HOME > 皮膚のできもの > 脂肪腫

脂肪腫

LIPOMA
最終更新日:2025-10-13

ある日、体に思いがけないしこりを見つけると、誰でも不安になるものです。「これは何だろう、悪いものではないだろうか」と心配されるかもしれません。多くの場合、こうした皮膚の下のできものは、命に関わるような深刻なものではありません。この記事では、そうした皮膚の下にできる良性のできもの(腫瘍)の中でも最も一般的な「脂肪腫(しぼうしゅ)」について、専門家の視点から、その正体、症状、原因、そして治療法に至るまで、わかりやすく、そして詳しく解説していきます。

脂肪腫とは
脂肪腫の種類
脂肪腫の症状
脂肪腫の治療法
手術の流れ
費用
よくある質問

脂肪腫とは

脂肪腫は、しばしば「脂肪のかたまり」と呼ばれますが、医学的には皮膚の下の組織(皮下組織)に発生する、成熟した脂肪細胞が増殖してできた良性の腫瘍です 。皮膚の下にできる軟部組織の腫瘍の中では最も発生頻度が高いものの一つで、決して珍しいものではありません 。英語では「リポーマ(Lipoma)」とも呼ばれます 。

「脂肪のかたまり」の正体

脂肪腫をより詳しく見てみると、単なる脂肪の集合体ではありません。正常な脂肪細胞が、薄い線維性の膜(被膜)に包まれて、一つの塊を形成している状態です 。この膜があるおかげで、周囲の組織とはっきりと区別され、一つのまとまりとして存在しています。
この構造を、たとえるなら「皮膚の下に埋め込まれた、柔らかいゴムボール」のようなものです 。このボール(脂肪腫)は、周囲の組織に染み込むように広がる(浸潤する)ことはなく、また体の他の場所に飛び火する(転移する)こともありません。これが、脂肪腫が「良性」であると言われる理由です。

脂肪腫の主な特徴

脂肪腫には、ご自身で触って確認できるいくつかの典型的な特徴があります。

感触

触れると、消しゴムや粘土のような、弾力のある柔らかさを感じます 。硬い石のような感触ではありません。

動き

指で軽く押してみると、皮膚の下で少し動く感じがあります(可動性がある)。これは、脂肪腫が筋肉などの深い組織に固着していないことを示しています。

発生場所

脂肪細胞が存在する場所であれば体のどこにでも発生する可能性がありますが、特に脂肪の多い背中、肩、首、腕(上腕)、太もも(大腿)などによく見られます 。一方で、顔や頭皮、膝から下の部分にできることは比較的まれです 。

成長速度

脂肪腫の成長は非常にゆっくりで、数年から十数年かけて少しずつ大きくなるのが一般的です 。そのため、発生自体は幼少期であっても、ある程度の大きさになる40代から60代になって初めて気づくというケースも少なくありません 。

脂肪腫の種類・鑑別疾患

脂肪腫の種類

すべての脂肪腫が全く同じというわけではなく、組織の構成によっていくつかの種類に分けられます。ほとんどは症状のない単純なものですが、中には痛みを伴うタイプも存在します。

線維脂肪腫

最も一般的なタイプの脂肪腫です。脂肪細胞の間に線維組織が多く含まれているため、他の脂肪腫に比べて少し硬めに感じることがあります 。

血管脂肪腫

このタイプは、患者さんが痛みを感じる場合に考慮すべき重要な種類です。脂肪組織の中に毛細血管が豊富に含まれており、押した時や、時には何もしていなくても痛み(自発痛)を感じることがあります 。大きさは1cm程度と比較的小さなものが多く、複数個できる(多発する)傾向もあります 。

筋脂肪腫

皮膚よりも深い、筋肉の中や筋肉の間に発生するタイプの脂肪腫です 。体の深い部分にあるため、摘出する際には通常よりも少し複雑な手技が必要になることがあります。

似ているけれど違う「できもの」との見分け方

皮膚の下にしこりを見つけた時、最も大きな心配は「これが悪性のものではないか」という点でしょう。脂肪腫と間違われやすい代表的なできものには、同じく良性の「粉瘤(ふんりゅう、アテローム)」と、非常にまれですが悪性の「脂肪肉腫(しぼうにくしゅ)」があります。これらの違いを理解することは、不要な不安を和らげ、医師に相談する際の助けになります。
この三者の違いは、その成り立ちに根本的な差があることから生じます。脂肪腫が皮下で脂肪細胞が増殖した「腫瘍」であるのに対し、粉瘤は皮膚の表面が内側にめくれて袋状になり、その中に垢(角質)や皮脂が溜まった「嚢腫(のうしゅ)」です 。この袋は皮膚と繋がっているため、細菌が入り込んで炎症を起こしたり、特有の臭いを発したりすることがあります。一方、脂肪腫は皮膚表面とは繋がりのない独立した塊なので、感染を起こすことはありません。この構造的な違いが、見た目や症状の差として現れるのです。
悪性である脂肪肉腫は、脂肪細胞から発生する癌(がん)であり、成長速度が速く、周囲の組織に食い込んでいくため硬く動きにくいという特徴があります。
以下の表は、これらの主な違いをまとめたものです。

