悪性黒色腫とは

悪性黒色腫とは

悪性黒色腫
悪性黒色腫(メラノーマ)はメラノサイトの悪性腫瘍です。
メラノサイトはメラニン色素を作るため、黒色のできもののことが多く、「ほくろのがん」ともよばれます。
稀にメラニン産生が乏しいものもあり、無色素性黒色腫(amelanotic melanoma)もあります。
 

悪性黒色腫の原因

メラニン色素を作り出すメラノサイトががん化することで発生します。
紫外線が誘因のひとつとして考えられています。
 

悪性黒色腫の症状

赤い悪性黒色腫
黒いシミや、ほくろに似た外観で発症して、ほくろとの区別が問題になります。
早期発見には、 ABCDEルールを参考にします。 
稀ですが、赤色で生じることもあり、血管腫などとの区別が問題になります。
 

悪性黒色腫の頻度

日本人では10万人あたり1~2人とされています。
欧米人(白人)は紫外線の影響を受けやすいため、日本の十倍以上の頻度で発生します。
海外ではとてもメジャーながんの一つです。
 

悪性黒色腫の病型分類

悪性黒子型悪性黒色腫

高齢者の顔面に多く、シミから始まり徐々に盛り上がりや出血を生じます。
慢性的な紫外線が原因と考えられています。

表在拡大型悪性黒色腫

あらゆる年齢層の四肢や体に生じます。
紫外線の影響で生じると考えられています。
白人は皮膚に紫外線をブロックするメラニン色素が少ないため紫外線の影響を受けやすく、外国ではこの病型が圧倒的に多いです。

結節型悪性黒色腫

盛り上がった病変を生じ、その周囲にシミ病変がないもの。
転移や再発のリスクが高い病型です。 

末端黒子型悪性黒色腫

手のひら、足の裏、爪に病変を生じます。
外的刺激が原因の一つかもしれないと考えられていますが、はっきりわかっていません。
日本人は白人と比べて紫外線の影響を受けにくいので、表在拡大型が少なく、相対的に末端黒子型が最も多い病型になります。
日本では、悪性黒色腫の半数が足底に出来ます。
だからといって「足底の黒いできものは危険」というわけではありません。
足底に多い理由は、他の部位が少ないためだからです。

その他の悪性黒色腫

その他に、眼・口腔・鼻腔・外陰部などの粘膜部の発症が知られています。
稀な例として、あらゆる臓器にも生じえます。

悪性黒色腫を疑う5つのポイント

悪性黒色腫を早期発見するためのABCDEルール

早期のメラノーマを区別するためのABCDEルールをご紹介します。 

A:asymmetry(不規則な形)
B:border irregularity(境界が不明瞭)
C:color variegation(色調に「濃い部分」と「薄い部分」が混じる)
D:diameter(拡大傾向がある、径6mm以上)
E:evolution(形状の変化がある、盛り上がる、色調が変わる)

 
実際には、ABCDEルールに引っ掛かる、良性のほくろもたくさんあります。
一番要注意なのは、Eの形状の変化と思います。
5つのチェックポイントのほかに、ダーモスコピー検査やこれまでの病歴から総合的に診断をします。
気になる病変がありましたら、お近くの皮膚科にご相談いただくことをお勧めいたします。

足底のほくろとメラノーマの見分け方

足底のほくろと悪性黒色腫の鑑別はダーモスコピーが必須です

ダーモスコピーは表皮~真皮の病変を観察する時に使います。
ダーモスコピーは何でも見通す万能デバイスではありませんが、ここぞと言うときに威力を発揮します。
特に、足底ほくろ診察ではかかせません!
「手のひら・足の裏のメラノーマの早期検出の 感度86%特異度99%」と報告されています。
 
足底ほくろ診察で皮膚科を受診するなら、ダーモスコピー診察を行っている病院を選びましょう。
 
足底メラノーマの診断アルゴリズム

悪性黒色腫の オプジーボ治療(日本人ノーベル賞受賞)

オプジーボ登場以前の悪性黒色腫に対する化学療法

  • 従来の化学療法は、がんに直接作用する薬剤を使用します。
  • 全く別のアプローチとして、がん細胞を攻撃する免疫細胞の働きを助ける治療薬として、免疫チェックポイント阻害薬が開発されました。
  • 従来の抗がん剤は悪性黒色腫には効果が無かったため、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ、ヤーボイ)が登場する前には、有効な薬物治療がありませんでした。
  • 手術以外には有効な治療がありませんでした。

 

免疫チェックポイント阻害剤が2011年に海外で承認

  • 2011年、世界初の免疫チェックポイント阻害薬として米国でヤーボイが悪性黒色腫治療薬として承認をされました。
  • はじめて悪性黒色腫にも効果がある抗がん剤が誕生したことになります。
  • この3年間(2011~2014年)は、日本は悪性黒色腫治療について世界から取り残された状態になります。
  • 国立がん研究センターの山崎直也先生らを中心に、この状態を打開する研究が積極的に進められました。 

 

2014年オプジーボが日本・海外で承認

  • 2014年、京都大学の本所佑名先生が開発に関わったオプジーボが米国・日本などで悪性黒色腫治療薬として承認されました。
  • 日本では、ヤーボイの承認が遅れたため、初のチェックポイント阻害薬の承認です。
  • その後に、肺がんなどに多くのがんに適応拡大されていきます。
  • 2015年、海外から4年遅れて日本でもヤーボイが承認。
  • 2018年のノーベル医学生理学賞を、京都大学の本庶佑名誉教授(オプジーボ開発者)、ジェームズ・アリソン氏(ヤーボイ開発者)が受賞。
  • ガン拠点病院の先生方のオールジャパンの取り組みで、近年では日本でも海外に遜色のない悪性黒色腫治療が可能になっています。
  • 東海地方の代表基幹病院として、名古屋大学皮膚科も秋山真志教授・横田憲二准教授を中心に多くの治験に参加しました。(私も少しだけ治験分担医師としてお手伝いさせていただくことが出来ました)

 

オプジーボ治療の注意1

  • オプジーボは革新的な治療薬ですが、万人に効果があるわけではありません。
  • 悪性黒色腫の場合、効果があるのは3割程度(ヤーボイは1割以下)です。
 

オプジーボ治療の注意2

  • オプジーボの自費治療に注意してください。
  • 高額な価格設定、利益を優先した少なめの薬剤投与量、効果が実証されていないがんへの投与など多くの問題があります。
  • また、オプジーボ治療は同時に副作用の早期発見が非常に重要です。
  • オプジーボ治療は他診療科が一丸となって取り組んでいる基幹病院で行ってください。

悪性黒色腫と当院の役割

悪性黒色腫(メラノーマ)は再発・転移のリスクが高い危険ながんです。
日本では「珍しいがん」のため健康診断でも重要視されていません。早期発見は患者さんの気づきが重要です。
悪性黒色腫は「痛くない・痒くない、健康面での支障が無い」ことが多いため、特に高齢の方で放置してしまうことが多いです。
皮膚科医が積極的に情報発信することで、「患者さんの気づき」の手助けにならなければいけないと考えています。
 
院長は、名古屋大学医学部附属病院にて皮膚腫瘍外来を担当していました。
皮膚がん、変わったシミ・できものは当院に何でもご相談ください。
 

街のかかりつけ医として、
皮膚がんを啓蒙し、早期発見に努めています。
悪性黒色腫の治療はクリニックでは困難のため、基本的に基幹病院にご紹介させていただいております。