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あせも

HEAT RASH
最終更新日:2025-10-05

あせもは、汗をかきやすい季節に多くの人が経験する、身近な皮膚トラブルの一つです。チクチクとしたかゆみや赤いポツポツは不快なものですが、その原因と正しい対処法を理解することで、症状を和らげ、効果的に予防することが可能です。
この記事では、あせも(汗疹)について、その正体から治療、予防法までを、医学的な情報に基づき、患者さんやご家族の皆様に分かりやすく解説します。あせもは汗そのものが汚れているから起こるのではなく、汗の通り道が詰まることによって生じる物理的な現象です。この点を理解することが、適切なケアへの第一歩となります 。

あせもとは
あせもの症状
あせもの原因
あせもの治療
日常生活での注意点
よくある質問

あせもとは

あせもとは

私たちの体には、体温を調節するために汗を出す「エクリン汗腺」という器官があり、そこから皮膚の表面まで「汗管」と呼ばれる管が伸びています 。あせも(医学用語では汗疹:かんしん)は、この汗の通り道である汗管が詰まることで発症する皮膚の疾患です 。
高温多湿の環境や激しい運動、発熱などによって大量に汗をかくと、汗の排出が追いつかなくなることがあります。その際、汗に含まれる塩分やミネラル、皮膚の垢やほこりなどが汗管の出口を塞いでしまいます 。出口を失った汗は皮膚の内部に溜まり、周囲の組織に漏れ出すことで、炎症や水ぶくれを引き起こします。これが、あせもの正体です 。つまり、あせもの根本的な問題は、汗そのものではなく、汗を適切に排出できない「汗の排出システムの不具合」にあるのです。

あせもと「汗かぶれ」の違い

あせもとよく似た症状に「汗かぶれ(汗による接触皮膚炎)」があります。この二つは原因が異なります。

  • あせも(汗疹): 汗管が物理的に詰まることで、汗が皮膚の内側に溜まって「点状」のブツブツや水ぶくれができる状態です 。
  • 汗かぶれ: 汗管は詰まっておらず、皮膚の表面に出た汗の成分(アンモニアや塩分など)が刺激となったり、衣類との摩擦が加わったりして炎症が起こる状態です。こちらは「面状」に赤みが広がることが多いのが特徴です 。

この違いを理解することは、セルフケアを行う上で非常に重要です。

あせもの症状

あせもは、汗管が詰まる皮膚の深さによって、主に3つのタイプに分類されます。症状が異なれば、対処法や注意点も変わってきます 。

水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)

皮膚の最も浅い部分である角層で汗管が詰まることで発生します 。

  • 見た目: 直径1~3mmほどの、水晶や水滴のように透明で小さな水ぶくれ(小水疱)がたくさんできます。赤みはありません 。
  • 症状: かゆみや痛みといった自覚症状はほとんどありません 。
  • できやすい人・状況: 汗腺の機能が未熟な新生児の顔によく見られますが、大人でも高熱を出した際などに現れることがあります 。
  • 経過: 数日で自然に乾燥し、皮膚が剥がれて治ることがほとんどです。特別な治療は必要としない最も軽症のタイプです 。

紅色汗疹(こうしょくかんしん)

一般的に「あせも」として認識されているのがこのタイプです。水晶様汗疹より少し深い、表皮内で汗管が詰まり、漏れ出た汗が炎症を引き起こします 。

  • 見た目: 1~4mm程度の赤いブツブツ(丘疹)がたくさんできます。周囲の皮膚も赤みを帯び、炎症を起こしている状態です 。
  • 症状: 強いかゆみを伴い、チクチクとした刺激感や熱っぽさを感じることがあります 。
  • できやすい部位: 首の周り、わきの下、ひじやひざの内側、足の付け根など、汗がたまりやすく蒸れやすい部分に好発します 。
  • 経過: 強いかゆみから患部を掻き壊してしまうことが多く、注意が必要です。

深在性汗疹(しんざいせいかんしん)

