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ラピフォートワイプ

Rapifort Wipes
最終更新日:2026-04-18
原発性腋窩多汗症(脇汗)の保険適用治療薬「ラピフォートワイプ」の効果や正しい使い方、副作用、費用について解説します 。1日1回、就寝前にサッと拭くだけの使い切りシートタイプで、9歳のお子様から使用可能です 。有効成分が皮膚から浸透して発汗を抑え、塗布後すぐに乾くためベタつきません。エクロックゲルとの違いや、処方の流れなど、よくある疑問にもお答えします。

ラピフォートワイプとは
ラピフォートワイプの脇汗改善で期待できる効果と即効性
ラピフォートワイプの正しい使い方と効果を高める注意点
事前に知っておきたいラピフォートワイプの副作用とリスク
禁忌事項:ラピフォートワイプを使用できない方・注意が必要な方
当院におけるラピフォートワイプ処方の流れ
ラピフォートワイプの費用
よくある質問

原発性腋窩多汗症の治療薬「ラピフォートワイプ」とは?

新しいワイプ(不織布)型の脇汗治療薬が登場した背景

気温が高いわけでもなく、激しい運動をしたわけでもないのに、日常生活に支障をきたすほど脇に多量の汗をかいてしまう状態を「原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)」と呼びます 。仕事中にシャツに大きな汗染みができてしまったり、人目が気になって集中できなかったりと、脇汗は患者様にとって深い精神的ストレスや生活の質の低下をもたらす深刻な悩みです。
これまで多汗症の治療には、塩化アルミニウム液の塗布や注射治療など様々な選択肢がありましたが、2022年5月に日本国内で新たな治療薬として「ラピフォートワイプ(一般名:グリコピロニウムトシル酸塩水和物)」が発売されました 。このお薬の最大の特徴は、薬液があらかじめ染み込んでいる「1回使い切りの不織布(ワイプ)製剤」であるという点です 。これまでの塗り薬のように手に取って塗る手間がなく、サッと拭くだけで完了するという手軽さが、毎日の治療を続ける上で大きなメリットとなっています。

エクリン汗腺へのアプローチとワキガ(腋臭症)との違い

脇の汗に関する悩みとして、多汗症としばしば混同されるのが「ワキガ(腋臭症)」です。人間の皮膚には、主に2種類の汗腺が存在しています。一つは全身に広く分布し、体温調節のために水分と塩分からなる無色無臭の汗を出す「エクリン汗腺」です 。もう一つは、脇の下などの特定の部位に存在し、タンパク質や脂質を含んだ汗を出す「アポクリン汗腺」です。ワキガ特有のニオイは、このアポクリン汗腺から出た汗が皮膚の常在菌に分解されることで発生します。
ラピフォートワイプの有効成分は、無色無臭の汗を大量に分泌する「エクリン汗腺」の働きを抑えるお薬です 。そのため、アポクリン汗腺が根本的な原因であるワキガ(腋臭症)そのものを直接的に治療するお薬ではありません 。しかしながら、多量の脇汗をかくことで脇の下が蒸れ、雑菌が繁殖しやすくなってニオイが強まっているケースは非常に多く見られます。このような「多汗が原因で増強されているニオイ」に関しては、ラピフォートワイプで発汗量そのものを減らすことで、二次的にニオイの軽減が期待できる可能性があります 。

簡便で衛生的な使い切りタイプのメリット

ラピフォートワイプは、毎日新しいシートを開封して使用する1回使い切りのワイプ製剤です 。この形状には、医療的な観点からも多くのメリットがあります。まず、毎回決まった量の薬液を正確に塗布できるため、塗りすぎによる副作用のリスクや、塗布量が足りずに効果が出ないといったトラブルを防ぐことができます。
また、薬液を塗布した後、およそ20秒から30秒という非常に短い時間で自然に乾燥する点も大きな魅力です 。塗った後のベタつきが少なく、すぐに衣服を着ることができるため、忙しい日常生活の中にも無理なく取り入れることができます。さらに、毎回新しいシートを使用するため雑菌が繁殖する心配がなく、常に衛生的な状態で皮膚のケアを継続することが可能です 。

