齢

発症年齢は、60歳代の発症が最多ですが、健康な若者でも発症します。(※1)

帯状疱疹の症状と経過:初期症状から治るまで

帯状疱疹の症状は、時間とともに特徴的な経過をたどります。初期症状に早く気づき、適切な治療を開始することが、重症化や後遺症を防ぐ上で最も重要です。ここでは、症状の経過を段階的に解説します。(※本記事では画像を掲載していませんが、実際のホームページでは各段階の写真を掲載することを推奨します)

前兆となる初期症状

帯状疱疹の多くは、発疹が現れる前から始まります。体の左右どちらか一方の特定の場所に、以下のような前触れとも言える症状が現れるのが特徴です 。

  • 神経痛のような痛み: 皮膚の奥が「ピリピリ」「チクチク」「ズキズキ」と痛む 。
  • 皮膚の違和感・かゆみ: 明確な痛みではなく、かゆみやしびれ、触ると違和感があるといった感覚異常 。
  • 全身症状: 人によっては、発熱、頭痛、リンパ節の腫れ、全身のだるさなど、風邪に似た症状を伴うこともあります 。

これらの神経症状は、ウイルスが神経内で活動を再開し、炎症を起こし始めているサインです。この痛みや違和感は、発疹が現れる数日から1週間ほど前から続くことが一般的です 。この段階では皮膚に異常がないため、筋肉痛や内臓の病気などと間違われることも少なくありません。

特徴的な皮膚症状

初期の神経症状から数日経つと、その場所に特徴的な皮膚症状が現れます。

  1. 赤い発疹(紅斑): まず、少し盛り上がったような赤い発疹がポツポツと現れます 。
  2. 水ぶくれ(水疱): その後、発疹の上に小さな水ぶくれができます。この水ぶくれは、最初は透明な液体を含んでいますが、次第に膿が溜まって黄色く濁ることもあります(膿疱) 。
    帯状疱疹
  3. 帯状の広がり: これらの発疹や水ぶくれは、一本の神経が支配する皮膚の領域(デルマトーム)に沿って、帯状に広がります。この特徴的な見た目が「帯状疱疹」という名前の由来です 。
  4. 片側性: 最も重要な特徴は、症状が体の中心線(正中線)を越えず、必ず左右どちらか一方にだけ現れることです 。

この時期になると、ウイルスの活動がピークに達し、痛みも最も強くなる傾向があります。「焼けるような」「電気が走るような」と表現される激しい痛みで、夜も眠れなくなる人もいます 。

症状の経過と治るまでの期間

皮膚症状が現れてからの経過は以下の通りです。

  • 痂皮(かさぶた)化: 水ぶくれは1週間から10日ほどで破れ、その後乾いて黒っぽいかさぶたになります 。
  • 治癒: かさぶたが自然に剥がれ落ちると、皮膚の症状は治癒に向かいます。発疹が現れてから皮膚が元に戻るまで、通常は約3週間から1ヶ月程度かかります 。ただし、炎症が強かった場合は、シミ(色素沈着)や傷跡が残ることもあります。

症状のピークは発症から1~2週間とされています 。この期間は特に安静が必要です。

発症しやすい部位

帯状疱疹は、神経がある場所ならどこにでも発症する可能性がありますが、特に多いのは胸から背中、腹部といった胴体部分です 。その他、顔、首、腕、脚にも現れます 。
特に注意が必要なのは、顔面に発症した場合です。

  • 目の周り(三叉神経第一枝領域): 角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎などを引き起こし、視力低下や最悪の場合失明に至る危険性があります 。
  • 耳の周り: 顔面神経麻痺、難聴、めまいなどを特徴とする「ラムゼイ・ハント症候群」を発症することがあります 。

顔に帯状疱疹を疑う症状が出た場合は、合併症のリスクが非常に高いため、一刻も早く医療機関を受診することが極めて重要です。

帯状疱疹の主な原因:ストレス・疲れによる免疫力の低下

帯状疱疹が発症する直接的な引き金は、体内に潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することですが、その根本的な原因は「免疫力の低下」にあります 。健康な状態では、免疫システムがウイルスの活動をしっかりと抑え込んでいます。しかし、何らかの理由でこの監視の目が緩むと、ウイルスは待ってましたとばかりに暴れ出します。
では、なぜ免疫力は低下するのでしょうか。主な原因は以下の通りです。

