老人性血管腫(赤いほくろ・チェリースポット)とは?放置しても大丈夫?

ある日、胸やお腹、腕などに、まるで「赤いほくろ」のような小さな点々ができていることに気づき、「これは何だろう?」「何かの病気のサインだろうか?」と不安に感じた経験はありませんか? 。その正体は、「老人性血管腫(ろうじんせいけっかんしゅ)」と呼ばれる皮膚の変化である可能性が高いです。
この老人性血管腫は、その見た目から「赤ほくろ」や、さくらんぼのように見えることから「チェリースポット」「チェリーアンジオーマ」など、いくつかの愛称で呼ばれています 。また、歴史的には19世紀に初めて報告したイギリスの外科医の名前にちなんで「キャンベル・ド・モルガン斑」とも呼ばれる、非常に一般的な皮膚症状です 。

根本的な疑問:放置しても大丈夫?

患者様が最も心配されるのは、「これを放置しても健康に害はないのか?」という点でしょう。結論から申し上げますと、老人性血管腫は皮膚の毛細血管が増殖してできた良性の腫瘍であり、悪性化(がん化)することはありません 。そのため、健康上の問題を引き起こすことはなく、見た目が気にならなければ、特に治療をせずにそのままにしておいても全く問題ありません 。
ただし、一度できてしまうと自然に消えることはなく、年齢を重ねるにつれて数が増えたり、わずかに大きくなったりする傾向があります 。このため、治療を検討される方の多くは、健康上の理由ではなく、美容的な観点から選択されています。

名前の誤解:「老人性」でも20代・30代でできる理由

「老人性」という名前がついているため、多くの方が「年をとってからできるもの」と想像し、もし20代や30代で発見すると、「肌が老化しているのでは?」と余計な不安を感じてしまうことがあります。しかし、この名称は実態とは少し異なり、誤解を招きやすいものです。
実際には、老人性血管腫は20代や30代といった若い世代から現れ始めることも決して珍しくありません 。疫学的なデータを見ても、20代での有病率は約14%ですが、30代で約47%に急増し、70歳以上になると約8割の方に少なくとも一つは見られるようになります 。つまり、「老人性」という言葉は、高齢者特有の疾患という意味ではなく、「年齢と共にその数が増加・蓄積していく傾向がある」という意味合いで名付けられたと理解するのが適切です。

老人性血管腫の正体:毛細血管の良性な増殖

では、老人性血管腫とは一体何なのでしょうか。これは、皮膚の深い層である真皮の、比較的浅い部分で毛細血管が異常に増殖し、拡張することによって形成される良性のできものです 。
よく「赤いほくろ」と呼ばれますが、一般的なほくろとは成り立ちが全く異なります。ほくろは、メラニンという色素を作り出す細胞(メラノサイト)が集まってできるため茶色や黒色をしていますが、老人性血管腫は血液が流れる血管そのものが集まってできているため、鮮やかな赤色を呈するのです 。この根本的な違いを理解することが、ご自身の皮膚の状態を正しく知るための第一歩となります。

主な特徴:見た目によるセルフチェックガイド

ご自身で「これかな?」と思ったときに参考になる、老人性血管腫の典型的な特徴を以下にまとめます。ただし、最終的な診断は必ず専門医に委ねてください。

色(色調)

鮮やかなさくらんぼ色(チェリーレッド)から、ルビーのような深い赤色、時には紫色に見えることもあります 。

大きさ

通常は直径1mmから5mm程度で、針の頭ほどの大きさから小豆粒大まで様々です 。

形(形状)

皮膚の表面とほぼ同じ高さで平坦なものから、少し盛り上がったドーム状のものまであります 。表面はなめらかで、光沢を帯びて見えることが多いのが特徴です 。

できやすい場所(好発部位)

主に胸、お腹、背中といった体幹部に多く見られますが、顔や首、腕や脚など、全身どこにでもできる可能性があります 。

老人性血管腫の症状と見分け方|ほくろやニキビ、危険な皮膚がんとの違い

典型的な症状:ほとんどが無症状

老人性血管腫の最大の特徴は、見た目以外の症状がほとんどないことです。通常、痛みやかゆみを伴うことはありません 。そのため、気づかないうちに数が増えていることもよくあります。
ただし、一つだけ注意すべき症状があります。それは出血です。老人性血管腫は毛細血管の集まりであるため、衣服で擦れたり、アクセサリーが引っかかったり、無意識に掻いてしまったりすると、比較的簡単に出血することがあります 。良性のできものであるにもかかわらず出血しやすいという点は、患者様が不安を感じる一因ですが、これは腫瘍が脆弱な毛細血管で構成されているためであり、それ自体が悪性を示すサインではありません。