脂肪腫の症状

脂肪腫の最も一般的な「症状」は、単にしこりがそこにあるという存在そのものです。しかし、特定の状況下では痛みや不快感を引き起こすこともあります。

ほとんどは無症状

大半の脂肪腫は、痛みやかゆみ、皮膚の色の変化などを伴いません 。ただ柔らかいこぶが皮膚の下にあるだけで、他に何の症状も感じないことがほとんどです。そのため、何年もの間、気づかなかったり、気づいていても特に気にせず放置していたりする人が多いのが実情です 。

痛みを伴うケース

通常は無痛ですが、以下のような場合には痛みや違和感が生じることがあります。

神経の圧迫

脂肪腫が大きくなったり、神経の通り道の近くにできたりすると、その神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こすことがあります 。

血管脂肪腫

前述の通り、「血管脂肪腫」という種類の脂肪腫は、血管が豊富な組織構造のため、圧迫痛や自発痛を伴うことが特徴です 。

場所による不快感

例えば、背中にできた脂肪腫が椅子の背もたれに常に当たったり、ベルトや下着のストラップが当たる場所にできたりすると、物理的な圧迫によって痛みや不快感を感じることがあります 。

専門医への受診を強く推奨する「危険なサイン」

ほとんどの脂肪腫は心配いりませんが、中には脂肪腫ではない、より深刻な病気の可能性もゼロではありません。以下のような「危険なサイン」が見られる場合は、自己判断で放置せず、できるだけ早く皮膚科や形成外科の専門医に相談することを強く推奨します 。

急速な増大

数年単位でゆっくり大きくなるのが脂肪腫の特徴です。もし、数週間から数ヶ月という短い期間で、明らかに大きくなっていると感じる場合は注意が必要です 。

硬さと不動性

触った時にゴムのような柔らかさがなく、石のように硬かったり、指で押しても全く動かず、下の組織にがっちりと固定されているように感じられたりする場合 。

強い痛み

圧迫していないのに持続的な痛みがある、または痛みがだんだん強くなってくる場合 。

5cmを超える大きさ

大きさが全てではありませんが、一般的に5cmを超える大きなしこりは、より慎重な評価が必要とされます 。

皮膚の変化

しこりの上の皮膚が赤くなったり、紫色に変色したり、ただれたり(潰瘍)している場合 。

全身の症状

しこり以外に、原因不明の発熱や体重減少といった全身の症状を伴う場合 。

これらのサインは、悪性腫瘍である脂肪肉腫などの可能性を示唆していることがあります。もちろん、これらのサインがあっても必ずしも悪性とは限りませんが、確かめるためには専門家による診察と、場合によっては詳しい検査が必要です。

粉瘤の治療方法

脂肪腫と診断された場合、次に考えるのは「治療すべきかどうか」ということです。良性腫瘍である脂肪腫の治療方針は、患者さん一人ひとりの状況によって異なります。

治療の必要性

脂肪腫は悪性ではないため、医学的に必ずしも治療(切除)が必要なわけではありません 。症状がなく、生活に支障もなければ、そのまま様子を見る(経過観察)というのも一つの有効な選択肢です 。治療を検討するのは、主に以下のような場合です。

症状がある場合

痛みやしびれ、圧迫感など、何らかの不快な症状がある場合 。

見た目が気になる場合

顔や腕など、人目につきやすい場所にできて美容的に気になる場合 。

診断を確定させたい場合

画像検査だけでは100%良性と言い切れない、あるいは悪性の可能性を完全に否定するために、切除して組織を調べる(病理検査)必要がある場合 。

増大傾向がある場合

ゆっくりではあっても、確実に大きくなり続けており、将来的にさらに大きくなる前に切除しておきたいと考える場合 。

唯一の根治治療「外科的切除」

脂肪腫の治療法について、まず知っておくべき最も重要なことは、飲み薬や塗り薬、注射などで治すことはできないということです 。脂肪腫は液体ではないため、注射器で中身を吸い出すこともできません 。脂肪腫を根本的になくすための唯一確実な治療法は、手術による「外科的切除」です 。
手術の目的は、脂肪腫をその周りを包んでいる膜(被膜)ごと、完全に取り除くことです 。この膜の一部でも残ってしまうと、そこから再び脂肪細胞が増殖し、再発する可能性があるため、丁寧な摘出が求められます 。

手術の流れ

手術の流れ(日帰り手術)