皮膚のさらに深い部分(真皮)で汗管が詰まることで起こります。紅色汗疹を繰り返すことで発症することがあります 。

  • 見た目: 皮膚の色と同じか、少し青白く平らに盛り上がった発疹ができます。赤みなどの炎症は見られません 。
  • 症状: かゆみはほとんどありません 。
  • できやすい人・状況: 主に熱帯地方で見られ、日本ではまれなタイプです 。
  • 注意点: このタイプが広範囲に及ぶと、汗を体外に出して体温を調節する機能が著しく低下するため、熱中症を引き起こす危険性があります。医療機関での管理が必要となる深刻な状態です 。

あせもの種類の見分け方

タイプ
見た目
主な症状・感覚
詰まる深さ
対処のポイント
水晶様汗疹
透明で小さな水ぶくれ
かゆみ・赤みはほぼない
角層内(ごく浅い)
皮膚を清潔・乾燥に保てば自然に治る
紅色汗疹
赤い小さなブツブツ
強いかゆみ、チクチク感
表皮内(浅い)
炎症とかゆみを抑えるケアが必要
深在性汗疹
白っぽく平らな盛り上がり
かゆみ・赤みはほぼない
真皮(深い)
熱中症のリスクあり。すぐに医療機関へ

あせもが悪化するとどうなるか

特に注意が必要なのは、かゆみの強い「紅色汗疹」です。かゆみに耐えられず掻き壊してしまうと、皮膚のバリア機能が破壊され、そこから細菌が侵入して二次感染を引き起こすことがあります 。

  • とびひ(伝染性膿痂疹): 掻き傷に細菌(主に黄色ブドウ球菌)が感染し、水ぶくれや膿ができます。それが破れると、中の液体に触れた他の部位にも次々と広がっていきます。名前の通り、他の人にもうつる可能性があります 。
  • あせものより(多発性汗腺膿瘍): 汗腺自体が細菌感染を起こし、赤く硬いしこりや膿だまりができます。特に乳幼児に多く見られ、痛みを伴うことがあります 。

紅色汗疹の管理における最も重要な目標は、単に不快感を和らげるだけでなく、この「かゆみ→掻き壊し→二次感染」という悪循環を断ち切ることです。かゆみを早期にコントロールすることが、より深刻な合併症を防ぐ鍵となります。

あせもの原因

あせもは、汗が皮膚に長時間とどまり、蒸れやすい状況であれば誰にでも起こり得ます。その根本には、汗が適切に排出されない環境があります。

環境的な要因:

気温と湿度が高い梅雨から夏にかけては、汗の量が増える一方で、湿度が高いために汗が蒸発しにくく、皮膚が常に湿った状態になりがちです。これが最大の誘因です 。

身体的・生活習慣的な要因:

多量の発汗: 激しい運動、風邪などによる発熱、また体質的に汗をかきやすい(多汗症)場合も、あせものリスクが高まります 。
肥満: 皮下脂肪が多いと熱がこもりやすく、皮膚のしわが寄る部分に汗がたまりやすくなります 。
長時間の同じ姿勢: デスクワークや、寝たきりの状態では、背中やおしりなど体の下になった部分が圧迫されて蒸れ、あせもができやすくなります 。

外的な要因:

衣類: 通気性の悪い化学繊維(ナイロン、ポリエステルなど)の衣服や、体を締め付けるデザインの服は、汗を閉じ込めてしまいます 。
絆創膏やギプス: 湿布や包帯、ギプスなどで皮膚が覆われている部分は、密閉された状態になり、非常にあせもができやすい環境となります 。
あせもは夏の病気というイメージがありますが、冬でも暖房の効いた室内で厚着をしたり、吸湿性の悪い肌着を着ていたりすると、同様に汗が蒸れて発症することがあります。季節を問わず「汗が蒸れる状況」こそが、あせもの直接的な原因なのです。