見た目の比較ガイド:他の一般的な皮膚トラブルとの見分け方

赤い点を見つけたとき、それが老人性血管腫なのか、他のものなのかを区別するためのポイントを解説します。

ほくろとの違い

最も分かりやすい違いは色です。ほくろはメラニン色素による茶色や黒色ですが、老人性血管腫は血液の色である赤色や紫色です 。

ニキビとの違い

ニキビは毛穴の炎症であり、しばしば痛みを伴い、中心に膿を持つことがあります。また、数日から数週間で治癒に向かう一時的なものです。一方、老人性血管腫は痛みもかゆみもなく、一度できると自然に消えることはありません 。何ヶ月、何年も同じ場所にあり続ける赤い点は、ニキビではなく老人性血管腫の可能性が高いと言えます。

いぼとの違い

ウイルス性のいぼなどは表面がザラザラしていることが多いですが、老人性血管腫の表面は滑らかです 。

最重要:赤い点が危険なサインである場合 - 皮膚がんとの鑑別

ほとんどの赤い点は良性の老人性血管腫ですが、ごく稀に、皮膚がんが赤いほくろのように見えることがあります。自己判断は非常に危険であり、少しでも疑わしい点があれば、速やかに皮膚科専門医の診察を受けることが極めて重要です。特に注意すべき悪性腫瘍には、無色素性悪性黒色腫(メラノーマ)や結節型基底細胞癌などがあります 。
以下に挙げる**「危険なサイン」**に一つでも当てはまる場合は、放置せずに必ず専門医に相談してください。

大きさの急激な変化

数週間から数ヶ月の間に目に見えて大きくなる 。

形が左右非対称・境界が不明瞭

きれいな円形や楕円形ではなく、形がいびつで、周囲の皮膚との境目がギザギザしている 。

色の変化や不均一性

赤色の中に黒、茶色、青色などが混じっている。色むらがある 。

持続する症状

自然に治らない潰瘍(皮膚がえぐれる)ができたり、特に刺激していないのに出血を繰り返したり、痛みやかゆみが出てきたりする 。

短期間での多発

ごく稀なケースですが、短期間に多数の老人性血管腫が突然出現する「発疹性老人性血管腫症」という状態は、多中心性キャッスルマン病や多発性骨髄腫といった内科的な疾患のサインである可能性が報告されています 。

正確な診断の要:ダーモスコピー検査

皮膚科医が老人性血管腫と他の疾患を鑑別する際に用いる強力なツールが「ダーモスコピー」です 。これは、特殊なライトが付いた拡大鏡で、皮膚の表面の光の反射を抑え、皮膚の内部構造を痛みなく詳細に観察できる検査です 。
ダーモスコピーで老人性血管腫を観察すると、「red lagoons(赤いラグーン)」と呼ばれる特徴的な赤紫色の湖のような構造が見られ、ほぼ確実に診断を下すことができます 。一方で、メラノーマなどの悪性腫瘍には、これとは異なる特有のパターンが見られるため、視診だけでは判断が難しい場合でも、高い精度での鑑別が可能になります 。

老人性血管腫はなぜできる?紫外線・遺伝・生活習慣との複雑な関係

老人性血管腫がなぜできるのか、その正確な原因はまだ完全には解明されていません。しかし、単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症する「多因子疾患」であると考えられています 。ここでは、現在有力とされている要因を詳しく解説します。

主要な要因:加齢と遺伝的素因

発症に最も強く関わっているとされるのが「加齢」と「遺伝」です。

加齢

年齢を重ねることで皮膚や血管の組織が変化し、血管腫が形成されやすくなることが分かっています 。これは、長年にわたる様々なダメージの蓄積が影響していると考えられます。

