疥癬とは

疥癬は、ヒゼンダニによる感染症です。
痒みが強く、湿疹治療で改善しない手荒れ、体幹や陰部の結節性痒疹(赤いブツブツ)を生じます。
肌と肌の直接接触が主な感染経度となり、近年では老人福祉施設などでの集団発生が多く、若い方が普通に生活されている中で感染することは稀です。

疥癬の診断

疥癬の診断のポイント

疥癬診断のポイントは3つあります。
症状
感染源との接触歴の病歴(病院や高齢者施設など)
ステロイド外用で改善しないなどの治療経過
 

疥癬の検査

顕微鏡検査でヒゼンダニを検出することで診断します。
皮膚科専門医でもヒゼンダニを見つけることは難しく、ダニの検出率は60%程度(10~70%と幅がある)をいわれており、1回の診察で疥癬を完全に否定することは出来ません。

通常疥癬と角化型疥癬

重症度に応じて、通常疥癬と角化型疥癬の2種類があります。
角化型疥癬(ノルウェー疥癬ともよばれます)は通常発症することは稀で、疥癬の診断が遅れ、長期間の湿疹治療を行ったときなどに発症します。
 

通常疥癬

  • 感染個体数:数10~1000
  • 潜伏期間:1~2カ月
  • 頻度:頻発
  • 症状:激しい痒みのある赤いブツブツが多発。
  • 部位:手指と男性外陰部に多い。頭・顔面には無い。

 

角化型疥癬

  • 感染個体数:約100万以上
  • 潜伏期間:4~5日で発症することがある。角化型疥癬がうつっても、通常疥癬として発症します。
  • 頻度:稀
  • 症状:多彩な症状。全身のあかみ、フケ。
  • 部位:全身。頭・顔面や、爪の下にも生じる。

治療

殺虫のためのお薬

イベルメクチンの飲み薬

1週間間隔で少なくとも2回使用します。

妊婦、授乳婦、体重15㎏以下の患者には使用できません。

フェノトリンローションの塗り薬

1回1本を首から下に全体に外用し、12時間以上経過後に洗い流します。

1週間隔で少なくとも2回使用します。

外用剤のため塗り残しがあると効果がありません。通常、イベルメクチン内服を優先して使用します。

妊婦、授乳婦、体重15㎏以下の患者への、確立した使用データがありません。

補助的なお薬

・抗アレルギー剤の飲み薬

痒みの治療のために使用します。

・クロタミトン(オイラックス®クリーム)の塗り薬

痒みの治療のために使用します。 

 

患者さんに合わせた疥癬治療

イベルメクチン内服とフェノトリン外用が中心的薬剤になります。
下記の赤文字になっているものが、各患者さんでの主な治療です。
 

体重15㎏以上の方の疥癬治療

  • イベルメクチン内服(推奨度A)
  • フェノトリン外用(推奨度A)
  • イオウ剤外用(推奨度C1)
  • クロタミトン外用(推奨度C1)

 

体重15㎏以下の方の疥癬治療

  • フェノトリン外用(推奨度C1)…小児への確立したデータがまだありません。
  • イオウ剤外用(推奨度C1)
  • クロタミトン外用(推奨度C1)…大量または長期使用は避けます。

 

生後2か月未満の疥癬治療

  • フェノトリン外用(推奨度C1)…赤ちゃんへの確立したデータがまだありません。

 

妊婦の疥癬治療

  • フェノトリン外用(推奨度C1)…妊婦への確立したデータがまだありません。
  • イオウ剤外用(推奨度C1)
  • クロタミトン外用(推奨度C1)…大量または長期使用は避けます。

 

授乳婦の疥癬治療

  • フェノトリン外用(推奨度C1)…授乳婦への確立したデータがまだありません。