特にあせもになりやすい人

乳幼児・小児

赤ちゃんや子どもは、体の大きさは大人より小さいにもかかわらず、汗腺の数は大人とほぼ同じです。そのため、汗腺が密集しており、単位面積あたりの汗の量が多くなります。また、体温調節機能も未熟なため、あせもが非常にできやすいのです 。

寝たきりの方や高齢者

ご自身で体位を変えたり、衣服を調整したりすることが難しいため、背中や腰回りに汗がたまりやすくなります 。

あせもの原因

あせもは、汗が皮膚に長時間とどまり、蒸れやすい状況であれば誰にでも起こり得ます。その根本には、汗が適切に排出されない環境があります。

環境的な要因

気温と湿度が高い梅雨から夏にかけては、汗の量が増える一方で、湿度が高いために汗が蒸発しにくく、皮膚が常に湿った状態になりがちです。これが最大の誘因です 。

身体的・生活習慣的な要因:

多量の発汗: 激しい運動、風邪などによる発熱、また体質的に汗をかきやすい(多汗症)場合も、あせものリスクが高まります 。
肥満: 皮下脂肪が多いと熱がこもりやすく、皮膚のしわが寄る部分に汗がたまりやすくなります 。
長時間の同じ姿勢: デスクワークや、寝たきりの状態では、背中やおしりなど体の下になった部分が圧迫されて蒸れ、あせもができやすくなります 。

外的な要因:

衣類: 通気性の悪い化学繊維(ナイロン、ポリエステルなど)の衣服や、体を締め付けるデザインの服は、汗を閉じ込めてしまいます 。
絆創膏やギプス: 湿布や包帯、ギプスなどで皮膚が覆われている部分は、密閉された状態になり、非常にあせもができやすい環境となります 。
あせもは夏の病気というイメージがありますが、冬でも暖房の効いた室内で厚着をしたり、吸湿性の悪い肌着を着ていたりすると、同様に汗が蒸れて発症することがあります。季節を問わず「汗が蒸れる状況」こそが、あせもの直接的な原因なのです。

あせもの治療

あせもの治療は、そのタイプと重症度によって異なります。しかし、すべてのタイプに共通する最も基本的な治療は、原因である「汗による蒸れ」を取り除くことです。

すべてのタイプに共通する基本ケア

まず行うべきは、涼しい環境に移り、汗をかくのを抑えることです。エアコンの効いた部屋で過ごす、汗で濡れた衣服を脱ぐ、冷たいシャワーを浴びるなどして、皮膚を清潔で乾いた状態に保ちます 。かゆみのない水晶様汗疹であれば、多くの場合、この基本ケアだけで数日以内に自然に治ります 。

市販薬(OTC医薬品)の上手な使い方

赤みとかゆみを伴う紅色汗疹の場合は、炎症を抑える治療が必要です。

  • ステロイド外用薬(塗り薬): 炎症を鎮め、かゆみや赤みを抑えるのに最も効果的です。薬局やドラッグストアで購入できます。子ども用やデリケートな部位用など、強さがマイルドなものもありますので、薬剤師に相談して適切な薬を選びましょう。掻き壊して二次感染を起こす前に、早めに使用することが悪化を防ぐポイントです 。
  • 抗ヒスタミン薬(飲み薬): かゆみが非常に強く、夜眠れないなど日常生活に支障が出る場合には、かゆみを抑える飲み薬を併用することも有効です 。

市販薬を5~6日使用しても症状が改善しない、あるいは悪化する場合には、使用を中止して医療機関を受診してください 。

皮膚科での治療:受診すべきサイン

以下のような場合は、自己判断で対処を続けず、早めに皮膚科を受診しましょう。

  • かゆみが非常に強く、我慢できない
  • 発疹が体の広範囲に広がっている
  • 膿を持ったブツブツ(膿疱)がある、じゅくじゅくしている、痛みや腫れが強いなど、細菌感染が疑われる
  • 市販薬を1週間近く使っても良くならない、または悪化している
  • あせもかどうか自分で判断がつかない
  • まれなタイプである深在性汗疹が疑われる