加齢が最大のリスク因子

帯状疱疹の最も大きなリスク因子は加齢です 。年齢とともに免疫機能は自然と低下していきます。そのため、50歳を過ぎると発症率が急激に高まり、年齢が上がるほど重症化しやすく、後遺症である帯状疱疹後神経痛にも移行しやすくなります 。

過労、ストレス、睡眠不足が引き金に

現代社会において、年齢に関わらず帯状疱疹の引き金として非常に多いのが、過労や強い精神的ストレス、そして睡眠不足です 。特に、働き盛りや子育て世代である20代から40代で発症するケースが増えている背景には、これらの生活習慣の乱れが大きく関わっています 。大きな仕事が終わった後や、介護などで心身ともに疲弊している時など、緊張の糸が切れたタイミングで発症することも少なくありません 。

その他の原因

加齢や生活習慣以外にも、以下のような要因が免疫力を低下させ、帯状疱疹の原因となることがあります。

病気による免疫低下

がん、糖尿病、膠原病などの持病があると、免疫機能が低下しやすくなります 。

薬剤の影響

がんの化学療法や、臓器移植後、自己免疫疾患などで使用される免疫抑制薬は、ウイルスの再活性化を誘発することがあります 。

外傷や手術

大きな怪我や手術が体に与えるストレスも、一時的に免疫力を低下させる一因となり得ます。

このように、帯状疱疹は単なる皮膚の病気ではなく、体全体の健康状態を映し出す「警告灯」のような側面を持っています。特に若い世代で発症した場合は、自身の生活習慣を見直し、体が休息を求めているサインとして真摯に受け止めることが大切です。

帯状疱疹の治療法:早期発見・早期治療が後遺症を防ぐ鍵

帯状疱疹の治療において最も重要なことは、「いかに早く治療を開始するか」です。治療の開始が早ければ早いほど、ウイルスの増殖を抑え、症状の悪化や合併症、そして最も避けたい後遺症である帯状疱疹後神経痛(PHN)のリスクを大幅に減らすことができます 。

治療の基本は「抗ウイルス薬」

帯状疱疹治療の中心となるのは、ウイルスの増殖を直接抑える「抗ウイルス薬」の内服です 。バラシクロビルやファムシクロビル、アメナメビルといった薬剤が一般的に用いられます 。これらの薬は、体内でウイルスが増えるのをブロックすることで、皮膚症状や痛みの期間を短縮し、神経へのダメージを最小限に食い止める働きをします。
症状が非常に重い場合や、顔面麻痺などの合併症が見られる場合、免疫力が著しく低下している患者さんなどでは、入院して点滴による抗ウイルス薬の投与が行われることもあります 。

発症後72時間以内の受診が重要

抗ウイルス薬の効果を最大限に引き出すためには、皮膚に発疹が現れてから72時間(3日)以内に服用を開始することが理想的とされています 。
なぜこの「72時間の壁」が重要なのでしょうか。それは、帯状疱疹のウイルスは発症初期に爆発的に増殖し、神経にダメージを与えていくからです。抗ウイルス薬はウイルスを殺すのではなく、増殖を止める薬です。そのため、ウイルスが増えきってしまい、神経が広範囲にわたって傷つけられた後では、薬を飲んでも手遅れになってしまう部分が出てきます。この取り返しのつかない神経ダメージが、後の帯状疱疹後神経痛の原因となります。
「ただの湿疹かな?」と様子を見ている時間が、後々の長い痛みに繋がる可能性があります。体の片側に痛みを伴う発疹を見つけたら、迷わずすぐに医療機関を受診してください。

痛みを和らげる治療

帯状疱疹の痛みは非常に強いため、抗ウイルス薬と並行して、痛みをコントロールする治療も行われます 。

鎮痛薬

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどが用いられます。

神経障害性疼痛治療薬

痛みが強い場合は、神経の過剰な興奮を抑えるプレガバリンなどの薬が初期から併用されることもあります。

神経ブロック

痛みが極めて激しい場合や、帯状疱疹後神経痛への移行リスクが高いと判断された場合には、痛みの専門家であるペインクリニックで「神経ブロック注射」が行われることがあります 。これは、痛みの原因となっている神経の近くに局所麻酔薬を注入し、痛みの伝達を遮断する治療法です。

