顔のイボとは

はじめに:気になる顔のポツポツ、その正体は?

ある日ふと鏡を見ると、顔に今までなかった小さなポツポツができている。そんな経験に、不安や戸惑いを覚える方は少なくないでしょう。特に顔は人の目に付きやすい部分だけに、その悩みは深刻になりがちです。
多くの方がこのポツポツをひとくくりに「イボ」と呼びますが、実はその正体は一つではありません 。一般的に「イボ」という言葉は、皮膚にできた小さな盛り上がり(隆起性病変)全般を指す俗語として使われています 。しかし、医学の世界では、これらの「イボ」は原因や性質によって全く異なるものとして分類され、それぞれに適した対処法が存在します。
この記事では、顔にできる「イボ」の正体を明らかにし、なぜできるのか、どのような種類があるのか、そして専門家はどのように治療し、私たちはどう予防すればよいのかを、一つひとつ丁寧に解説していきます。まず最も大切なことは、気になるできものがあれば、自己判断せずに専門家である皮膚科医に相談することです。

「イボ」の2つの大きな原因:ウイルス性と非ウイルス性

顔にできる「イボ」とよばれるものの原因は、大きく2つに分けることができます。それは「ウイルスが原因のもの」と「ウイルスが原因ではないもの」です。この違いを理解することが、イボと正しく向き合うための第一歩となります。
ウイルス性のイボ 医学的に「疣贅(ゆうぜい)」と呼ばれるイボは、すべて「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスの感染が原因で起こります 。このウイルスは皮膚の非常に小さな傷から侵入し、皮膚の細胞に感染して異常に増殖させることで、あのポツポツとしたイボを作り出すのです 。ウイルスが原因であるため、このタイプのイボは、人から人へ、あるいは自分の体の他の部位へと広がる可能性があります 。
非ウイルス性のイボ 一方で、多くの方が「イボ」と認識しているものの中には、ウイルスとは全く関係のないものが数多く含まれます。これらは主に、加齢、長年にわたる紫外線の影響、皮膚への摩擦といった要因が積み重なってできる良性の皮膚腫瘍です 。代表的なものに「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」や「軟性線維腫(なんせいせんいしゅ)」などがあります。これらは皮膚の老化現象の一環とも言え、ウイルス性ではないため、他の人にうつることはありません 。
この根本的な違いを理解しないまま対処しようとすると、大きな問題が生じることがあります。例えば、うつらない加齢によるイボをウイルス性だと勘違いして過度に心配したり、逆に、うつる可能性のあるウイルス性のイボをただの「年寄りイボ」だと思い込み、無意識のうちに自分や家族に広げてしまうケースです。正しい知識を持つことが、適切な行動につながります。

なぜ専門家の診断が大切なのか

「たかがイボ」と軽く考え、自己判断で市販薬を使ったり、自分で取ろうとしたりするのは非常に危険です。顔にできるイボの種類は多岐にわたり、その見た目も非常に似ているため、専門家である皮膚科医でさえ、一見しただけでは区別が難しい場合があります 。
皮膚科医は、「ダーモスコープ」という特殊な拡大鏡を用いて、できものの表面構造や色調、血管のパターンなどを詳細に観察します 。これにより、それがウイルス性なのか、加齢によるものなのか、あるいは他の皮膚疾患なのかを高い精度で診断します。
最も重要なのは、まれに皮膚がん(悪性腫瘍)がイボとよく似た見た目をしていることがあるという点です 。もし悪性のできものだった場合、自己判断で放置したり、不適切な処置で刺激を与えたりすると、発見が遅れ、治療が困難になる可能性があります 。
正しい診断が、正しい治療への唯一の道です。自己判断のリスクを避け、安全かつ効果的に悩みを解決するためにも、顔に気になるできものができたら、まずは皮膚科を受診することを強くお勧めします。

顔のイボができる原因

顔のイボの発生メカニズムは、その原因がウイルスなのか、それとも加齢などの他の要因なのかによって根本的に異なります。それぞれの「物語」を理解することで、より効果的な予防策へとつなげることができます。

ウイルス感染:ヒトパピローマウイルス(HPV)とは

ウイルス性のイボの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)です。このウイルスには非常に多くの「型(タイプ)」が存在し、どの型に感染するかによって、イボができる場所や見た目が変わってきます 。
感染の仕組み HPVは、私たちの皮膚にできた目には見えないほどの小さな傷口から体内に侵入します 。顔の場合、日々の洗顔やスキンケア時の摩擦、あるいはカミソリでの髭剃りや顔剃りなどが、ウイルスにとって格好の侵入経路となります 。
イボが育つ仕組み 皮膚の細胞に感染したウイルスは、巧みな戦略で自らを増殖させます。ウイルスは感染した細胞(表皮細胞)を異常に増殖させ、皮膚を盛り上がらせてイボを形成します。この厚くなった皮膚層は、ウイルスを体の免疫システム(免疫細胞)から守るための「隠れ家」の役割も果たします。免疫細胞からの攻撃を逃れたウイルスは、その中で安全に数を増やしていくのです 。
感染の広がり方 ウイルス性のイボは感染力を持っています。その広がり方には主に3つのパターンがあります。

