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リンヴォック

RINVOQ
最終更新日:2026-5-10

アトピー性皮膚炎の治療は、近年かつてないほどの劇的な進歩を遂げています。長年にわたり、アトピー性皮膚炎の標準治療はステロイド外用薬やプロトピック軟膏、そして保湿剤を中心とした「スキンケア」と「局所の抗炎症治療」が基本でした。しかし、これらの治療を真面目に続けていても、「どうしてもかゆみが治まらない」「全身の赤みやジュクジュクとした皮疹が繰り返される」という重症および中等症の患者様は決して少なくありません。
こうした従来の治療では十分な効果が得られなかった患者様にとって、次なる強力な選択肢として登場したのが「リンヴォック(一般名:ウパダシチニブ)」です。リンヴォックは、皮膚の表面からアプローチする塗り薬とは異なり、身体の内側からアトピー性皮膚炎の根本的な原因に直接働きかける新しい世代の「内服薬(飲み薬)」です。

アトピー性皮膚炎治療薬「リンヴォック(ウパダシチニブ)」とは
リンヴォックのアトピー性皮膚炎に対する効果とメリット
安全な治療のために知っておきたいリンヴォックの副作用と初期症状
リンヴォックを服用できない方・事前の検査が必要な方
リンヴォックの正しい飲み方と日常生活における注意点
アトピー治療におけるリンヴォックの費用と高額療養費制度の活用

※リンヴォック治療は当院では実施しておりません。
治療開始の際には、胸部レントゲン検査などが必須になります。
治療希望の患者様は、基幹病院にご紹介させていただいています。

アトピー性皮膚炎治療薬「リンヴォック(ウパダシチニブ)」とは

アトピー性皮膚炎の治療は、近年かつてないほどの劇的な進歩を遂げています。長年にわたり、アトピー性皮膚炎の標準治療はステロイド外用薬やプロトピック軟膏、そして保湿剤を中心とした「スキンケア」と「局所の抗炎症治療」が基本でした。しかし、これらの治療を真面目に続けていても、「どうしてもかゆみが治まらない」「全身の赤みやジュクジュクとした皮疹が繰り返される」という重症および中等症の患者様は決して少なくありません。
こうした従来の治療では十分な効果が得られなかった患者様にとって、次なる強力な選択肢として登場したのが「リンヴォック(一般名:ウパダシチニブ)」です。リンヴォックは、皮膚の表面からアプローチする塗り薬とは異なり、身体の内側からアトピー性皮膚炎の根本的な原因に直接働きかける新しい世代の「内服薬(飲み薬)」です。

リンヴォックの有効成分と画期的な作用機序(JAK阻害薬)

アトピー性皮膚炎の患者様の体内、特に皮膚の内部では、免疫システムの異常によって「サイトカイン」と呼ばれる炎症を引き起こすタンパク質が過剰に分泌されています。このサイトカインが、皮膚の細胞の表面にある「受容体(レセプター)」に結合すると、細胞の中にある「JAK(ヤヌスキナーゼ)」という酵素が活性化されます。このJAKがリレーのバトンのように次々とシグナルを伝達し、最終的に細胞の核に対して「もっと炎症を起こしなさい」「かゆみを感じなさい」という指令を出してしまいます。これが、アトピー性皮膚炎の治りにくい炎症と強いかゆみのメカニズムです。
リンヴォックの有効成分である「ウパダシチニブ」は、「JAK阻害薬」と呼ばれる新しいクラスのお薬です。その名の通り、細胞の中にあるJAKという酵素の働きをピンポイントでブロック(阻害)する役割を持っています。細胞へのシグナル伝達の根本であるJAKの働きを止めることで、炎症やかゆみの原因となる複数のサイトカインのシグナルをまとめて遮断することが可能となります。局所的な塗り薬だけでは抑えきれなかった、全身の複雑で強い炎症に対して、内側から一気に、そして強力にアプローチする画期的なメカニズムを備えているのが最大の特徴です。