皮膚科では、症状に応じてより効果の強いステロイド外用薬や、細菌感染を伴う場合には抗生物質の塗り薬や飲み薬が処方されます 。

日常生活で気をつけるポイント

あせもは治療も大切ですが、再発を防ぐためには日々の生活習慣を見直すことが最も重要です。予防の基本は、汗をかいても皮膚が蒸れた状態を長時間作らないことです。

汗の管理

  • こまめに汗を処理する: 汗をかいたら、できるだけ早くシャワーで洗い流すのが理想です 。シャワーが無理な場合は、濡らしたタオルやガーゼでやさしく汗を拭き取りましょう。乾いたタオルで拭くだけでは、汗の成分が皮膚に残り、刺激になることがあります 。

衣類と寝具の選び方

  • 素材: 肌に直接触れるものは、吸湿性・通気性に優れた綿(コットン)や麻(リネン)などの天然素材を選びましょう。スポーツ用の速乾性素材も有効です 。
  • デザイン: 体を締め付けない、ゆったりとしたデザインの服を選び、風通しを良くすることが大切です 。
  • 寝具: 寝ている間にも多くの汗をかきます。シーツや枕カバーも通気性の良い素材を選び、こまめに洗濯して清潔に保ちましょう 。

環境の整備

  • 室内の温湿度管理: エアコンや除湿機を適切に使い、室温を25~28℃、湿度を50~60%程度に保つと快適に過ごせ、過剰な発汗を防げます 。
  • 外出の工夫: 日中の最も暑い時間帯の外出や激しい運動はなるべく避け、涼しい時間帯に行動するように心がけましょう 。

スキンケアの重要性

  • 洗浄: 汗を洗い流す際は、ぬるめのお湯で、石鹸やボディソープをよく泡立ててから手でやさしく洗いましょう。ナイロンタオルなどでゴシゴシこすると、皮膚のバリア機能を傷つけ、かえって肌トラブルの原因になります 。
  • 保湿: 入浴やシャワーの後は、皮膚が乾燥しやすくなります。健康な皮膚のバリア機能を保つために、保湿ケアは非常に重要です。ただし、あせもができやすい時期や部位には、汗管を詰まらせる可能性のある油分の多いクリームやワセリンのような軟膏は避け、さらっとした使用感のローションやジェルタイプの保湿剤を選ぶのがおすすめです 。

これらの対策は、それぞれが独立しているわけではありません。涼しい環境を整え(環境)、通気性の良い服を着て(衣類)、汗をかいたらすぐに洗い流し(汗の管理)、適切な保湿剤で肌のバリア機能を整える(スキンケア)、というように、これらを組み合わせて総合的に行うことが、効果的なあせも予防につながります。

よくある質問

Q
あせもは他の人にうつりますか

A
いいえ、あせも自体は感染症ではないため、人から人へうつることはありません。
ただし、前述の通り、あせもを掻き壊して細菌感染を起こし「とびひ」になってしまった場合、その「とびひ」は接触によって他の人にうつる可能性があります。あせもを掻かないように管理することが重要です 。
 

Q
 治るまでどのくらいかかりますか

A
症状の程度によります。
かゆみのない水晶様汗疹は1~3日程度で自然に治ることが多いです。
一般的な紅色汗疹も、適切なケアを行えば1週間以内に改善することがほとんどです。
ただし、掻き壊して感染を起こしたり、症状が重かったりすると、治療にさらに時間がかかる場合があります 。
 

Q
ベビーパウダーは使ってもいいですか

A
かつては皮膚をサラサラに保つために使われていましたが、現在では多くの専門家はあせもの治療や予防にベビーパウダーの使用を推奨していません。パウダーの粒子が汗と混ざってダマになり、かえって汗管を詰まらせて症状を悪化させる可能性があるためです。汗をかいたら洗い流すか、濡れたタオルで拭き取る方が安全で効果的です 。