当院のワキ汗治療

当院では様々な治療法を患者様に合わせてご提案しています。

  ミラドライ 外科手術 ボトックス エクロックゲル
ラピフォートワイプ
持続時間 長期 長期 3~6カ月 1日
効果 ★★★ ★★★ ★★
傷痕 - あり - -
治療時間 1時間 1~2時間 15分 -
ダウンタイム 数日 2~3週間 - -
費用 275,000円 当院では未実施 29,800円/回 約3,000円/28日
(3割負担の場合)

ラピフォートワイプの脇汗改善で期待できる効果と即効性

神経伝達物質をブロックする「抗コリン作用」のメカニズム

なぜラピフォートワイプを皮膚に塗るだけで汗が止まるのでしょうか。その秘密は、自律神経の働きをコントロールするメカニズムにあります。人間が汗をかくとき、体内では交感神経の末端から「アセチルコリン」という神経伝達物質が放出されます。このアセチルコリンが、エクリン汗腺の表面にある「ムスカリンM3受容体」という鍵穴のような部分に結合することで、初めて汗腺に対して「汗を出せ」という指令が伝わります。
ラピフォートワイプの有効成分は、このアセチルコリンの働きを阻害する「抗コリン作用」を持っています 。具体的には、アセチルコリンが受容体に結合するよりも先に、お薬の成分が受容体にフタをしてしまいます 。これにより、脳からの発汗の指令が汗腺に届かなくなり、結果として過剰な脇汗を元から断ち切ることができるのです 。

臨床試験で確認された高い発汗抑制効果と即効性

ラピフォートワイプの効果は、国内で実施された厳密な臨床試験によって科学的に実証されています。多汗症の患者様を対象とした試験では、有効成分の入っていないプラセボ(偽薬)を使用したグループと比較して、ラピフォートワイプを使用したグループは劇的な改善を示しました。
具体的には、使用を開始してからわずか2週目の時点で、92.9%もの患者様に「発汗量の明らかな改善(ベースラインと比較して50%以上の発汗量減少)」が認められました 。このデータは、ラピフォートワイプが治療開始から比較的早い段階でしっかりと効果を実感できる、非常に即効性に優れたお薬であることを証明しています 。なかなか効果が出ないと治療のモチベーションが下がってしまいますが、早期に効果を実感しやすい点は患者様にとって大きな安心材料となります。

 原発性腋窩多汗症患者497名を対象とした国内試験

患者

HDSS(自覚症状スコア)が3点以上(1~4点)

 スコア3︓発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある

 スコア4︓発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある

腋窩発汗量が両側50㎎以上

方法

薬剤使用グループと、使用しないグループでの比較試験(無作為化、基剤対照、二重盲検)。

1日1回(夜就寝前)、1枚を用いて左右の腋窩を1回ずつ拭い、28日間塗布した際の有効性、安全性の評価。

結果

HDSSが2段階改善かつ両腋窩の発汗重量が半分以下に改善した割合、41.1%が改善。(対照群16.4%)

投与開始日と比較した4週後のHDSSが2段階以上改善かつ両腋窩の平均発汗重量が50%以上改善した患者の割合

HDSSが2段階以上改善した患者の割合、44.0%が改善。(対照群20.6%)

投与開始日と比較した4週後のHDSSが2段階以上改善した患者の割合

両腋窩の平均発汗重量が50%以上改善した患者の割合、89.9%が改善。(対照群70.3%)

投与開始日と比較した4週後の両腋窩の平均発汗重量が50%以上改善した患者の割合

長期的な使用における効果の持続性について

原発性腋窩多汗症は慢性的な疾患であるため、長期間にわたって安全に効果を維持できるかどうかが非常に重要です。ラピフォートワイプに関する臨床試験では、52週間(約1年間)にわたって毎日塗布を継続した場合のデータも収集されています 。
その結果、長期間の使用においても効果が途切れることなく、発汗を抑制する効果がしっかりと持続することが確認されています 。つまり、初めのうちは効いていたのに次第に効かなくなるといった「耐性」が生じにくく、長期的な症状のコントロールにおいて非常に信頼性の高い選択肢と言えます。効果が認められる場合は、医師の指導のもとで安心して継続的な使用をおすすめします 。

 原発性腋窩多汗症患者377名を対象とした国内長期投与試験

患者

HDSS(自覚症状スコア)が3点以上(1~4点)