従来のステロイド外用薬や生物学的製剤(注射薬)との違い

これまでのアトピー性皮膚炎の治療薬とリンヴォックには、決定的な違いがいくつか存在します。患者様がご自身のライフスタイルや症状に合わせて最適な治療を選択するためには、この違いを理解しておくことが非常に重要です。
まず、ステロイド外用薬は、皮膚の表面から直接炎症を抑える「局所療法」です。非常に有効で安全性の確立された治療法ですが、重症の患者様の場合、全身の広い範囲に毎日薬を塗り続ける手間が大きな負担となります。また、皮膚の奥深くで起きている強い炎症を完全にコントロールすることが難しいケースもありました。
次に、近年登場してアトピー治療に革命をもたらした「デュピクセント」などの生物学的製剤(注射薬)との違いです。デュピクセントは特定のサイトカイン(IL-4やIL-13など)の働きを、細胞の外側でピンポイントに阻害するお薬です。非常に優れた効果を持ちますが、あくまで「特定の原因物質」を狙い撃ちにするお薬であり、さらに「注射」であるため、痛みが苦手な方や通院の負担を感じる方がいらっしゃいます。
これに対して、JAK阻害薬であるリンヴォックは「内服薬(1日1回の飲み薬)」でありながら、細胞の内側で複数のサイトカインのシグナル伝達をまとめてブロックします。注射の痛みを伴わずに、全身の強い炎症を強力に抑え込める点は、注射に抵抗がある患者様にとって非常に大きなメリットとなります。また、リンヴォックは服用を開始してから体内で効果を発揮するまでのスピードが速く、飲み薬であるため、症状の波に合わせてお薬の量を減らしたり、一時的にお休みしたりする「きめ細やかな用量調整」がしやすいという特徴もあります。

リンヴォックのアトピー性皮膚炎に対する効果とメリット

リンヴォックによる治療を開始することで、患者様の日常生活を大きく阻害していたさまざまな症状の劇的な改善が期待されます。ここでは、具体的な効果と、臨床の現場で確認されている患者様へのメリットについて詳しく解説します。

「まだかゆい」という悩みに応える迅速な症状改善効果

多くのアトピー性皮膚炎の患者様が最も苦痛に感じ、日常生活の質(QOL)を著しく低下させている要因が、夜も眠れないほどの「強いかゆみ」です。従来の治療を一生懸命続けていても、「まだ、かゆい」という患者さんの声は医療現場で常に聞かれてきました。リンヴォックは、こうした患者様の切実な悩みに応えるために開発された背景があり、その強力な効果は「Level Up試験」をはじめとする数々の厳格な臨床試験からも明確に示されています。
リンヴォックの最大の特徴の一つは、効果が現れるまでのスピードが極めて速いことです。内服を開始して数日から1週間程度という短期間で、多くの方が「かゆみがスーッと引いていく」という感覚を実感し始めます。かゆみが治まることで、無意識に皮膚を掻きむしってしまう「掻破(そうは)行動」が物理的に減少します。アトピー性皮膚炎は「掻くことでさらに皮膚のバリア機能が壊れ、炎症が悪化する」という悪循環に陥りやすいため、この掻破行動が早期に止まることは、赤みやジュクジュクとした皮疹(ひしん)、ごわごわと硬くなった皮膚(苔癬化)を急速に改善に向かわせる最大の鍵となります。
夜間の強いかゆみが消失し、朝までぐっすりと眠れるようになることは、日中の疲労感を軽減し、仕事や学業への集中力を取り戻すことに直結します。皮膚が綺麗になるという外見上の改善だけでなく、精神的なストレスからの解放という点でも、患者様の人生に計り知れない恩恵をもたらします。

内服薬ならではの柔軟な用量調整と生活の質(QOL)向上

アトピー性皮膚炎の症状は、常に一定というわけではありません。季節の変わり目、乾燥する冬場や汗をかく夏場、仕事や人間関係の精神的ストレス、女性であればホルモンバランスの変化など、さまざまな要因によって症状には「波」があります。
リンヴォックは内服薬であるため、医師の慎重な診察と判断のもとで、患者様のその時々の状態に応じた柔軟な用量調整が可能です。例えば、症状が強く出ている悪化期には、1日30mgなどの十分な用量でしっかりと炎症を抑え込みます。その後、皮膚の状態が安定し、かゆみも皮疹もない綺麗な状態(寛解状態)が維持できるようになれば、1日15mgに用量を減らしたり、場合によっては休薬(お薬を一時的にお休みすること)を検討したりすることも可能です。
このように用量を減量できれば、後述する高額な治療費用の負担を抑えることにも直結するため、経済的なメリットも生まれます。常に一定の量を打ち続けなければならない一部の注射薬とは異なり、患者様一人ひとりのライフスタイルや症状の波に合わせたオーダーメイドの治療戦略が立てやすいのは、リンヴォックの大きな魅力です。
また、患者様がご自身の皮疹やかゆみの程度、睡眠不足や日常生活への影響を医師に正確に伝えるためのツールとして、「アトピー性皮膚炎コミュニケーションカード」という資材が製薬会社から提供されています。こうしたツールを活用することで、短い診察時間の中でも医師と患者様がしっかりと意思疎通を図り、二人三脚で最適な治療効果を追求できる環境が整えられています。