直接接触感染

イボのある人の皮膚と、他の人の皮膚が直接触れることで感染します 。

間接接触感染

ウイルスが付着したものを介して感染します。例えば、タオルやカミソリの共用、あるいはプールや公衆浴場、スポーツジムの床やマットなどに落ちた皮膚の垢(あか)に含まれるウイルスから感染することもあります 。

自己接種

これが特に注意すべき点です。自分の体にあるイボを触ったり、引っ掻いたりした指で、顔の別の場所を触ることで、ウイルスが移動し、そこに新たなイボを作ってしまうことがあります 。これを「自家接種」と呼びます。

加齢と紫外線:長年のダメージの蓄積

ウイルスとは異なり、加齢や紫外線が原因でできるイボは、ある種の「蓄積」の結果として現れます。これらは感染症ではなく、皮膚の老化現象の一環であり、したがって他人にうつることはありません 。
加齢の役割 私たちの皮膚は、常に新しい細胞が生まれ、古い細胞が垢となって剥がれ落ちる「ターンオーバー」というサイクルを繰り返しています。しかし、年齢を重ねるとこのターンオーバーの速度が遅くなります 。その結果、本来は剥がれ落ちるはずの古い角質細胞が皮膚表面に溜まりやすくなり、部分的に厚く盛り上がってイボのような外観を呈することがあります。
紫外線の役割 長年にわたって浴び続けた紫外線は、皮膚にとって最大の外的ストレス要因の一つです。紫外線は皮膚細胞のDNAにダメージを与え、細胞の正常な成長サイクルを乱します。このダメージが数十年にわたって蓄積されることで、特に「脂漏性角化症」のようなイボが発生しやすくなります 。顔や手の甲など、日光に当たりやすい場所にできやすいのはこのためです。
このように、ウイルス性のイボが「感染」という単一のイベントから始まるのに対し、加齢によるイボは「長年のダメージの蓄積」という、時間をかけたプロセスによって形成されます。この違いを理解することは、予防法を考える上で非常に重要です。

その他の要因:摩擦、体質、免疫力の関係

ウイルス感染や加齢・紫外線以外にも、イボの発生に関わる要因がいくつかあります。

摩擦

ネックレスや衣類の襟などが常に擦れる首筋や、下着が擦れる部分などに「軟性線維腫(スキンタッグ)」ができやすいのは、物理的な刺激が関係していると考えられています 。

体質(遺伝)

特定のイボができやすいかどうかは、遺伝的な要因も関係します。例えば、脂漏性角化症は高齢者に多いものの、体質によっては20代といった若い頃からでき始める人もいます 。

免疫力

体の免疫システムは、ウイルスなどの外敵から体を守る重要な役割を担っています。睡眠不足やストレス、不規則な食生活などで免疫力が低下していると、HPVに感染しやすくなったり、感染したウイルスを体外に排除する力が弱まったりして、ウイルス性のイボができやすくなります 。

これらの要因は複雑に絡み合い、顔のイボの発生に影響を与えています。

顔のイボの種類

顔にできる「イボ」には様々な種類があり、それぞれ見た目や特徴が異なります。ここでは、代表的なものを「ウイルス性」と「非ウイルス性」に分けてご紹介します。ただし、これはあくまで一般的な特徴であり、最終的な診断は必ず皮膚科医に委ねるようにしてください。

ウイルスが原因のイボ

これらはすべてHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染によって生じ、うつる可能性があります。

尋常性疣贅

見た目: 硬く盛り上がった、表面がザラザラ・ゴツゴツしたできものです。色は肌色から薄い褐色で、よく見ると黒い点々(ウイルスによってできた血栓)が見えることがあります 。

場所: 顔のどこにでもできますが、髭剃りなどで傷つきやすい口周りや顎などによく見られます 。

扁平疣贅

見た目: 表面が平ら、もしくはわずかに盛り上がった、なめらかなできものです。大きさは数ミリ程度で、色は肌色か薄い褐色をしており、シミのように見えることもあります。多発する傾向があります 。