多くの脂肪腫は、入院の必要がない日帰り手術で切除することが可能です 。手術と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、一般的な流れを知ることで不安を軽減できます。

診察と計画

まずは医師による診察と、超音波(エコー)検査などを行い、脂肪腫の正確な大きさ、深さ、周囲の組織との関係を確認します 。その上で、傷跡が最も目立たなくなるような切開線のデザインを決め、皮膚に印をつけます(マーキング)。

局所麻酔

手術する部分に、局所麻酔の注射をします。これにより、手術中の痛みは感じなくなります。クリニックによっては、注射の痛みを和らげるために極細の針を使用するなどの工夫がされています 。

手術摘出

麻酔が効いたことを確認した後、皮膚をメスで切開します。切開の長さは、脂肪腫の直径よりも小さく済むことも多いです 。切開部から慎重に脂肪腫を周囲の組織から剥がし、被膜を破らないように注意しながら、塊として丸ごと取り出します 。

止血と縫合

脂肪腫を取り除いた後の空間に血液が溜まらないよう、しっかりと止血します 。大きい脂肪腫の場合、術後に血液が溜まるのを防ぐために、細い管(ドレーン)を一時的に留置することもあります 。その後、傷跡がきれいになるように、皮膚の深い層と表面を丁寧に縫い合わせます(縫合)。

保護

最後に、傷口を保護するためのガーゼやテープを貼り、手術は終了です 。

手術で摘出した組織は、必要に応じて病理検査に提出され、最終的に良性であることが確定診断されます。

術後の過ごし方と傷跡について

手術後のケアは、傷をきれいに治し、合併症を防ぐために非常に重要です。

術後の処置

手術当日から数日間は、傷口を濡らさないように指示されることが一般的です。医師の指示に従い、消毒やガーゼ交換を行います 。

活動の制限

手術後1週間程度は、激しい運動や重いものを持つ作業は避ける必要があります。傷口が開いたり、内部で出血したりするのを防ぐためです 。

抜糸

傷が順調に治れば、手術から1週間後に縫合した糸を抜きます(抜糸)。

傷跡

どのような手術でも、切開した部分には必ず傷跡が残ります。しかし、手術の傷跡の方向を皮膚のしわの方向に沿って切開したり、特殊な縫合技術を用いたりすることで、傷跡をできるだけ目立たなくする工夫を行っています。一般的に、脂肪腫が小さいうちに手術をすれば、切開も小さく済み、結果的に傷跡も小さくなります。これが、大きくなる前の治療が推奨される理由の一つです 。術後は、紫外線対策(日焼け止めの使用など)や、シリコン製のテープなどによるケアを行うことで、傷跡がよりきれいになるのを助けることができます 。

費用

健康保険(3割負担の場合)

別途、初診料、再診料、処方量、薬剤量などがかかります。
露出部とは、頭部、頸部、腕の肘関節以下、足の膝関節以下です。

皮膚腫瘍切除術

露出部2㎝未満:8,010円(手術4,980円+病理検査3,030円)

露出部2~4㎝:14,040円(手術11,010円+病理検査3,030円)

露出部以外3㎝未満:6,870円(手術3,840円+病理検査3,030円)

露出部以外3~6㎝:12,720円(手術9,690円+病理検査3,030円)

よくある質問

A
可能です。
予約の患者様もおりますため、混みあってる日は、診察後から手術までの間の待ち時間が長くなることがあります。
その場合は、お待ちいただき当日手術を希望されるか、後日の時間予約での手術をご希望されるかご希望を伺っています。
 
A
診察後に、別日の時間予約での手術が可能です。
診察前の時間予約は承っておりません。
 
A
局所麻酔注射を行うときに痛みがあります。
歯科麻酔で使われるものと同じものです。
手術中は痛みはありません。
大きな腫瘍だと深い部位の麻酔が足りないことがあるため、その場合は手術中に麻酔を追加します。
 
A
我慢できる程度の痛みがありますが、時間とともに改善していきます。
痛み止めも処方していますが、使わなくても大丈夫だったという方も多くいます。
 
A
1週間後、1カ月後に再診していただいています。
手術方法によっては、出来るだけ手術翌日にも受診していただくようにしています。
1週間後に抜糸を行います。
抜糸時に、創部の状態によってその後の通院時期を改めてお伝えしています。
 
≪監修者プロフィール≫
監修医師うらた皮膚科 院長 浦田透
保有資格日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
経歴
平成23年 中京病院 研修医
平成25年 中京病院 皮膚科
平成26年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成27年 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科
平成28年 名古屋大学医学部附属病院 医員
平成30年 名古屋大学医学部附属病院 病院助教
平成31年 名古屋大学医学部附属病院 助教
令和3年4月 うらた皮膚科 副院長
令和3年11月 うらた皮膚科 院長