遺伝的素因

家族や血縁者に老人性血管腫が多い場合、ご自身もできやすい体質を受け継いでいる可能性が高いです 。近年の研究では、老人性血管腫の組織からGNAQやGNA11といった特定の遺伝子に体細胞変異(後天的な遺伝子のコピーミス)が見つかっており、これが血管の無秩序な増殖を引き起こすスイッチになっている可能性が指摘されています 。

この関係は、遺伝という「できやすい素地(第一の要因)」があり、そこに加齢や後述する環境要因といった「引き金(第二の要因)」が加わることで発症に至る、とイメージすると分かりやすいでしょう。遺伝的素地がある方は、より若い年齢から、より多くの血管腫ができる傾向があります。

環境的な引き金:紫外線の長年の蓄積

遺伝と並んで非常に重要な環境要因が**紫外線(UV)**です 。長年にわたって紫外線を浴び続けることで、皮膚のコラーゲンやエラスチンがダメージを受け、毛細血管の構造が脆くなったり、血管の増殖を促す信号が出やすくなったりすると考えられています。
特に以下のような方は、紫外線曝露量が多いため、リスクが高いと言えます。

  • 屋外での仕事が多い方(農業、建設業、漁業関係者など)
  • 屋外でのスポーツやレジャーを好む方(ゴルフ、マリンスポーツなど)
  • 日焼けをする習慣がある方や、日焼け止め対策が不十分な方 また、肌の色が白い方は、メラニン色素による紫外線防御機能が相対的に低いため、より紫外線の影響を受けやすく、老人性血管腫ができやすい傾向があります 。

内的な要因:ホルモンバランスと生活習慣の影響

体内の環境も発症に関与していると考えられています。

ホルモンバランスの変化

女性ホルモンであるエストロゲンなどには、血管の新生(新しい血管を作ること)を促す作用があります。そのため、ホルモンバランスが大きく変動する妊娠中更年期に、老人性血管腫が増えたり目立つようになったりすることがあります 。この現象は、多くの女性が経験するものであり、体の自然な変化の一部と捉えることができます。

生活習慣の乱れ

直接的な因果関係はまだ確立されていませんが、以下の生活習慣も皮膚や血管の健康に影響を与え、間接的に発症に関与する可能性が指摘されています 。

栄養バランスの偏り:特に血管壁を丈夫に保つビタミンCなどの不足 。

睡眠不足:皮膚や血管の修復機能の低下 。

過度の飲酒や喫煙:血管への負担やダメージ 。

慢性的なストレス:ホルモンバランスや免疫機能への影響 。

物理的な摩擦

きつい下着や衣類、アクセサリーなどによる慢性的な摩擦が、皮膚への刺激となり発症の一因となる可能性も考えられています 。

老人性血管腫の治療

Vビームによるレーザー治療、外科的切除などで治療できます。

症例1


治療前
レーザー治療を行いました

 


治療後
キレイに取れました

治療内容:老人性血管腫に対してレーザー治療を行いました。
費用:5,500
リスク:痛み、色素沈着、1回で取りきれないことがある

治療の流れ

医師診察、治療方法のご説明します。基本的に初診日に手術可能です。
写真撮影を行います。
眼の保護のためシールドを装着
患部へレーザーを照射
 

老人性血管腫を増やさないための予防と日常生活のポイント

老人性血管腫の発生には遺伝や加齢といった変えられない要因が大きく関わっているため、完全に予防することは困難です。しかし、その発症を遅らせたり、数を増やさないようにしたりするために、日常生活で実践できる対策はあります。その目標は「時計の針を止める」ことではなく、「時計の針の進みを緩やかにする」ことと捉えるのが現実的です。

最も効果的な予防策:徹底した紫外線対策

自分でコントロールできる要因の中で、最も影響が大きく、かつ最も重要なのが紫外線対策です 。

日焼け止めの習慣化

季節や天候を問わず、外出時は日常的にSPF30・PA++以上の広域スペクトルの日焼け止めを使用する 。

物理的な遮光

帽子、日傘、サングラス、長袖の衣類などを活用して、物理的に紫外線をブロックする 。

時間帯を意識する

紫外線が最も強い午前10時から午後2時頃の長時間の外出を避ける工夫をする 。

食生活とライフスタイルの見直し

皮膚と血管の健康を内側からサポートすることも、長期的な予防につながります。

抗酸化物質の摂取

細胞の老化を促進する活性酸素から体を守るため、ビタミンC(柑橘類、ブロッコリー)、ビタミンE(ナッツ類、植物油)、ポリフェノール(ベリー類、緑茶)などを豊富に含む食品を積極的に摂る 。