特徴: 特に若い女性に多く見られるため、「青年性扁平疣贅」とも呼ばれます 。

糸状疣贅

見た目: 皮膚から糸のように細長く、指のように飛び出した形をしています 。

場所: まぶた、唇、首、鼻の周りなど、皮膚の柔らかい部分にできやすいのが特徴です 。

加齢や紫外線が主な原因のイボ

これらはウイルスとは無関係で、うつることはありません。

脂漏性角化症

見た目: 最初は平らなシミのように現れ、徐々に盛り上がってきます。表面はザラザラとしており、色は薄茶色から黒褐色まで様々です。「老人性イボ」とも呼ばれ、まるで皮膚に貼り付けたような見た目をしています 。

特徴: 中高年以降に非常によく見られ、80歳以上ではほぼすべての人にあると言われるほど一般的な皮膚の変化です 。

軟性線維腫

見た目: 1~3mm程度の小さく柔らかい、皮膚から飛び出したようなできものです。色は肌色か少し褐色がかっています 。

場所: 「首イボ」として知られるように首に多発するほか、まぶた、脇の下など、皮膚が薄く摩擦が起きやすい場所にできます 。一般的に「アクロコルドン」や「スキンタッグ」とも呼ばれます 。

その他、イボと間違えやすいもの

脂腺増殖症: Tゾーンなど皮脂の多い部分にできる、黄色っぽく中央が少しへこんだブツブツです 。

汗管腫): 目の下やまぶたに多発する、肌色の小さな盛り上がりです。汗を出す管が増殖してできます 。

老人性血管腫: 「チェリースポット」とも呼ばれる、鮮やかな赤い点です。毛細血管が増殖してできたもので、イボではありませんが、しばしば心配の種になります 。

これらの特徴をまとめたのが以下の表です。ご自身の状態を把握する参考としてご活用ください。
表1: 顔にできる主な「イボ」の種類と特徴

   主な原因 見た目の特徴  できやすい場所 うつる?
 尋常性疣贅  ウイルス (HPV) 硬くザラザラした盛り上がり。黒い点々が見えることも。  顔、手足などどこにでも うつる
 扁平疣贅  ウイルス (HPV) 平らでなめらかな盛り上がり。肌色~薄茶色。多発しやすい。  顔、首、手の甲など うつる
 脂漏性角化症  加齢、紫外線 シミが盛り上がったようなザラザラした見た目。茶色~黒色。  顔、頭、体幹など日光が当たる場所 うつらない
 軟性線維腫  加齢、摩擦 小さく柔らかい皮膚からの突起。肌色~茶色。  首、まぶた、脇の下など擦れる場所 うつらない
 脂腺増殖症  加齢、皮脂腺の増殖 黄色っぽく、中央がへこんだブツブツ。  額、鼻、頬など皮脂の多い場所 うつらない

 

注意!イボと間違いやすい皮膚のできもの

顔のできものの中には、良性のイボと見た目が似ていても、全く異なる性質を持つものや、注意が必要なものが存在します。

ほくろとの違い

ほくろは、メラニンという色素を作る細胞(母斑細胞)が集まってできたものです 。イボ、特に色の濃い脂漏性角化症と見分けるのが難しいことがありますが、一般的にほくろの方が表面がなめらかで、色の濃淡が均一な傾向があります。

皮膚がんの可能性

見逃してはいけないサイン 顔にできるできもののほとんどは良性ですが、ごくまれに皮膚がんである可能性があります。特に以下の特徴が見られる場合は、悪性の可能性も否定できないため、絶対に放置せず、速やかに皮膚科を受診してください 。

形が左右非対称になった

境界がギザギザして、不明瞭になってきた

色がまだらで、濃淡が混ざっている

直径が6mm以上と大きい、またはなってきた

急に大きく

形や色が変化したり、出血しやすいかさぶたができるジクジクするといった状態が続く

これらのサインは、悪性黒色腫(メラノーマ)や基底細胞がん、有棘細胞がんといった皮膚がんの兆候である可能性があります。早期発見・早期治療が何よりも重要です。少しでも「おかしいな」と感じたら、迷わず専門医の診察を受けてください。

治療方法

顔のイボの治療は、その種類、大きさ、場所、そして患者さん自身の希望を考慮して、最適な方法が選択されます。ここでは、皮膚科で行われる代表的な治療法について解説します。

