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子供の手足口病 

HAND FOOT AND MOUTH DISEASE
最終更新日:2025-10-04

お子さんが「手足口病」と診断されると、多くの保護者の方は心配に思われます。
しかし、手足口病は非常にありふれた子どもの感染症であり、ほとんどの場合は軽い症状で自然に回復します 。
このページでは病気の詳細と、感染の拡大を防ぐための知識をまとめています。

手足口病とは
手足口病の分類
手足口病の症状
手足口病の原因
手足口病の治療
予防対策
よくある質問

手足口病とは

手足口病とは

手足口病(Hand, Foot, and Mouth Disease, HFMD)は、その名の通り、口の中、手のひら、足の裏を中心に特徴的な発疹や水ぶくれが現れる、ウイルス性の感染症です 。
3-5日の症状のない潜伏期間を経て、手足口に水ぶくれ・赤みを生じます。
口の病変がほとんどの、手足の病変は3分の2でみられます。
その他にも、肘・膝・お尻にも水ぶくれができます。

流行の時期と対象年齢

手足口病は、主に乳幼児、特に5歳以下の子どもたちに最も多く見られますが、年長児や大人も感染することがあります 。
子どもたちが集団で生活する保育園や幼稚園では、子ども同士の距離が近く、特に感染が広がりやすい環境です 。
流行には季節性があり、日本では例年、夏から初秋にかけてピークを迎える傾向があります 。

通常は軽症で自然に治癒

保護者の方にとって最も安心できる点は、手足口病がほとんどの場合、重症化することなく自然に治る軽微な病気であるということです 。
特別な治療薬を必要とせず、症状は通常7日から10日ほどで自然に回復します 。
発疹が治った後に傷跡が残ることもありません 。

手足口病の注意する合併症

ほとんどの場合、数日間のうちに治ります。
稀に脳炎や髄膜炎の合併症をきたすことがあるため、患児がボーっとしていたり、けいれんしていたり、変な様子がないか注意する必要があります。

手足口病の分類

手足口病の症状は似ていますが、原因となるウイルスの種類によって、その特徴や重症化のリスクが異なります。この違いを理解することは、適切な経過観察と対応のために非常に重要です。

原因ウイルス:エンテロウイルス属の仲間たち

手足口病は、ピコルナウイルス科エンテロウイルス属に分類される、複数のウイルスによって引き起こされます 。主な原因ウイルスとして、世界的にそして日本国内で同定されているのは以下のものです。

  • コクサッキーウイルスA16 (CA16)
  • コクサッキーウイルスA6 (CA6)
  • コクサッキーウイルスA10 (CA10)
  • エンテロウイルス71 (EV71)

一度手足口病にかかっても、それは原因となった特定のウイルスに対する免疫がついただけです。そのため、別の種類のウイルスに感染すれば、再び手足口病を発症する可能性があります 。

ウイルスの種類による症状とリスクの違い

原因ウイルスの種類は、単に学術的な分類にとどまらず、臨床症状の現れ方や公衆衛生上のリスクに直接関わってきます。

  • コクサッキーウイルスA16 (CA16) これは、従来から「典型的」な手足口病の主な原因とされてきたウイルスです。症状は比較的軽く、発疹も典型的に手、足、口に限局することが多いです 。
  • エンテロウイルス71 (EV71) EV71も典型的な手足口病を引き起こしますが、他のウイルスと比較して、重篤な神経系の合併症(ウイルス性髄膜炎や脳炎など)を引き起こす割合が高いことが知られています 。このため、公衆衛生当局はEV71の流行状況を特に注意深く監視しています。地域でEV71が流行している場合、医師は神経症状の兆候に対してより一層の警戒を払います。
  • コクサッキーウイルスA6 (CA6) 近年、流行の中心となることが増えているウイルスです。CA6による手足口病は「非典型的」な症状を呈することがあります。発疹が手足口にとどまらず、体幹、四肢、顔面など、より広範囲に出現し、水疱が比較的大きくなることがあります 。 さらに、CA6感染の大きな特徴として、回復してから1~2ヶ月後に手足の爪が剥がれる「爪甲脱落症(そうこうだつらくしょう)」という後遺症が見られることがあります 。医師が非典型的な発疹を見た際にCA6を疑うことで、事前にこの爪の症状について保護者に説明することができ、後の不要な心配を和らげることができます。