 スコア3︓発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある

 スコア4︓発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある

方法

1日1回(夜就寝前)、1枚を用いて左右の腋窩を1回ずつ拭い、52週間塗布した際の有効性、安全性の評価。

結果

HDSSが2段階改善した割合の掲示推移。28週後で60.5%、52週後で64.3%であった。

平均発汗重量が50%以上改善した患者の割合の経時推移。28週後で82.6%、52週後で85.3%であった。

両腋窩の平均発汗重量のベースラインからの変化量の経時推移。28週後で-102.74mg/5分、52週後で-100.18mg/5分であった。

ラピフォートワイプの正しい使い方と効果を高める注意点

1日1回・就寝前に行う基本的な塗布手順

ラピフォートワイプの使い方は非常にシンプルですが、お薬の効果を最大限に引き出し、かつ副作用を防ぐためには、正しい手順を守ることが不可欠です。基本的には、1日1回、1枚のワイプを使用して両脇に塗布します 。
塗布するタイミングは1日のうちいつであっても医学的な問題はありませんが、国内の臨床試験は原則として「夜の就寝前」に塗布する形で実施されており、その有効性が確認されています 。就寝中は一般的に交感神経の活動が穏やかになり、発汗量が減少するため、お薬の成分が汗で洗い流されることなく、皮膚の奥の汗腺までしっかりと浸透しやすいという合理的な理由があります。
具体的な手順としては、まず入浴などを済ませ、両脇が清潔でしっかりと乾いた状態であることを確認します。水分が残っていると成分が薄まったり浸透が妨げられたりするため注意が必要です。次にパッケージを開封してワイプを取り出し、片方の脇全体を優しく拭くように塗布します 。その後、そのまま同じワイプを使って、もう片方の脇にも塗布します 。両脇への塗布が終わったワイプは、再利用せずに直ちにゴミ箱へ廃棄してください 。ラップなどで密封して使用することも禁止されています 。

塗布直後の手洗い義務と薬剤除去のポイント

ラピフォートワイプを使用した直後に、患者様が絶対に守らなければならない重要なルールがあります。それが「直ちに行う手洗い」です 。
お薬の成分であるグリコピロニウムトシル酸塩水和物は、皮膚だけでなく粘膜からも吸収されやすい性質を持っています。もし、薬液が付着したままの手で無意識に目をこすってしまうと、目の粘膜から抗コリン成分が吸収され、瞳孔が開いてまぶしくなったり、ピントが合わなくなったりする目の副作用(散瞳や霧視)を引き起こす危険性が非常に高くなります 。
そのため、塗布後は必ず直ちに手を洗う必要があります。手洗いの方法については、石鹸を使用しなくても、流水で10秒間しっかりと洗い流すだけで、手に付着した薬剤の約90%を除去できることがデータとして確認されています 。塗布と手洗いを必ずセットの習慣として身につけてください。また、脇に塗布した成分を十分に浸透させるため、塗布後少なくとも4時間は脇を水で洗ったりシャワーを浴びたりしないよう注意してください 。

脱毛や自己処理直後のデリケートな肌への使用制限

美容皮膚科などでのレーザー脱毛や、ご自宅でのカミソリ・毛抜きなどによる自己処理を行った直後の皮膚には、目に見えない微小な傷がついており、皮膚のバリア機能が著しく低下しています 。脱毛直後の乾燥した肌は、通常時よりも外部からの刺激に対して非常に敏感な状態になっています 。
このようなデリケートな状態の脇にラピフォートワイプを塗布すると、お薬に含まれるアルコール成分や有効成分による刺激が強く出すぎてしまい、強いヒリヒリ感、赤み、かぶれといった深刻な肌トラブルを誘発するリスクが高まります 。また、バリア機能が低下していることで、本来よりも多くのお薬の成分が血液中に吸収されてしまい、全身の副作用が出やすくなる恐れもあります。
脱毛後や自己処理後に赤みやかゆみがある場合は、冷やしたタオルでクールダウンを行うなどして肌を落ち着かせることを優先してください 。皮膚の状態が完全に回復して、赤みやヒリヒリ感がなくなってから、ラピフォートワイプの使用を再開するようにしてください。