まずは皮膚科へ:自己判断のリスク

治療法を考える前に、最も重要なことを再度強調します。それは、「治療の前に、まずは正確な診断を受けること」です。
市販のイボ治療薬の多くは、角質を溶かす作用のある「サリチル酸」を含んでいます 。これらは硬くなったウイルス性のイボを対象としており、顔のデリケートな皮膚に使用すると、炎症や化学熱傷、色素沈着、さらには傷跡が残るリスクが非常に高いです 。また、脂漏性角化症や老人性血管腫など、原因の異なるできものには全く効果がありません 。
何よりも危険なのは、もしそのできものが悪性だった場合に、自己治療によって診断の機会を逃し、病状を進行させてしまうことです 。安全で確実な治療のために、必ず皮膚科医の診断を仰ぎましょう。

保険診療で行われることが多い治療

主にウイルス性のイボに対して、健康保険が適用される標準的な治療法です。

液体窒素凍結療法

仕組み: マイナス196℃の超低温の液体窒素を綿棒やスプレーでイボに当て、ウイルスに感染した細胞ごと凍結・破壊する方法です 。

対象: 尋常性疣贅や扁平疣贅など、ウイルス性のイボ治療の第一選択肢です 。

流れ: 治療中は数秒間、チクッとした鋭い痛みを伴います。治療後は、イボが壊死してかさぶたになり、1~2週間かけて自然に剥がれ落ちます。通常、イボが完全になくなるまで1~2週間おきに複数回の治療が必要です 。

注意点: 治療後に水ぶくれができたり、痛みが数日続いたりすることがあります。顔の治療で特に懸念されるのは、治療後に「炎症後色素沈着」というシミがほぼ確実にできてしまうことです。このシミは時間とともに薄くなりますが、数ヶ月以上かかることもあります 。

内服薬(ヨクイニン)

仕組み: ハトムギの種子から作られた漢方薬で、体の免疫力を高めることで、ウイルスを排除する力をサポートすると考えられています 。

対象: ウイルス性のイボ、特に多発する扁平疣贅やお子さんのイボによく用いられます。

流れ: 即効性はなく、効果を実感するまでには数ヶ月単位での継続的な服用が必要です 。液体窒素療法など他の治療と併用されることも多くあります。

外科的切除

仕組み: メスや医療用のハサミを使って、イボを物理的に切り取る方法です 。

対象: 比較的大きなイボや、悪性の可能性を否定するために病理検査が必要な場合に選択されます。

美容目的や難治性の場合に選択される治療(主に自費診療)

見た目をきれいに治したい場合や、保険診療で治りにくい場合に選択されることが多い治療法です。多くは健康保険が適用されない自費診療となります。

炭酸ガス(CO2)レーザー治療

仕組み: 水分に反応するレーザー光線を照射し、イボの組織を瞬時に蒸散させて(焼き飛ばして)除去する方法です 。

対象: 脂漏性角化症や軟性線維腫など、整容的な改善を目的とする非ウイルス性のイボに最適です。また、液体窒素で治りにくいウイルス性イボにも用いられます 。

流れ: 局所麻酔の注射をしてから行うため、施術中の痛みはありません。レーザーは周囲の組織へのダメージを最小限に抑えながら、ピンポイントでイボだけを除去できます。多くの場合、1回の治療で完了します 。出血もほとんどありません。

利点: 液体窒素に比べて、治療後の色素沈着や傷跡のリスクが少なく、よりきれいに治せる可能性が高いのが最大のメリットです 。

どちらの治療法が最適かは、イボの種類やご自身のライフスタイル、予算、そして「何を最も優先するか(コストか、仕上がりの美しさか、治療期間か)」によって変わります。
治療法は医師による診断後に、よく相談して決定しましょう。

顔のイボの予防方法

できてしまったイボを治療することも大切ですが、そもそもイボを作らない、増やさないための日々の心がけも重要です。予防法は、イボの原因に応じて異なります。

すべてのイボ予防に共通する基本ケア

原因がウイルスであれ加齢であれ、健康な皮膚の土台を整えることは、あらゆる肌トラブルの予防につながります。

肌のバリア機能を高める保湿

皮膚が乾燥すると、外部の刺激から肌を守る「バリア機能」が低下します 。バリア機能が弱った肌は、ウイルスが侵入するための微細な傷ができやすくなったり、摩擦などの刺激に敏感になったりします。化粧水や乳液などで毎日しっかりと保湿を行い、うるおいのある丈夫な肌を保ちましょう。

免疫力を維持する生活習慣

体の免疫力は、ウイルス性イボの発生を抑える上で直接的な役割を果たします。バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理などを心がけ、体の中から健康を維持することが、ウイルスの感染や増殖を防ぐことにつながります 。