安全な治療のために知っておきたいリンヴォックの副作用と初期症状

リンヴォックは非常に優れた効果を持つ一方で、免疫の働きを強力に抑え込む(免疫抑制作用がある)ため、感染症をはじめとするいくつかの副作用のリスクが必ず伴います。このお薬による治療を安全に継続するためには、患者様ご自身が副作用の初期症状(サイン)を正しく理解し、身体に異変を感じたら自己判断せずに、すぐに主治医に相談することが不可欠です。

免疫低下に伴う感染症リスク(帯状疱疹、肺炎など)

リンヴォックの服用中に最も警戒すべき副作用の一つが「感染症」です。JAK阻害薬によって免疫細胞の働きが抑制されることで、健康な状態であれば自身の免疫力で跳ね返せるような病原体に感染しやすくなったり、過去に感染して体内に大人しく潜んでいたウイルスが再び暴れ出したりするリスクが高まります。
特に注意が必要な重篤な感染症として、肺炎、敗血症(細菌が血液中に入り込み全身に回ってしまう状態)、真菌感染症(カビの仲間による感染)などの日和見感染症(健康な人には感染しないような弱い病原体による感染症)が報告されています。これらの致命的になり得る感染症を防ぐため、十分な観察が求められます。

各部位に現れる副作用のサインと対処法

患者様が日常生活の中で気づくことができる副作用の初期症状を、身体の部位別にまとめました。以下の症状が現れた場合は、次回の診察日を待たずに、速やかに医療機関に連絡してください。
【リンヴォック1ヵ月(28日分処方)あたりの自己負担額の目安】

   気をつけるべき具体的な初期症状(サイン)  疑われる主な副作用・疾患
 全身の症状  発熱、長引く咳、寒気、だるさ、脱力感、食欲の低下、めまい、ふらつき  肺炎、敗血症、結核、その他重篤な感染症、貧血
 皮膚の症状  チクチク・ピリピリとした痛み、痛みを伴う赤い発疹・水ぶくれ、発熱を伴い顔を中心に広がる赤い発疹、ニキビ、皮膚や白目が黄色くなる  帯状疱疹、ヘルペスウイルス感染症、肝機能障害(黄疸)
手や足の症状 手足のしびれ感、足の痛み、急激な筋肉痛 神経障害、静脈血栓症(血の塊が血管に詰まること)など
胸部の症状 息苦しさ、胸の強い痛み、圧迫感 間質性肺炎、心血管系事象(心筋梗塞など)
腹部の症状 吐き気、嘔吐(おうと)、激しい腹痛 消化管穿孔(胃や腸に穴が開くこと)、重度の胃腸炎

特にアトピー性皮膚炎の患者様において発現頻度が高く、注意すべきなのが「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」です。多くの方は子どもの頃に水ぼうそうにかかりますが、水ぼうそうが治った後も、原因となる「水痘・帯状疱疹ウイルス」は体内の神経の根元に一生涯潜伏しています。リンヴォックによって免疫が低下したタイミングで、このウイルスが再び活性化することがあります。身体の左右どちらか片側に「チクチク・ピリピリとした神経の痛み」を感じた後、数日して赤い発疹や水ぶくれが帯状に出現した場合は、帯状疱疹の可能性が極めて高いです。直ちにリンヴォックの服用を一時中止し、抗ウイルス薬による治療を開始する必要があるため、すぐに医師の診察を受けてください。早期に治療を開始することが、後遺症としての長引く神経痛を防ぐ鍵となります。

リンヴォックを服用できない方・事前の検査が必要な方

リンヴォックは免疫システムに強力に作用するお薬であるため、すべての患者様が安全に使用できるわけではありません。過去の病歴や現在の健康状態、年齢などによっては、使用が「禁忌(絶対に服用してはいけない)」となる場合や、極めて慎重な判断と厳密な管理が求められる場合があります。