事前に知っておきたいラピフォートワイプの副作用とリスク

ラピフォートワイプは優れた効果を持つ医薬品である一方で、一定の副作用のリスクが存在します。安全に治療を続けるためには、どのような症状が起こり得るのかを事前に把握しておくことが大切です。副作用は大きく分けて、薬を塗った「局所に起こる皮膚症状」と、成分が体内に吸収されることで「全身に起こる症状」の2つに分類されます。

塗布部位に現れやすい局所的な皮膚トラブル

最も頻繁に見られる副作用は、ワイプで直接薬液を塗布した脇の皮膚に生じる刺激症状です 。臨床試験や市販後の調査データでは、以下のような症状が報告されています。

 禁忌となる主な条件  使用できない医学的な理由
 閉塞隅角緑内障の方 お薬の抗コリン作用により瞳孔が散大し、眼球内の圧力(眼圧)が急激に上昇して、失明のリスクもある「緑内障発作」を誘発する極めて高い危険性があるためです 。
 前立腺肥大などによる排尿障害がある方 尿道を囲む筋肉の働きが抑えられ、尿が全く出なくなる「尿閉(にょうへい)」という深刻な状態を引き起こすリスクがあるためです 。
成分に対し過敏症の既往歴がある方 過去にソフピロニウム臭化物や、このお薬に含まれる添加物で重篤なアレルギーを起こしたことがある方は、アナフィラキシーなどを防ぐため使用できません 。
これらは使用を継続するうちに皮膚が慣れて次第に軽快していくケースもありますが、症状が強く出るときや、水ぶくれを伴うような激しい炎症が見られる場合は、無理に使い続けず直ちに使用を中止し、医師へ相談してください 。

抗コリン作用が引き起こす全身性の症状(口の渇き・目のかすみなど)

ラピフォートワイプの有効成分は抗コリン作用を持っているため、皮膚から微量に血液中に吸収された成分が、脇以外の全身の受容体に作用してしまうことがあります 。これにより、以下のような全身症状(抗コリン副作用)が現れることがあります 。

 主な全身性の副作用  発生のメカニズム(抗コリン作用による影響)
 口の渇き(口渇)  唾液腺の分泌が抑制されるため、口の中が乾燥しやすくなります 。
 排尿困難・頻尿  膀胱の筋肉が弛緩し、尿が出にくくなったり、残尿感から頻尿になったりします 。
 目のかすみ・ドライアイ  瞳孔が開いたままになる(散瞳)、ピント調節機能が低下する(霧視)、涙が減る(ドライアイ)といった症状が出ます 。
光をまぶしく感じる(羞明) 散瞳により目に入る光の量が増加し、通常よりも異常にまぶしく感じます 。
重い副作用はまれですが、強い全身症状が出た場合には直ちに使用を中止し、医師に問い合わせる必要があります 。特に、目の調節障害(ピントが合わない、まぶしいなど)が現れた場合は、視界が不鮮明になり重大な事故につながる恐れがあるため、症状が完全に回復するまで自動車の運転や危険を伴う機械の操作は絶対に行わないでください 。

夏場に注意すべき体温調節機能への影響と熱中症対策

お薬の成分によって全身の汗腺の働きが強く抑えられた場合、理論上、体温調節機能に影響を及ぼすリスクが存在します。人間は汗をかき、その汗が蒸発する際の気化熱を利用して体温を下げています。ラピフォートワイプは脇という局所への使用を前提としているため、全身の体温調節機能が完全に失われるわけではありません。
しかしながら、極端な高温環境下や激しい運動時には注意が必要です。万が一、めまい、立ちくらみ、異常な体温上昇、筋肉のけいれんなど、熱中症を疑う症状が現れた場合には、直ちに涼しい場所へ移動し、衣服を緩めて体を冷やすなどの体温を下げる応急処置を行ってください 。同時に、水分と塩分を十分に補給し、それでも症状が改善しない場合は速やかに医療機関を受診してください 。

禁忌事項:ラピフォートワイプを使用できない方・注意が必要な方

ラピフォートワイプは、すべての方に安全に使用できるわけではありません 。お薬の持つ抗コリン作用によって、特定の疾患を抱えている方には重大な悪影響を及ぼす危険性があるため、使用が厳しく禁じられている条件(禁忌)が存在します。