ウイルス性イボを防ぐために

HPVの感染を防ぐためには、「ウイルスを侵入させない」「ウイルスを広げない」ことが鍵となります。

肌を傷つけない工夫

ウイルスは皮膚の小さな傷から侵入します。髭剃りの際は、清潔で切れ味の良いカミソリを使い、シェービング剤などで肌を保護しましょう。また、顔をゴシゴシこすったり、ニキビなどをむやみに引っ掻いたりするのも避けるべきです 。

衛生管理

家族間であっても、タオルやカミソリ、化粧道具などの共用は避けましょう 。手には様々なウイルスが付着している可能性があります。こまめに手を洗い、無意識に顔を触る癖がある人は意識して減らすことも有効です 。すでにイボがある場合は、それを触った手で他の場所を触らないように特に注意し、自己接種を防ぎましょう。

加齢によるイボを増やさないために

脂漏性角化症などの原因となる、長年のダメージ蓄積を少しでも緩やかにするための対策です。

最も重要な紫外線対策

加齢によるイボ、特に脂漏性角化症の最大の原因は紫外線です。予防において最も効果的なのは、徹底した紫外線対策です 。

季節や天候に関わらず、毎日日焼け止めを塗る習慣をつける。

外出時は帽子や日傘、サングラスを活用する。 これは将来のシミやしわ、皮膚がんの予防にもつながる、最も重要なスキンケアと言えます。

摩擦を避けるスキンケア

洗顔時に顔をゴシゴシこすったり、タオルで強く拭いたりするのはやめましょう。また、首にイボができやすい人は、襟の硬い服や肌に合わないネックレスなどが刺激になっていないか見直してみるのも良いでしょう 。

これらの予防策は、今日から始められることばかりです。毎日の少しの心がけが、未来の肌を守ることにつながります。

よくある質問

Q
イボは、他の人にうつりますか?

A
そのイボの原因によって全く異なります。
ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因の「ウイルス性イボ」(尋常性疣贅や扁平疣贅など)であれば、直接的または間接的な接触によって他の人にうつる可能性があります。一方で、加齢や紫外線が原因の「非ウイルス性イボ」(脂漏性角化症や軟性線維腫など)は、皮膚の老化現象の一種であり、他人にうつることは一切ありません 。どちらのタイプかを見分けるためにも、医師の診断が不可欠です。
 

Q
放っておけば自然に治りますか?

A
ケースバイケースです。ウイルス性のイボ、特に若い方の扁平疣贅などは、体の免疫システムがウイルスを認識し、攻撃することで自然に消えることがあります。しかし、それには数ヶ月から数年という長い時間がかかることが多く、その間に数が増えたり、他の人にうつしてしまったりするリスクがあります 。一方、脂漏性角化症や軟性線維腫といった加齢によるイボは、自然に消えることはなく、時間とともに少しずつ大きく、あるいは数が増える傾向があります 。
 

Q
市販の「イボコロリ」などを顔に使ってもいいですか?

A
絶対に使用しないでください。
これらの市販薬の多くは、硬い角質を溶かす「サリチル酸」という成分を高濃度で含んでいます 。これらは主に足の裏などの硬い皮膚にできたイボを想定して作られており、薄くデリケートな顔の皮膚に使うと、激しい炎症や化学熱傷を引き起こし、シミや傷跡が永久に残ってしまう危険性があります。また、そもそも対象外のできもの(例:老人性血管腫)には効果がなく、トラブルの原因になるだけです 。顔のできものには絶対に使用しないでください。
 

Q
がんの可能性はありますか?どのような場合に病院へ行くべきですか?

A
顔にできるイボ状のできものの大多数は、全く心配のない良性のものです。しかし、ごくまれに皮膚がんがイボと似た見た目を呈することがあるため、注意は必要です。特に、**「形が左右非対称」「境界がギザギザしている」「色が均一でなく、濃淡が混じっている」「急に大きくなった」「出血したり、かさぶたができたりする」**といった特徴が見られる場合は、すぐに皮膚科を受診してください 。少しでも不安や疑問があれば、専門家に診てもらうのが最も安全です。
 

Q
治療の痛みや、跡が残る可能性について教えてください。

A
治療法によって大きく異なります。
液体窒素療法:

治療中に数秒間、鋭い痛みを伴い、その後も数時間から数日ジンジンとした痛みが続くことがあります。顔の場合、治療後にシミ(炎症後色素沈着)が残る可能性が高いです 。

炭酸ガスレーザー治療

局所麻酔の注射をするため、施術中の痛みはありません。液体窒素に比べ、傷跡や色素沈着のリスクは低く、美容的な仕上がりが期待できます 。 それぞれの治療法のメリット・デメリット(痛み、費用、ダウンタイム、跡が残る可能性など)について、診察時に医師から十分な説明を受け、納得した上で治療を選択することが大切です。