関連する病気:ヘルパンギーナとの違い

手足口病と同じエンテロウイルス属によって引き起こされる、もう一つの代表的な夏風邪に「ヘルパンギーナ」があります 。両者はしばしば混同されますが、症状の現れる場所に明確な違いがあります。

  • ヘルパンギーナ: 症状は主に口の中、特に喉の奥に限定されます。突然の高熱を伴うことが多く、痛みを伴う水疱(口内炎)が特徴です 。
  • 手足口病: 口の中の症状に加えて、手のひらや足の裏にも特徴的な発疹が現れます。発熱はヘルパンギーナほど高熱にならないことが多いです 。

手足口病の症状

臨床的な経過:潜伏期間から回復まで

  • 潜伏期間: ウイルスに感染してから最初の症状が現れるまでの期間は、通常3日から6日です 。
  • 初期症状(前駆期): 発疹が現れる1~2日前に、微熱、喉の痛み、全身の倦怠感(だるさ)、食欲不振といった、風邪に似た症状が見られることがあります 。
  • 特徴的な症状:発疹と口の中の痛み:
  • 口の中の症状(水疱・潰瘍): 舌、歯ぐき、頬の内側などに痛みを伴う小さな水疱ができます。これらの水疱はすぐに破れて、浅い潰瘍(口内炎)になります 。この痛みが、手足口病で最もつらい症状であり、子どもが飲食を嫌がったり、よだれが増えたりする主な原因です。
  • 皮膚の発疹: 手のひら、足の裏、足の甲などに、2~3mm程度の赤い斑点や少し盛り上がった発疹が現れます。一部は中心に水を含む水疱になることもあります 。重要な特徴として、この発疹は通常、強いかゆみを伴いません 。肌の色によっては、発疹が赤色、白色、灰色に見えたり、単なる小さな隆起として現れたりすることがあります 。
  • 症状の経過と期間: すべての症状が出揃ってから、通常は3~7日、長くても10日ほどで自然に軽快していきます 。

大人が感染した場合

手足口病は子ども特有の病気ではありません。子どもの看病などを通じて大人も感染することがあります 。大人が感染した場合、子どもよりも症状が重くなる傾向があり、40℃近い高熱、広範囲にわたる痛みを伴う発疹、強い倦怠感、筋肉痛、関節痛などを経験することがあります 。

最も注意すべき合併症:脱水症

手足口病の最も目に見える症状は発疹ですが、臨床的に最も注意が必要なのは、口の中の強い痛みによって引き起こされる「脱水症」です 。痛みのために水分や食事を十分に摂れなくなり、気づかないうちに脱水状態に陥ることが、最も一般的な合併症です 。したがって、家庭でのケアにおいて最も重要なことは、発疹の状態を観察すること以上に、十分な水分が摂れているか、脱水の兆候がないかを注意深く見守ることです。

手足口病の原因

感染経路:ウイルスの広がり方

手足口病のウイルスは、主に以下の3つの経路で人から人へ感染します。

  • 飛沫感染: 感染者の咳やくしゃみによって飛び散る、ウイルスを含んだ小さな飛沫(しぶき)を吸い込むことで感染します 。
  • 接触感染: 感染者の唾液や鼻水、水疱の内容物などに直接触れること、またはウイルスが付着したおもちゃやドアノブ、タオルなどを介して間接的にウイルスが手に付着し、その手で口や鼻、目を触ることで感染します 。
  • 糞口感染: 感染者の便の中に排出されたウイルスが、何らかの形で口に入ることで感染します。特に、おむつ交換の際に手洗いが不十分だと、この経路での感染が起こりやすく、保育施設での集団発生の主な原因となります 。

