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口囲皮膚炎

PERIORAL DERMATITIS
最終更新日:2026-06-12

「口の周りの赤みやぶつぶつが治らない…」それはニキビではなく口囲皮膚炎(こういひふえん)かもしれません。不適切なステロイド外用薬の使用や化粧品が原因になることも。本記事では、皮膚科専門医が口囲皮膚炎の症状、ニキビや酒さとの違い、正しい治療法とスキンケアによる予防策まで詳しく解説します。名古屋市南区で皮膚科をお探しの方、長引く肌荒れでお悩みの方はぜひご一読ください。

口囲皮膚炎とは
症例写真
口囲皮膚炎の症状
口囲皮膚炎の症状
口囲皮膚炎の治療
日常生活で気をつけるポイント

口囲皮膚炎とは

見た目と特徴:口のまわりにできる、ニキビに似た赤いブツブツ

口囲皮膚炎は、その名の通り、口の周りを中心に、鼻の下やあごにかけて赤みを帯びた小さなブツブツ(丘疹)や、時には膿(うみ)を持った湿疹(膿疱)ができる皮膚の病気です 。見た目がニキビや、顔が赤くなる「酒さ(しゅさ)」という別の皮膚疾患と似ているため、自己判断で間違ったケアをしてしまい、かえって症状を悪化させてしまうケースが少なくありません 。
この病気は単なる「肌荒れ」ではなく、皮膚の正常な機能が乱れて炎症が起きている状態です。そのため、ニキビや他の湿疹とは治療法が全く異なり、正しい診断が非常に重要になります。

誰にできやすい?:女性や子どもに多く見られる傾向

口囲皮膚炎は、主に子どもや妊娠可能な年齢の女性に発症しやすいという特徴があります 。特に中年女性に比較的多く見られる傾向があり、ホルモンバランスの変化が関与している可能性も考えられています 。

ニキビや酒さ(しゅさ)との違い:見分けるためのポイント

口囲皮膚炎、ニキビ、酒さは見た目が似ていますが、見分けるためのポイントがいくつかあります。最も大きな違いは、口囲皮膚炎にはニキビ特有の「面皰(めんぽう)」(コメドとも呼ばれる毛穴の詰まり。黒ニキビや白ニキビのこと)が見られない点です 。また、酒さは顔全体がほてったように赤くなることが多いのに対し、口囲皮膚炎は口の周りに症状が限定される傾向があります 。ただし、これらはあくまで一般的な傾向であり、正確な診断には皮膚科専門医による診察が不可欠です。

   口囲皮膚炎  ニキビ
 主な症状  赤い小さなブツブツ、時に膿を持つ  白ニキビ、黒ニキビ、赤いブツブツ、膿を持つ
 コメドの有無 なし  あり
 主な発生場所  口の周り、鼻の下、あご  Tゾーン、フェイスライン、頬など皮脂の多い場所
 感覚  ヒリヒリ感、かゆみ、灼熱感  炎症があると痛み
 主な原因  ステロイド外用薬の長期使用、化粧品など  皮脂の過剰分泌、毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖

人にうつる心配はありません

口囲皮膚炎の赤みやブツブツとした見た目から、「他の人にうつるのではないか」と心配される方がいらっしゃいますが、その心配は全くありません。この病気はウイルスや細菌による感染症ではないため、人から人へうつることはありません 。

口囲皮膚炎の症例写真

当院の患者様の治療経過です。

case1

口囲皮膚炎の治療経過1
治療内容

飲み薬、塗り薬などによる複合治療

費用

4,000~15,000円

副作用&リスク

1~7日程度の赤み、腫れ

皮下出血、色素沈着

case2

口囲皮膚炎の治療経過1
治療内容

飲み薬、塗り薬などによる複合治療

費用

4,000~15,000円

副作用&リスク

1~7日程度の赤み、腫れ

皮下出血、色素沈着

口囲皮膚炎の症状

口囲皮膚炎は、見た目の症状だけでなく、不快な感覚を伴うことが多くあります。

主な症状:赤み、小さなブツブツ

主な症状は、口の周りに広がる赤みと、赤みを帯びた小さなポツポツです 。症状が進行すると、膿がたまったようなできもの(膿疱)が現れたり、フケのように細かく皮がむけたりすることもあります 。

感覚的な症状:ヒリヒリとした刺激感やかゆみ

見た目の変化に加えて、ヒリヒリとした灼熱感や、むずむずとしたかゆみを伴うことが多く、日常生活で気になる不快な症状です 。これは、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に対して非常に敏感になっているために起こります 。