結核やB型肝炎の既往歴がある方のスクリーニング検査

リンヴォックの投与を開始する前に、患者様の安全を守るために必ず行われるのが事前の「スクリーニング検査」です。中でも最も重視され、厳格な確認が行われるのが「結核」と「B型肝炎ウイルス」の感染歴です。

ウイルスの再活性化リスクとその対策

結核に関する厳重な注意点: 過去に結核にかかったことがある方や、現在結核に感染していることが疑われる方に対しては、原則としてリンヴォックの投与前に、適切な「抗結核薬」を予防的に投与する必要があります。結核菌は、一度感染すると完全に体外に排出されることは少なく、肺の奥深くで免疫細胞に囲い込まれたまま冬眠状態(潜在性結核感染症)になることがよくあります。リンヴォックによって免疫の囲い込みが弱まると、この結核菌が再び増殖を始め、「活動性結核」を発症するリスクがあるためです。 さらに警戒すべき点として、事前のツベルクリン反応検査や血液検査(T-SPOTなど)の検査結果が「陰性(感染の証拠なし)」であった患者様においてすら、リンヴォック投与後に活動性結核が認められた事例が報告されています。そのため、投与開始後も長引く咳や微熱、寝汗、体重減少などの症状には常に警戒が必要です。結核等の感染症について専門的な診療経験を有する医師との綿密な連携が推奨されています。
B型肝炎ウイルスに関する厳重な注意点: B型肝炎ウイルスのキャリア(過去に感染したことがあり、体内にウイルスが潜伏している状態)の方についても、リンヴォックによるウイルスの「再活性化」が報告されています。ウイルスの再活性化は、劇症肝炎という命に関わる重篤な肝機能障害を引き起こす恐れがあります。そのため、事前の血液検査で「HBs抗原」や「HBV DNA」が陽性と判定された患者様は、原則として開発時の臨床試験の段階から除外されるほど厳格に管理されています。 もし過去の感染歴(HBs抗体やHBc抗体が陽性)がある方に投与を行う場合は、肝機能検査値や血液中のHBV DNA量を定期的にモニタリングし続けるなど、再活性化の初期徴候に細心の注意を払いながら治療を進める必要があります。

過去の治療歴や合併症に基づく慎重な適応判断

リンヴォックは、軽症のアトピー性皮膚炎に対して「とりあえず出しておく」ような最初から処方されるお薬ではありません。基本的には、従来の標準治療(適切な強さのステロイド外用薬やプロトピック軟膏など)を一定期間しっかりと行っても、十分な効果が得られない「既存治療で効果不十分な中等症から重症のアトピー性皮膚炎」の患者様のみが対象となります。
また、関節リウマチに対する適正使用ガイドライン等の知見を考慮すると、リンヴォックは十分な知識とアトピー性皮膚炎および免疫疾患の治療経験を持つ医師によってのみ処方されるべき薬剤とされています。安全性の観点から、以下のような患者様への投与は、治療によるメリットとリスクを天秤にかけ、極めて慎重な判断が必要となります。

  • 感染症のリスクが高い方: 現在、何らかの重篤な感染症の治療中の方。
  • 重度の腎機能障害や肝機能障害がある方: お薬の成分をうまく代謝・排泄できず、体内に蓄積してしまう恐れがあります。
  • 悪性腫瘍(がん)の既往歴がある方: 免疫を抑えることで、がん細胞の増殖を抑える力が弱まる懸念があるため、過去にがんの罹患歴がある方への投与は慎重に検討されます。
  • 妊婦または妊娠している可能性のある方、授乳中の方: 胎児や乳児への安全性が確立されていないため、原則として投与できません。
  • 高齢者の方: 一般的に生理機能が低下しており、副作用が発現しやすいため、慎重な経過観察が必要です。

リンヴォックの正しい飲み方と日常生活における注意点

リンヴォックの優れた効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えるためには、正しい用法・用量を守って服用することと、日常生活においていくつかの重要な注意点を守っていただく必要があります。