治療期間と完治までの目安

抗ウイルス薬の服用期間

標準的な治療では、7日間服用します 。症状が軽くなったように感じても、ウイルスを完全に抑え込むために、自己判断で中断せず必ず処方された日数分を飲み切ることが非常に重要です 。

皮膚症状が治るまで

皮膚の発疹や水ぶくれが治癒するまでには、通常約3週間~1ヶ月かかります 。

治療を開始しても、すぐに痛みや発疹が消えるわけではありません。抗ウイルス薬が効き始めるまでには2~3日かかるため、焦らずに安静を保ち、医師の指示に従うことが大切です 。

最も注意すべき後遺症「帯状疱疹後神経痛(PHN)」とは

帯状疱疹の治療で最も警戒すべきなのが、後遺症として残る「帯状疱疹後神経痛(Postherpetic Neuralgia: PHN)」です。これは、帯状疱疹の皮膚症状がすっかり治ったにもかかわらず、その場所に慢性的な痛みが続いてしまう状態で、患者さんの生活の質(QOL)を著しく低下させる、非常につらい合併症です 。

皮膚が治った後も続くつらい神経の痛み

PHNは、一般的に帯状疱疹の発疹が治癒してから3ヶ月以上経過しても痛みが持続する場合に診断されます 。帯状疱疹を発症した患者さんのうち、約5~20%がPHNに移行すると報告されています 。
PHNの痛みは、急性期の痛みとは性質が異なります。ウイルスとの戦いが終わった後に残された「神経の傷跡」が原因で、神経そのものが異常な興奮を起こし、痛みの信号を脳に送り続けてしまうのです。
その痛みは多彩で、しばしば以下のように表現されます。

持続的な痛み

「焼けるような」「締め付けられるような」「ジンジンする」痛みが絶え間なく続く 。

突発的な痛み

「電気が走るような」「刺すような」鋭い痛みが突然襲ってくる 。

アロディニア

PHNの最も特徴的でつらい症状の一つです。通常では痛みを感じないような、衣服が擦れる、風が当たる、シャワーを浴びるといった軽い刺激に対して、激しい痛みを感じてしまいます 。

これらの痛みによって、睡眠障害、うつ状態、日常生活への意欲低下などを引き起こすことも少なくありません。

PHNになりやすい人の特徴

誰もがPHNになるわけではありません。以下のような特徴を持つ人は、リスクが高いとされています。

高齢者

60歳以上の方は特にリスクが高く、年齢とともに発症率も痛みの重症度も増す傾向があります 。

急性期の症状が重かった人

発症時の皮膚症状(発疹や水ぶくれ)が広範囲で重症であったり、急性期の痛みが非常に強かったりした場合は、それだけ神経へのダメージが大きかったことを意味し、PHNに移行しやすくなります 。

治療の開始が遅れた人

抗ウイルス薬の開始が遅れると、ウイルスの増殖を許し、神経へのダメージが深刻化するため、PHNのリスクが高まります 。

顔面に発症した人

特に顔(三叉神経領域)の帯状疱疹はPHNに移行しやすい部位とされています 。

PHNの治療法と痛みが続く期間

PHNの治療は、急性期の痛み止めとは異なり、神経の痛みに特化した専門的なアプローチが必要になります 。

薬物療法

神経の異常な興奮を鎮めるための薬が中心となります。抗けいれん薬(プレガバリン、ミロガバリンなど)や、一部の抗うつ薬(三環系抗うつ薬など)、医療用麻薬(オピオイド)などが用いられます 。

神経ブロック療法

薬物療法で効果が不十分な場合、ペインクリニックで神経ブロック注射が行われます 。

その他の治療

塗り薬(リドカイン貼付剤など)やレーザー治療、理学療法なども組み合わせて行われることがあります 。

PHNの痛みが続く期間は個人差が非常に大きく、数ヶ月で軽快する人もいれば、1年以上、場合によっては数年から生涯にわたって痛みが続く人もいます 。しかし、適切な治療を根気強く続けることで、多くの場合は痛みをコントロールし、日常生活を取り戻すことが可能です。諦めずに専門医に相談することが重要です。

日常生活で気をつけるべき7つのポイント

帯状疱疹を発症してしまったら、医療機関での治療と並行して、日常生活でのセルフケアも回復を早めるために非常に重要です。ここでは、悪化を防ぎ、スムーズな回復を促すための7つのポイントをご紹介します。