感染力を持つ期間

感染者は、症状が現れている急性期、特に発症後1週間が最も感染力が強いとされています 。

長期間にわたるウイルスの排出

手足口病の感染対策を難しくしている最大の要因は、症状が完全に回復した後も、長期間にわたってウイルスが体から排出され続ける点にあります。

  • 呼吸器から: 咳や唾液からは、回復後も1~3週間ウイルスが排出されることがあります 。
  • 便から: 最も重要な点として、便の中には数週間から数ヶ月(通常2~8週間)にわたり、ウイルスが排出され続けます 。

この「症状が消えても感染力は残っている」という事実が、手足口病の流行を制御する上での大きな課題です。見た目はすっかり元気になった子どもが、無自覚のまま感染源となり、集団内での感染を広げてしまうのです。このことから、特定の期間だけ感染対策を行うのではなく、おむつ交換後やトイレの後の手洗いといった基本的な衛生習慣を、病気の有無にかかわらず、常に徹底することがいかに重要であるかがわかります。

手足口病の治療

手足口病には、ウイルスそのものを退治する特効薬や、感染を予防するワクチンは、現在の日本では承認されていません 。したがって、治療は症状を和らげ、体がウイルスと戦うのを助ける「対症療法」あるいは「支持療法」が中心となります 。

家庭でできる症状の緩和

  • 発熱と痛みに対して: 発熱や体の痛み、口の中の痛みに対しては、アセトアミノフェンやイブプロフェンといった、市販の子ども用の解熱鎮痛剤を使用することができます。必ず用法・用量を守って使用してください。
  • 口の中の痛みを和らげる工夫: 口の中の潰瘍にしみないよう、酸味の強いもの(オレンジジュースなど)や香辛料の効いたもの、熱いものは避けましょう。プリン、ゼリー、アイスクリーム、ヨーグルトなど、冷たくて喉ごしの良いものがおすすめです 。

最重要課題:脱水症の予防

前述の通り、手足口病で最も警戒すべきは脱水症です 。痛がっていても、水分だけはこまめに摂取させるよう努めてください。一度にたくさん飲ませるのではなく、スプーンやストローを使い、少量ずつ頻繁に与えるのが効果的です 。水やお茶、牛乳、経口補水液などが適しています。
以下の脱水症のサインに注意し、一つでも当てはまる場合は医療機関に相談してください。

  • おしっこの回数や量が普段より明らかに少ない(乳児の場合、おむつが長時間濡れない)
  • 口の中や唇が乾いている
  • 泣いても涙が出ない
  • 元気がなく、ぐったりしている、あるいは不機嫌でぐずり続ける
  • 乳児の場合、頭のてっぺんにある大泉門(だいせんもん)がへこんでいる

すぐに医療機関を受診すべき危険なサイン

手足口病は通常軽症ですが、ごくまれにウイルス性髄膜炎、脳炎、心筋炎といった重篤な合併症を引き起こすことがあります 。ストレスを感じている保護者の方が、緊急性を要する症状をすぐに見分けられるよう、以下の「危険なサイン」をまとめました。これらの症状が見られた場合は、夜間や休日であっても、ためらわずに医療機関を受診してください。

   具体的な症状  考えられる合併症
 高熱  39℃以上の高熱が出る、または38℃前後の熱が2日以上続く  重度の感染症、合併症の可能性
 神経系の異常  激しい頭痛を訴える、嘔吐を繰り返す、首の後ろが硬くなる、呼びかけに反応が鈍い、視線が合わない、意味不明な言動、ふらつく、けいれんを起こす  髄膜炎、脳炎
 重度の脱水  8~12時間以上おしっこが出ない、ぐったりして活気がない  点滴による水分補給が必要な状態
 全身状態の悪化  呼吸が速い、息苦しそうにしている、顔色が悪い 心筋炎、全身性の合併症