毎日決まった時間の服用と飲み忘れた際の正しい対応

リンヴォックは、1日1回、毎日決まった時間に水またはぬるま湯で服用する錠剤です。食事の影響を受けないように設計されているため、食前・食後どちらのタイミングでも服用可能ですが、「毎朝の朝食後」や「就寝前」など、ご自身の生活リズムに合わせて「飲み忘れのないタイミング」を習慣づけておくことをお勧めします。
万が一、お薬を飲み忘れてしまった場合は、気がついた時点で1回分を速やかに服用してください。ただし、翌日の服用時間がすでに近づいている場合は、忘れた分は諦めて飲まずに飛ばし、次回の決まった時間に通常の1回分だけを服用してください。絶対に2回分を一度にまとめて飲んではいけません。 血中濃度が急激に上がり、重篤な副作用を引き起こす危険性があります。
また、リンヴォックを服用中の患者様が、歯科治療や風邪、怪我などで他の病気で別の病院(他科)を受診する際には、必ず自分が「免疫を抑えるお薬(リンヴォック)を飲んでいること」を担当の医師や歯科医師に伝える必要があります。これをスムーズに行うため、製薬会社から「リンヴォック服用携帯カード」が提供されています。お財布や健康保険証、マイナンバーカードと一緒にこの携帯カードを常に持ち歩き、他の医療機関を受診する際や、薬局で新たなお薬を処方される際には、必ず提示するようにしてください。

飲み合わせに注意すべき食品(セントジョーンズワート等)と他科受診時の注意

お薬には、一緒に摂取することで効果が強くなりすぎたり、逆に弱くなってしまったりする「飲み合わせ(薬物相互作用)」が悪い食品や薬品が存在します。リンヴォックも例外ではありません。
特に患者様がご自身で注意すべきなのが、「セントジョーンズワート(和名:セイヨウオトギリソウ)」を含む健康食品やサプリメント、ハーブティーです。セントジョーンズワートは、気分を落ち着かせるリラックスハーブとして市販のサプリメントに広く使用されていますが、リンヴォックと一緒に摂取すると、肝臓にある薬を分解する酵素(CYP3A4など)の働きが異常に活性化されてしまいます。その結果、体内でリンヴォックの成分が分解されるスピードが速まり、血液中のリンヴォックの濃度が低下して、アトピー性皮膚炎に対する十分な治療効果が得られなくなる恐れがあります。リンヴォック服用中は、パッケージの成分表示をよく確認し、セントジョーンズワートを含有する食品の摂取は避けてください。
また、一般的な多くのお薬の注意事項と同様に、グレープフルーツやグレープフルーツジュースなども、先述の薬を分解する酵素の働きを阻害し、逆に薬の血中濃度を上げてしまう可能性があるため、摂取の可否については事前に主治医や薬剤師に確認することが最も安全です。 市販の風邪薬や鎮痛剤、漢方薬を購入する際も自己判断せず、必ず薬剤師に「アトピーの治療でリンヴォックを服用中である」ことを伝え、飲み合わせに問題がないかを確認する習慣をつけてください。

アトピー治療におけるリンヴォックの費用と高額療養費制度の活用

リンヴォックは最新のバイオテクノロジーを用いた画期的な新薬であるため、ステロイド外用薬や従来のアレルギー用内服薬と比較すると、治療費用が非常に高額になります。しかし、日本の優れた公的医療保険制度や「高額療養費制度」などの各種助成制度を適切に活用することで、患者様が実際に窓口で支払う毎月の自己負担額を大幅に軽減することが可能です。

15mg錠・30mg錠の薬価と1ヶ月あたりの自己負担額の目安

アトピー性皮膚炎におけるリンヴォックの通常用量は、成人の場合は1日1回15mgから治療を開始し、患者様の症状や効果の程度に応じて、医師の判断で1日1回30mgまで増量されることがあります(小児の場合は用量が異なります)。
薬価(国が定めたお薬自体の価格)に基づく、薬剤費のみの自己負担額の目安は以下の表の通りです。なお、この金額には診察料や各種血液検査料、処方箋料、薬局での調剤料などは含まれておらず、あくまで「お薬そのものの費用」の目安となります。
【リンヴォック1ヵ月(28日分処方)あたりの自己負担額の目安】

   保険適用前の全額(10割)  3割負担  2割負担 1割負担
 15mg服用の場合  薬剤費:121,240円  36,370円  24,250円 12,120円
 30mg服用の場合  薬剤費:185,633円  55,690円  37,130円 18,560円

※参考情報として、リンヴォック7.5mg錠(主に関節リウマチ等で使用される用量ですが、アトピー治療における減量時の参考となります)の薬剤費は28日分で61,880円であり、3割負担の場合は18,560円、2割負担で12,380円、1割負担で6,190円となります。
このように、一般的な現役世代(3割負担)の方が15mg錠を1ヶ月(28日間)内服した場合、お薬代だけで毎月約3万6千円の負担となります。30mgに増量した場合は毎月約5万5千円です。長期間にわたる継続的な治療が必要なアトピー性皮膚炎において、この費用負担は決して軽いものではなく、治療費がネックとなって最新の治療をためらってしまう患者様もいらっしゃいます。