1. 安静第一、十分な睡眠を

帯状疱疹は免疫力の低下が引き金です 。体がウイルスと戦う力を最大限に発揮できるよう、何よりもまず安静にし、十分な睡眠と休養をとることが大切です 。特に症状のピークである発症後10日~15日間は、無理な仕事や運動は避け、心身ともにリラックスして過ごしましょう 。

2. 免疫力を高めるバランスの良い食事

体の内側から免疫力をサポートするために、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう 。免疫細胞の約7割は腸に集中していると言われています 。腸内環境を整える発酵食品(ヨーグルト、納豆など)や食物繊維(野菜、海藻類)、そして体の基礎を作るタンパク質(肉、魚、大豆製品)、ウイルスの活動を抑える抗酸化作用のあるビタミン類(緑黄色野菜、果物)などを積極的に摂るのがおすすめです 。

3. 患部は冷やさず、温める

帯状疱疹の神経痛は、冷やすと悪化することがあります 。冷えによって血行が悪くなると、痛みが強まる傾向があるためです 。クーラーの風が直接当たるのを避けるなど、患部を冷やさないように注意しましょう。 逆に入浴などで体を温めると血行が促進され、痛みが和らぐことが多いです 。ただし、熱すぎるお湯は刺激になるため、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるのが良いでしょう。

4. 水ぶくれは絶対に潰さない

水ぶくれの中には、ウイルスがたくさん含まれています。自分で潰してしまうと、そこから細菌が入り込んで化膿(二次感染)したり、傷跡が残りやすくなったりする原因になります 。かゆみや痛みが気になっても、絶対に掻いたり潰したりせず、自然に乾いてかさぶたになるのを待ちましょう。衣類で擦れてしまう場合は、清潔なガーゼで優しく保護するのが有効です 。

5. アルコールやカフェインは控える

アルコールは血管を拡張させ、炎症を悪化させる可能性があります 。また、コーヒーなどに含まれるカフェインは、交感神経を刺激して深い睡眠を妨げ、体の回復を遅らせることがあります 。症状が落ち着くまでは、飲酒やカフェインの過剰摂取は控えましょう。

6. 周囲への感染対策を忘れずに

帯状疱疹のウイルスは、水ぼうそうにかかったことのない人に「水ぼうそうとして」うつる可能性があります(詳細は後述)。感染を防ぐため、以下の点に配慮しましょう。

  • タオルや食器の共用は避ける 。
  • 入浴は家族の中で最後にする 。
  • 水ぶくれを触った手で、他の人や物を触らないようにする。

7. 仕事や学校は無理せず休む

体力の消耗を避け、免疫力の回復に専念するため、そして周囲への感染を防ぐためにも、水ぶくれがすべてかさぶたになるまでは、できるだけ仕事や学校は休むことが推奨されます 。無理をすることが、回復を遅らせ、後遺症のリスクを高める最大の要因です。

よくある質問

Q
帯状疱疹は人にうつりますか?

A
「帯状疱疹」という病気そのものが、インフルエンザのように人から人へうつることはありません 。
帯状疱疹は、あくまで自分自身の体内に潜伏していたウイルスが再活性化して起こる病気だからです。
ただし、注意が必要です。 帯状疱疹の患者さんの水ぶくれの中には、生きた水痘・帯状疱疹ウイルスが大量に含まれています 。このウイルスが、 まだ水ぼうそうにかかったことがない人や、水ぼうそうのワクチンを接種していない人 に接触などを通じて感染すると、その人は「水ぼうそう」として発症します 。帯状疱疹になるわけではありません。
感染経路

主に、水ぶくれの内容物との直接接触による「接触感染」です 。

感染力がある期間

すべての水ぶくれが乾いて、完全にかさぶたになるまでは感染させる可能性があります 。

特に注意すべき相手

水ぼうそうへの免疫がない乳幼児、妊婦、抗がん剤治療中などで免疫力が低下している方との接触は、相手が重症化するリスクがあるため、水ぶくれが乾ききるまでは絶対に避けるべきです 。

 

Q
何科を受診すればよいですか?