手足口病の予防対策

お子さんが手足口病にかかった際の家庭での過ごし方と、家族内や地域での感染拡大を防ぐための具体的な方法について解説します。

病気の子どものためのホームケア

  • 安静と快適な環境: 十分な休息が回復を助けます。熱がある場合は、汗を吸いやすい服に着替えさせ、室温を快適に保ちましょう 。
  • 食事と水分補給: 前述の通り、喉ごしの良い、刺激の少ない食べ物や飲み物を用意し、脱水を防ぎましょう 。

家庭と地域における感染対策

手足口病の予防において最も重要なのは、ウイルスとの接触を断つことです。

  • 基本にして最強の予防法:正しい手洗い 手洗いは、流水と石鹸を使って、手のひら、手の甲、指の間、爪、手首までを、最低でも20~30秒かけて丁寧に洗うことが重要です 。特に以下のタイミングでの手洗いを徹底してください。
  • おむつ交換の後、トイレの後
  • 食事の準備の前、食事の前
  • 外出からの帰宅時
  • 効果的な消毒:アルコールだけでは不十分 ここで非常に重要な点があります。手足口病の原因となるエンテロウイルスは、「ノンエンベロープウイルス」という構造を持っており、一般的なアルコールベースの手指消毒剤が効きにくいという特性があります 。 したがって、おもちゃやドアノブ、テーブルなどの環境表面を消毒する際には、アルコールではなく、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤を薄めたもの)を使用することが推奨されます 。
  • 消毒液の作り方: 市販の塩素系漂白剤(塩素濃度約5%)を、水で250倍~500倍に薄めることで、有効な消毒液(濃度0.02%~0.01%)を作ることができます。例えば、ペットボトル500mlの水に、漂白剤をペットボトルのキャップ半分~1杯程度加えるのが目安です。
  • 使用上の注意: 消毒液を使用する際は、十分に換気を行い、金属製品は腐食する可能性があるため使用を避けるか、使用後に水拭きをしてください。また、直接皮膚に触れないよう手袋を着用しましょう 。
  • 排泄物の適切な処理と物品の共有回避
  • おむつ交換の際は、排泄物が周囲に飛び散らないように静かに処理し、使用後のおむつはビニール袋に入れて密閉して捨てましょう。交換後は必ず石鹸と流水で手を洗ってください。使い捨て手袋の使用も有効です 。
  • 感染の拡大を防ぐため、タオル、コップ、食器などの共有は絶対に避けてください 。

よくある質問

Q
通園・通学はできますか。

A
可能です。
出席停止が義務付けられた病気ではありません。
下記の各学会の共同声明(参考文献※3)では、
「口内の発疹で食事がとりにくい、発熱、体がだるい、下痢、頭痛などの症状がなければ、学校を休む必要はありません。」とされています。
発熱などの全身症状が強い場合はお休みして安静にしましょう。 
 

Q
プールに入っても大丈夫ですか。

A
控えましょう。
症状がひどくなったり、触れることで他の人にうつしてしまうことがあります。
 

Q
どのようにうつりますか。

A
飛沫感染、接触感染、糞口感染が知られています。
糞便からは約1か月排出が続くため、病気が治った後も人にうつしてしまう可能性があります。小児へのトイレ後の手洗い指示などの生活指導が大切です。
≪監修者プロフィール≫
監修医師うらた皮膚科 院長 浦田透
保有資格日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
経歴
平成23年 中京病院 研修医
平成25年 中京病院 皮膚科
平成26年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成27年 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科
平成28年 名古屋大学医学部附属病院 医員
平成30年 名古屋大学医学部附属病院 病院助教
平成31年 名古屋大学医学部附属病院 助教
令和3年4月 うらた皮膚科 副院長
令和3年11月 うらた皮膚科 院長