高額療養費制度を利用した治療費の負担軽減シミュレーション

そこで、治療費の負担を和らげるために必ず知っておき、活用していただきたいのが「高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)」です。この制度は、1ヵ月間(同じ月の1日から月末まで)の医療費の自己負担額が、国が定めた一定の「自己負担限度額」を超えた場合、その超えた分の金額が後から払い戻される(あるいは事前に手続きをすることで窓口での支払いが限度額までで済む)という公的な制度です。

年齢および所得区分ごとの自己負担限度額

高額療養費制度における毎月の上限額(自己負担限度額)は、患者様の「年齢(70歳未満か、70歳以上か)」と「所得(年収)」によって細かく区分されています。70歳未満の方の場合、主な所得区分は以下のようになります。

  1. 約1,160万円以上(上位所得者): 限度額は約25万円〜
  2. 約770万円~約1,160万円: 限度額は約16万7千円〜
  3. 約370万円~約770万円(一般的な所得区分): 限度額は約8万円〜9万円程度
  4. 約370万円未満: 限度額は57,600円
  5. 住民税非課税世帯: 限度額は35,400円

たとえば、年収が約370万円~約770万円の一般的な所得区分(3割負担)の方の場合、1ヵ月の自己負担限度額は約8万円〜9万円程度に設定されています。もし月に1回通院し、リンヴォック30mgを28日分処方され(お薬代だけで約5万5千円)、さらに定期的な血液検査費用や診察料、同じ月に他の病気でかかった医療費の窓口負担をすべて合算して、この限度額を超えれば、超過分が払い戻されます。
さらに、この高額療養費制度には「多数回該当(たすうかいがいとう)」という強力な負担軽減ルールがあります。これは、過去12ヶ月以内に高額療養費の支給を3回以上受けた場合(上限額に達した月が3回あった場合)、4回目以降の限度額がさらに大きく引き下げられるというものです。例えば一般的な所得区分の方であれば、4回目以降は限度額が「44,400円」にまで下がります。アトピー性皮膚炎のように毎月継続して治療を受ける疾患においては、数ヶ月治療を続けるとこの多数回該当が適用され、長期的な金銭的負担が大幅に軽減されることになります。
また、高額療養費制度以外にも、医療費負担の軽減や福祉サービスが受けられる場合があります。

  • 医療費控除: 1年間(1月~12月)に支払った医療費の合計が10万円(または総所得金額の5%のいずれか低い方)を超えた場合、確定申告を行うことで所得税の一部が還付され、翌年の住民税も安くなる制度です。
  • 自治体独自の医療費助成: 「ひとり親家庭(母子家庭・父子家庭)」に対する医療費助成制度や、特定の要件を満たす方への自治体独自の助成があります。
  • その他: 障害者手帳を持っている場合や、生活保護の認定を受けている場合、介護保険制度を利用できる場合など、ご自身の状況に応じた助成が適用される可能性があります(※アトピー性皮膚炎単独で「悪性関節リウマチ」などの国の指定難病に認定されるわけではありませんが、他の指定難病を合併している場合などは該当する制度が変わります)。

製薬会社のウェブサイトなどには、ご自身の「年齢」「年収の目安」「処方量(15mgか30mgか)」「処方期間(2週間、4週間、8週間など)」を入力するだけで、ご自身のおおよその自己負担額の目安を簡単に計算できる「シミュレーション機能」が用意されています。 「高いから無理だ」と最初から諦めるのではなく、まずは主治医やクリニックのスタッフ、あるいは加入している健康保険組合に相談し、ご自身が利用可能な制度をしっかりと確認することが大切です。

≪監修者プロフィール≫
監修医師うらた皮膚科 院長 浦田透
保有資格日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
経歴
平成23年 中京病院 研修医
平成25年 中京病院 皮膚科
平成26年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成27年 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科
平成28年 名古屋大学医学部附属病院 医員
平成30年 名古屋大学医学部附属病院 病院助教
平成31年 名古屋大学医学部附属病院 助教
令和3年4月 うらた皮膚科 副院長
令和3年11月 うらた皮膚科 院長