症状が現れる場所:口の周りから鼻の下、あごへ、そして時には目の周りまで

症状は、典型的には鼻の両脇から口元にかけて伸びる溝(鼻唇溝)あたりから始まり、徐々に口の周り全体やあごへと広がっていきます 。重症化すると、目の周りや額にまで症状が及ぶこともあります 。

特徴的なサイン:「唇のきわ」は症状が出にくい

口囲皮膚炎の非常に特徴的なサインとして、唇そのものや、唇と皮膚の境目の赤い部分には症状が出ない傾向があります 。そのため、まるで口の周りに症状のない白い輪があるかのように見えることがあります。

口囲皮膚炎の原因

口囲皮膚炎の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。皮膚のバリア機能が弱まった土台の上に、いくつかの「引き金」が重なることで、炎症が目に見える形で現れるのです。

最大の原因:ステロイド外用薬(塗り薬)の長期使用

最も多く、そして重要視されている原因が、ステロイド外用薬の不適切な長期使用です 。湿疹やアトピー性皮膚炎の治療で顔にステロイドを塗っていたことがきっかけで発症するケースが非常に多く見られます 。ステロイドには炎症を抑える強い効果がありますが、長期間顔に使用すると、皮膚が薄くなったり、血管が拡張したりする副作用が起こりやすくなります 。その結果、かえって炎症を起こしやすい敏感な肌状態になってしまうのです。比較的弱いランクのステロイドであっても、長期間使い続けることで原因となる可能性があります 。また、ステロイドではありませんが、アトピー性皮膚炎の治療薬であるタクロリムス軟膏(プロトピックなど)が原因となることも報告されています 。

日常生活に潜むきっかけ

良かれと思って毎日行っているスキンケアや生活習慣が、症状の引き金や悪化要因になっていることもあります。

スキンケア製品や化粧品による刺激

香料や保存料、アルコールなどが含まれた化粧水やリップクリーム、日焼け止めなどが、敏感になった肌を刺激することがあります 。また、油分の多い保湿剤やファンデーションが毛穴を塞ぎ、症状を悪化させることもあります 。

フッ素配合の歯磨き粉との関連性

虫歯予防に有効なフッ素ですが、一部の方ではフッ素配合の歯磨き粉が口囲皮膚炎のきっかけになる可能性が指摘されています 。

過剰な保湿

「保湿はすればするほど良い」という考え方が一般的ですが、口囲皮膚炎においては過剰な保湿が逆効果になることがあります 。ワセリンなどを厚く塗りすぎると毛穴が塞がれ、かえって炎症を悪化させる可能性があります 。

体の内側からの要因

皮膚は「内臓の鏡」とも言われるように、体の内側の状態も大きく影響します。

ホルモンバランスの乱れ

生理前や妊娠中に症状が出たり悪化したりすることから、女性ホルモンのバランスの変化が関わっていると考えられています 。

ストレスと免疫機能の低下

過度な心理的ストレスは、体の免疫機能を低下させ、皮膚の炎症を引き起こしやすくする要因となります 。

栄養不足

皮膚の健康維持に不可欠なビタミンB群や鉄分などが不足すると、皮膚のバリア機能が弱まり、トラブルが起きやすくなります 。

その他の悪化要因

上記以外にも、紫外線によるダメージ 、マスクによる摩擦や蒸れ 、無意識に唇を舐めてしまう癖(唾液に含まれる消化酵素が刺激になります) などが症状を悪化させることがあります。また、誰の肌にも存在するニキビダニ(毛包虫)が異常に増えることが関与している場合もあります 。

口囲皮膚炎の治療

治療の第一歩で最も重要なこと:原因となっているステロイド薬の中止

治療の基本であり、最も重要なことは、原因となっているステロイド外用薬の使用を中止することです 。しかし、急に自己判断でやめてしまうと、次に説明する「リバウンド現象」によって症状が急激に悪化することがあります。必ず皮膚科医の指導のもと、計画的に中止を進める必要があります 。

「リバウンド現象」を理解する:中止後の一時的な悪化とその乗り越え方

ステロイドを中止すると、これまで薬の力で抑え込まれていた炎症が一気に噴き出し、中止前よりも症状がひどくなる時期があります。これを「リバウンド現象(離脱症状)」と呼びます 。赤みや腫れ、ブツブツ、ほてり感が強くなり、数週間から数ヶ月続くこともありますが、これは皮膚が正常な状態に戻ろうとする過程で起こる自然な経過です 。
この時期は非常につらく、治療を諦めたくなるかもしれませんが、ここが治療の正念場です。通常、リバウンドはステロイド中止後2週間あたりをピークに、少しずつ落ち着いていきます 。これは治癒に向かっているサインであり、失敗ではありません。医師と相談しながら、この時期を乗り越えることが完治への鍵となります。