A

症状によって適切な診療科が異なりますが、基本的には「皮膚科」が第一選択です。
皮膚科

赤い発疹や水ぶくれなど、典型的な皮膚症状が現れている場合は、診断がつきやすく、皮膚の処置も受けられるため、まず皮膚科を受診しましょう 。

内科

皮膚症状はまだないけれど、体の片側に原因不明のピリピリした痛みが続く場合や、発熱などの全身症状がある場合は、かかりつけの内科でも相談可能です 

ペインクリニック

とにかく痛みが非常に強い場合、または帯状疱疹後神経痛の治療を専門的に行いたい場合は、痛みの専門家であるペインクリニックが適しています 。

眼科・耳鼻咽喉科

発疹が目の周りに出た場合は眼科へ、耳の周りや顔面麻痺を伴う場合は耳鼻咽喉科へ、合併症を防ぐために緊急に受診する必要があります 。

迷った場合は、まず皮膚科か内科を受診し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのが良いでしょう。
 

Q
帯状疱疹は再発しますか?

A
はい、再発する可能性があります。
かつては「一生に一度しかかからない病気」と言われることもありましたが、それは間違いです 。一度帯状疱疹にかかると、ウイルスに対する免疫が強化されますが、その免疫も加齢や他の病気などで再び低下すれば、ウイルスが再々活性化し、帯状疱疹が再発することがあります 。 免疫機能が正常な人での再発率は数%程度とされていますが、免疫力が低下しやすい状態にある方は注意が必要です 。
 

Q
治療薬(抗ウイルス薬)はいつまで飲み続ける?

A
処方された日数分(通常は7日間)を必ず飲み切ってください。
抗ウイルス薬は、処方通りに7日間 服用するのが基本です 。服用を始めて2~3日で症状が楽になってきても、体内のウイルスが完全に抑え込まれたわけではありません 。自己判断で服用を中止すると、ウイルスが再び増殖して症状がぶり返したり、後遺症のリスクが高まったりする可能性があります。医師の指示を必ず守りましょう。 一方で、7日間を超えて飲み続けても、効果がそれ以上高まるというデータはなく、保険適用も認められていないのが一般的です 。
 

Q
帯状疱疹は予防できますか?

A
はい、予防できます。最も効果的な方法はワクチン接種です。
帯状疱疹の根本原因である免疫力の低下を防ぐため、日頃からバランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスを溜めない生活を送ることが予防の基本となります 。
それに加え、50歳以上の方 は、任意接種で帯状疱疹ワクチンを接種することで、発症を効果的に予防できます 。ワクチンには2種類あり、それぞれに特徴があります。

帯状疱疹ワクチン2種類の比較(50歳以上対象)

   不活化ワクチン (シングリックス®)  生ワクチン
 種類  組換えワクチン(不活化)  弱毒化生ワクチン
 接種回数  2回(2ヶ月間隔が標準)  1回
発症予防効果 90%以上 約50%
 効果持続期間  約5年程度で低下  約5年程度で低下
 費用 22,000円/1回分(名古屋市助成があれば税込10,800円/1回分) 8,800円(名古屋市助成があれば税込4200円)
主な副反応 注射部位の痛み・腫れ、筋肉痛、疲労感(比較的多いが一時的) 注射部位の痛み・腫れ(軽度)
接種対象 免疫機能が低下している方も接種可能 免疫機能が正常な方

不活化ワクチンは費用が高く、接種回数も2回と負担は大きいですが、予防効果が非常に高く、長期間持続するという大きなメリットがあります。また、免疫機能が低下している方でも安全に接種できます。どちらのワクチンが良いかは、ご自身の健康状態や費用などを考慮し、医師とよく相談して決めることが重要です。自治体によっては費用助成制度がある場合もありますので、お住まいの市区町村にご確認ください。
帯状疱疹は、早期発見と早期治療が何よりも大切な病気です。この記事で得た知識をもとに、ご自身の体のサインを見逃さず、異変を感じたらすぐに専門医に相談してください。適切な対処で、つらい痛みと後遺症のリスクを最小限に抑えることが可能です。
 

≪監修者プロフィール≫
監修医師うらた皮膚科 院長 浦田透
保有資格日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
経歴
平成23年 中京病院 研修医
平成25年 中京病院 皮膚科
平成26年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成27年 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科
平成28年 名古屋大学医学部附属病院 医員
平成30年 名古屋大学医学部附属病院 病院助教
平成31年 名古屋大学医学部附属病院 助教
令和3年4月 うらた皮膚科 副院長
令和3年11月 うらた皮膚科 院長