健康的な生活習慣

質の良い睡眠を確保し、ストレスを溜めないように心がけること、そして血管にダメージを与える喫煙や過度の飲酒を控えることが、全身の血管の健康維持に繋がります 。

スキンケアと物理的刺激の軽減

優しいスキンケア

肌をゴシゴシ強く擦るような洗顔やスキンケアは避け、優しく扱うことを心がけましょう 。

摩擦を避ける

体にぴったりとフィットしすぎる衣類や下着は、慢性的な摩擦を引き起こす可能性があります。ゆとりのある素材やデザインを選ぶことも一つの方法です 。

保湿の徹底

肌が乾燥するとバリア機能が低下し、紫外線などの外部刺激の影響を受けやすくなります。しっかりと保湿を行い、肌のバリア機能を正常に保つことが重要です

老人性血管腫治療の費用

ブイビームによる治療(自費診療) 

基本的にレーザー治療をお勧めしています。

初診料

3,300円

再診料 

1,100円

施術料:1個

1個 5,500円

2~5個 11,000円

 

手術による治療 (保険診療)

別途、初診料、再診料、処方量、薬剤量などがかかります。
露出部とは、頭部、頸部、腕の肘関節以下、足の膝関節以下です。

露出部2㎝未満

8,010円(手術4,980円+病理検査3,030円)

露出部以外3㎝未満

6,870円(手術3,840円+病理検査3,030円)

よくある質問

Q
老人性血管腫はがんになりますか?

A
いいえ、なりません。
老人性血管腫は良性の腫瘍であり、それ自体が悪性化(がん化)することは決してありません 。ただし、前述の通り、見た目が似ている悪性腫瘍も存在するため、急激な大きさや色の変化など、「危険なサイン」が見られた場合は、鑑別のために必ず皮膚科専門医を受診してください 。
 

Q
放置した場合、自然に消えますか?

A
いいえ、一度できた老人性血管腫は自然に消えることはありません 。
加齢とともに数が増えたり、わずかに大きくなったりすることはあっても、自然治癒は期待できません。
 

Q
自分で除去しようとしても安全ですか?

A
 絶対にやめてください。
針やカッターなどで自分で除去しようとすることは、コントロール困難な大量出血や、細菌感染による化膿、そして一生残る醜い傷跡(瘢痕)を作るなど、非常に高いリスクを伴います 。治療は必ず医療機関で、専門医の管理下で行ってください。
 

Q
何科を受診すればよいですか?

A
まずは皮膚科 を受診するのが第一選択です 。
正確な診断を下してもらうことができます。治療、特にレーザー治療など美容的な側面を重視する場合は、美容皮膚科 形成外科 も良い選択肢となります 。これらのクリニックでは、より傷跡に配慮した治療の提案が受けられます。
 

Q
遺伝しますか? 親にあれば子供にもできますか?

A
強い遺伝的素因があると考えられています 。
ご家族に多い場合、お子さんも体質的にできやすい可能性があります。ただし、必ずしも発症するわけではなく、紫外線対策などの生活習慣によって、発症の時期を遅らせたり、数を少なくしたりすることは可能だと考えられています 。
 

Q
治療は何回くらい必要ですか?

A
治療法や病変の状態によって異なります。炭酸ガスレーザーや電気凝固術では、多くの場合1回の治療で除去が完了します 。色素レーザー(Vビーム)の場合、小さいものは1回で済みますが、少し大きいものや色が濃いものは、完全に消すために2~3回の治療が必要になることがあります 。診察時に医師が最適な治療計画を提案します。
≪監修者プロフィール≫
監修医師うらた皮膚科 院長 浦田透
保有資格日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
経歴
平成23年 中京病院 研修医
平成25年 中京病院 皮膚科
平成26年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成27年 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科
平成28年 名古屋大学医学部附属病院 医員
平成30年 名古屋大学医学部附属病院 病院助教
平成31年 名古屋大学医学部附属病院 助教
令和3年4月 うらた皮膚科 副院長
令和3年11月 うらた皮膚科 院長