皮膚科で処方される薬

リバウンドのつらい時期を乗り越え、皮膚の回復を助けるために、ステロイドを含まない薬が処方されます。

内服薬

ブツブツや膿疱といった炎症を抑える目的で、テトラサイクリン系の抗生物質(ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)が処方されることが一般的です 。これらは抗菌作用だけでなく、抗炎症作用によってリバウンド期の炎症を和らげる効果が期待できます。

外用薬

塗り薬としては、抗菌作用や抗炎症作用のあるメトロニダゾール(ロゼックスゲル)などが用いられます 。

イベルメクチンクリームも有効です。

レーザー治療

ブイビームは、毛細血管拡張の減少・縮小することで、第1度酒さを改善することに有効です。

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日常生活で気をつけるポイント

薬による治療と並行して、日々の生活習慣を見直すことが、回復を早め、再発を防ぐために非常に重要です。口囲皮膚炎のスキンケアの基本は「やりすぎない」こと。肌本来の回復力を信じ、余計な刺激を徹底的に取り除く「引き算のケア」を心がけましょう。

スキンケアの哲学:「やりすぎない」が基本

洗顔

低刺激性の洗顔料をしっかりと泡立て、肌の上で泡を転がすように優しく洗います 。ゴシゴシこするのは厳禁です。熱いお湯は肌の乾燥を招くため、32〜34℃程度のぬるま湯ですすぎ、清潔なタオルで軽く押さえるように水分を拭き取りましょう 。

保湿

過剰な保湿は避け、必要最小限にとどめます 。化粧水がしみる場合は無理に使わず、低刺激性の保湿美容液やクリームを少量だけ、乾燥が気になる部分に塗る程度で十分です。時には何も塗らない「肌断食」が有効な場合もあります 。

避けるべき製品

アルコール、香料、着色料を含む化粧品や、肌の摩擦につながるスクラブ入りの洗顔料は避けましょう 。

紫外線対策:肌への刺激が少ない方法を選ぶ

紫外線は炎症を悪化させる要因となるため、日中の対策は必須です 。しかし、日焼け止め自体が刺激になることもあるため、紫外線吸収剤を含まない「ノンケミカル処方」や「敏感肌用」と書かれたものを選びましょう 。日傘やつばの広い帽子、サングラスなどを活用し、物理的に紫外線をカットする工夫も有効です 。

食生活とライフスタイルの見直し

食事

香辛料を多く使った辛い食べ物、アルコール、熱すぎる飲み物、カフェインなどは、血管を拡張させて顔の赤みを悪化させる可能性があるため、症状が強い時期は控えるのが賢明です 。一方で、皮膚のバリア機能を整える助けとなるビタミンB群(緑黄色野菜、レバーなど)や、良質なタンパク質(赤身肉、魚、大豆製品など)を積極的に摂るように心がけましょう 。

睡眠とストレス

睡眠不足はホルモンバランスの乱れや免疫力の低下につながり、肌の状態を悪化させます 。毎日十分な睡眠時間を確保しましょう。また、自分なりのリラックス方法を見つけ、ストレスを上手に発散することも大切です 。

メイクとの付き合い方:肌に負担をかけない工夫

症状が出ている間は、できるだけメイクを控えるのが理想です。どうしても必要な場合は、症状が出ている部分への厚塗りは避けましょう 。リキッドやクリームタイプのファンデーションより、石けんで落とせるパウダータイプのミネラルファンデーションなどが肌への負担は比較的少ないとされています 。

マスク着用時の注意点

マスクの長時間の着用は、摩擦や蒸れによって症状を悪化させる可能性があります。特に不織布の繊維が刺激になることがあるため、肌との間にガーゼを挟んだり、肌触りの良いシルクやコットン素材のインナーマスクを活用したりするなどの工夫がおすすめです 。

≪監修者プロフィール≫
監修医師うらた皮膚科 院長 浦田透
保有資格日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
経歴
平成23年 中京病院 研修医
平成25年 中京病院 皮膚科
平成26年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成27年 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科
平成28年 名古屋大学医学部附属病院 医員
平成30年 名古屋大学医学部附属病院 病院助教
平成31年 名古屋大学医学部附属病院 助教
令和3年4月 うらた皮膚科 副院長
令和3年11月 うらた皮膚科 院長