重大なリスクを伴うため使用が禁止されている疾患

以下の条件に該当する患者様は、症状の悪化や生命に関わる副作用を引き起こす恐れがあるため、ラピフォートワイプを使用することができません(禁忌) 。

閉塞隅角緑内障のある方

緑内障の中でも「閉塞隅角緑内障」と診断されている方は絶対に使用できません。抗コリン作用によって瞳孔が開く(散瞳する)と、目の中の水分(眼水)の出口が塞がってしまい、眼圧が急激に上昇する「急性緑内障発作」を引き起こす危険性が極めて高いためです。これは失明につながる恐れのある重篤な状態です。

前立腺肥大による排尿障害がある方

前立腺肥大症によって、すでに尿が出にくい状態(排尿障害)にある方も使用できません。お薬の作用が膀胱の収縮力を低下させ、尿道の抵抗を高めるため、完全に尿が出なくなる「尿閉」という深刻な状態を誘発するリスクがあるためです。

有効成分に対し過敏症の既往歴がある方

過去にグリコピロニウムトシル酸塩水和物を使用して、発疹やアナフィラキシーなどのアレルギー反応を起こしたことがある方は、再度の使用でより重篤な反応を引き起こす恐れがあるため禁忌となります。

処方前に必ず医師への相談が求められる対象者

絶対的な禁忌ではないものの、以下の条件に当てはまる方は、お薬の使用によって予期せぬトラブルが起きる可能性があるため、処方前に必ず医師にその旨を伝えて相談する必要があります 。

脇に湿疹などの皮膚炎がある方

お薬の刺激によって皮膚炎が悪化する恐れがあります 。また、皮膚のバリア機能が低下していることで成分が血液中に過剰に吸収され、口の渇きなどの全身性の副作用が出やすくなる懸念があります。

9歳未満のお子様

ラピフォートワイプは9歳以上の患者様に対して適応が承認されています 。9歳未満の小児を対象とした臨床試験は実施されておらず、安全性と有効性が確立されていないため、使用することはできません 。なお、9歳以上のお子様が使用する場合であっても、必ず保護者の指導と監督のもとで安全に使用してください 。

妊婦、産婦、授乳中の方

妊娠中の安全性は完全には確立されておらず、また授乳中の場合はお薬の成分が母乳へ移行する可能性を完全に否定できないため、治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断した場合にのみ慎重に処方されます 。

当院におけるラピフォートワイプ処方の流れ

初診時の問診と原発性腋窩多汗症の診断プロセス

当院でラピフォートワイプの処方をご希望される場合、まずは医師による診察と的確な診断からスタートします。初診時には、患者様の発汗の状況や、それが日常生活にどの程度の影響を与えているのかを詳細にヒアリング(問診)いたします。
診断にあたっては、他の病気(甲状腺機能亢進症や感染症など)が原因で汗をかいているわけではないこと(原発性)を確認します。その上で、原因不明の過剰な脇汗が6ヶ月以上続いており、かつ「両脇で同じように多量の汗をかく」「週に1回以上、多汗のエピソードがある」「睡眠中は局所の多汗が止まっている」などの基準を満たす場合に、原発性腋窩多汗症と確定診断を行います。また、HDSS(多汗症疾患重症度評価度)というスコアを用いて症状の重症度を客観的に評価し、患者様に最適な治療方針を決定します。

症状に合わせた処方と定期的なフォローアップ体制

原発性腋窩多汗症と診断され、禁忌事項に該当しないことが確認できれば、ラピフォートワイプの処方を行います。処方時には、お薬の正しい使い方や副作用の初期症状について、医師およびスタッフから丁寧にご説明いたします。
お薬の使用を開始した後は、効果の現れ方や、皮膚の赤み・口の渇きといった副作用の有無を確認するため、定期的な再診(フォローアップ)をお願いしています。特に使用開始直後は皮膚炎が起こりやすいため、皮膚の状態に合わせて使用頻度を調整したり、必要に応じて保湿剤を併用したりといったきめ細やかなサポートを行います。万が一、お肌に合わない場合は他の治療薬への変更も柔軟に提案いたします。

保険適用されるラピフォートワイプの費用・薬価の目安

1包あたりの薬価と1ヶ月分処方時の基本料金

ラピフォートワイプは、原発性腋窩多汗症という疾患に対する正式な治療薬として厚生労働省から認可されており、健康保険が適用されます 。そのため、患者様は全額を自己負担する必要がなく、経済的な負担を抑えて治療を受けることができます。
お薬そのものの公定価格(薬価)は、1包あたり約242.3円〜250.6円(※薬価改定の時期等により微小な変動があります)と定められています 。一般的な処方では、1ヶ月分として28包または30包が処方されます。

患者様の自己負担割合(1割〜3割)に応じた月額費用の比較

ここでは、1ヶ月分として30包が処方された場合を想定し、健康保険の自己負担割合に応じた月額の薬剤費(目安)を整理しました 。
約7,518円È

 健康保険の自己負担割合  1包あたりの薬価 1ヶ月分(30包)の薬価合計   窓口で支払う薬代の目安(月額)
 3割負担の方  約250.6円  約7,518円   約2,250円
 2割負担の方  約1,500円 
 1割負担の方  約750円 

※28包分として処方された場合は、3割負担の方で約2,035円〜2,105円が目安となります 。

診察料や処方箋料を含めたトータルコストの考え方

上記の表で示している金額は、あくまで「ラピフォートワイプというお薬そのものの費用(薬代)」のみの目安です 。実際に医療機関を受診し、調剤薬局でお薬を受け取る際には、この薬代に加えて以下のような費用が別途発生します。

  • 診察料(初診料・再診料): クリニックで医師の診察を受けるための費用。
  • 処方箋料: 医師がお薬を出すための処方箋を発行する費用。
  • 調剤基本料・薬剤服用歴管理指導料など: 調剤薬局で薬剤師がお薬を準備し、安全性を確認して説明を行うための費用。

したがって、一般的な3割負担の患者様が1ヶ月分のラピフォートワイプを処方された場合、トータルの出費としては薬代の約2,250円に診察代・調剤代が加算され、およそ4,000円前後の自己負担となるケースが多くなります。多汗症の治療薬としては標準的な価格帯であり、高額な自費診療の治療と比較すると継続しやすい設定と言えます。

よくある質問

A
お薬を塗布した直後に入浴やシャワーを行うと、有効成分が皮膚の奥の汗腺に十分に到達する前に洗い流されてしまい、期待される効果が得られません。臨床試験のデータに基づき、塗布した後は「少なくとも4時間」は脇を水や石鹸で洗わないことが強く推奨されています 。そのため、夜の入浴を済ませて脇を清潔に乾かした後の、就寝前のタイミングで塗布するのが最も合理的で効果的な方法です。
 
A
 万が一、お薬の成分が目に入ってしまった場合は、パニックにならず、直ちに大量の水道水(流水)で目をしっかりと洗い流してください 。成分が目の粘膜から吸収されると、瞳孔が開いて光を異常にまぶしく感じたり、ピントが合わずかすんで見えたりする調節障害が出現する可能性があります。目を十分に洗い流した後も、目の異常感(まぶしさ、かすみ、痛みなど)が残る場合は、速やかに眼科医の診察を受けてください 。また、視界が正常に回復するまでは、絶対に車の運転や自転車の運転、危険を伴う機械の操作を行わないでください 。
 
A

ラピフォートワイプは、9歳以上の患者様から使用が可能です 。9歳未満の小さなお子様を対象とした臨床試験は実施されていないため、安全性の観点から使用することはできません 。また、お子様が使用される場合は、誤って目や口に入れないよう、必ず保護者の手の届かない場所に保管し、保護者の指導・監督のもとで使用させてください 。
 
A
ラピフォートワイプと同様に、抗コリン作用を利用して原発性腋窩多汗症を治療する外用薬として、ゲル状の製剤(エクロックゲルなど)も存在します。お薬が汗を抑える基本的なメカニズムは同じですが、最大の違いは「お薬の形状と使用感」にあります。ラピフォートワイプは1回使い切りの不織布シートであるため、毎回決まった量を塗ることができ、旅行や出張などの持ち運びにも非常に便利です。また、塗布後20〜30秒でサラッと乾燥するため 、塗った後のベタつきが苦手な方にとって使いやすいという特徴があります。一方で、アルコール成分による刺激に敏感な肌質の方には、ゲル剤の方が適している場合もあります。どちらのお薬がご自身の体質やライフスタイルに合っているかは、診察時に医師と相談して決めることができます。