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しもやけ

CHILBLAINS
最終更新日:2025-10-22

冬の訪れとともに、指先や足先、耳たぶがジンジンと痛がゆくなる…。それは、多くの人が一度は経験する「しもやけ」かもしれません。単なる「冷え」や「体質」として片付けられがちですが、しもやけはれっきとした皮膚の病気であり、体からの大切なサインです。放置すると症状が悪化し、つらいかゆみや痛みで日常生活に支障をきたすこともあります。
この記事では、皮膚科の専門家の視点から、しもやけの正体、なぜ起こるのかという根本的なメカニズム、ご家庭でできる効果的な治療法、そして毎年繰り返さないための予防策まで、あなたの疑問にすべてお答えします。つらい冬の悩みを正しく理解し、解消することで、寒い季節を快適に過ごすための知識を身につけましょう。

しもやけとは
しもやけの症状
しもやけの原因
しもやけの治療
日常生活での注意点
よくある質問

しもやけ(凍瘡)とは?凍傷やあかぎれとの違いも解説

まず、「しもやけ」がどのような状態なのかを正しく理解することが、適切なケアへの第一歩です。

しもやけの正体は「血行障害による炎症」

しもやけとは、寒さによる血行障害が原因で起こる皮膚の炎症です 。医学的には「凍瘡(とうそう)」と呼ばれます 。手足の指、耳たぶ、鼻先、頬など、冷たい外気にさらされやすい体の末端部分によく発症します 。
重要なのは、しもやけは皮膚が凍って組織が壊れる「凍傷」とは異なるということです 。しもやけは、寒さと暖かさを繰り返すことで血管の収縮・拡張の調節がうまくいかなくなり、血流が滞って(うっ血)、その周囲に炎症が起きてしまう状態なのです 。

「凍傷」との決定的な違い:組織の凍結と壊死

しもやけと凍傷は、どちらも寒さが原因で起こるため混同されがちですが、その深刻度は全く異なります。この違いを理解することは、ご自身の安全を守る上で非常に重要です。

しもやけ(凍瘡)

 氷点下ではない低い温度(気温4~5度前後が発症しやすい)に繰り返しさらされることで起こる「血流の調節異常」です 。主な症状は赤紫色の腫れ、かゆみ、痛みです 。

凍傷

氷点下の厳しい寒さによって皮膚やその下の組織が文字通り「凍結」し、破壊されてしまう状態です 。皮膚は感覚を失い、白や灰色っぽくなります。重症化すると筋肉や骨までダメージが及び、組織が壊死(えし)してしまうこともあるため、緊急の医療処置が必要な危険な状態です 。

しもやけは血行不良による「炎症反応」であり、凍傷は組織が凍る「物理的な破壊」である、という根本的なメカニズムの違いを覚えておきましょう。

「あかぎれ」との違い:乾燥による皮膚の亀裂

冬の手のトラブルとして「あかぎれ」もよく見られますが、これも原因が異なります。

あかぎれ

寒さや空気の乾燥によって皮膚の水分と皮脂が失われ、皮膚のバリア機能が低下することが主な原因です 。その結果、皮膚の表面が弾力を失い、特に関節部分などがパックリとひび割れてしまう状態を指します 。

しもやけ

皮膚の内部にある血管の問題が原因であり、腫れや変色が主な症状です 。

あかぎれのケアは「保湿」が中心になるのに対し、しもやけのケアは「血行促進」が中心となります。自分の症状がどちらなのかを正しく見極めることが、効果的なセルフケアにつながります。

しもやけの症状とは?子供と大人で違う2つのタイプを解説

しもやけの症状は、単に「かゆくて赤い」だけではありません。特徴的な症状や、年齢によって現れやすいタイプがあります。

すべてのタイプに共通する主な症状

しもやけになると、以下のような症状が現れます。

見た目の変化

手足の指や耳などが、赤紫色から暗い紫色に腫れあがります 。

感覚の変化

ジンジン、ピリピリとした痛みや、灼熱感を伴うことがあります 。

特徴的なかゆみ

最もつらい症状の一つが強いかゆみです。特に、寒い屋外から暖房の効いた室内に入ったときや、お風呂、布団の中などで体が温まると、かゆみが急激に強くなるのが大きな特徴です 。これは、血流が急に再開することで神経が刺激されるために起こります。

重症化した場合

症状が悪化すると、水ぶくれ(水疱)ができたり、それが破れて皮膚がただれる潰瘍(かいよう)になったりすることもあります 。こうなると細菌感染のリスクも高まるため注意が必要です 。

子供と大人で異なる2つのタイプ

しもやけの腫れ方には、主に2つのタイプがあり、それぞれ発症しやすい年齢層が異なります 。

子供に多い「樽柿型(たるがきがた)」(T型)

特徴

指全体や手足の甲などが、均一にパンパンに腫れあがります 。

見た目

その名の通り、渋柿を樽で熟成させた「樽柿」のように、赤紫色に全体が腫れるのが特徴です 。

好発年齢

主に学童期の子どもによく見られます 。

子どもの体は、体温調節や血流をコントロールする自律神経の機能がまだ発達途上です 。そのため、寒冷刺激に対して血管のコントロールがうまくできず、炎症反応が広範囲に及びやすいと考えられます。お子さんの指が全体的に大きく腫れて驚かれるかもしれませんが、これは子どもによく見られる典型的なパターンであり、必ずしも大人より重症というわけではありません。

大人に多い「多形滲出性紅斑型(たけいしんしゅつせいこうはんがた)」(M型)

特徴

樽柿型のように全体が腫れるのではなく、少し盛り上がった赤い発疹(紅斑や丘疹)が複数個、散らばって現れます 。

見た目

一つ一つの発疹は、小指の先からコイン程度の大きさです 。

好発年齢

主に成人に多く見られます 。

成熟した大人の血管系は、子どもに比べてより局所的で限定的な炎症反応を示すため、このような斑点状の症状が出やすいと考えられます。

しもやけの主な原因は血行不良?寒暖差・汗・体質との関係

「しもやけは寒いからなる」と単純に考えがちですが、その背景には、私たちの体の精巧なシステムが外部環境の変化に対応しきれなくなる「システムの不具合」とも言える複雑なメカニズムが存在します。

中核メカニズム:血管で起こる「交通渋滞」

しもやけの根本原因は、血行の調節機能の乱れにあります 。

  1. 寒さで血管が収縮: 私たちの体は、自律神経の働きによって体温を一定に保っています。寒い場所にいると、体の中心部の熱を逃がさないように、手足などの末端の血管をキュッと収縮させます。これは正常な防御反応です 。
  2. 温まるときの時間差: 問題が起こるのは、暖かい場所に戻ったときです。心臓から血液を送り出す「動脈」はすぐに拡張して血流が戻りますが、血液を心臓へ戻す「静脈」の拡張はそれに追いつけず、遅れてしまいます 。
  3. うっ血と炎症の発生: 動脈から勢いよく血液が流れ込むのに、静脈からの出口がまだ狭い。この結果、毛細血管内で血液の「交通渋滞(うっ血)」が起こります 。行き場を失った血液の圧力で血管から水分などが漏れ出し、周囲の組織で炎症が発生します。これが、しもやけの腫れやかゆみの正体です 。

発症の引き金となる環境要因

この血管の「交通渋滞」を引き起こしやすくするのが、特定の環境です。

激しい寒暖差

しもやけは、一日中気温が低い真冬よりも、初冬や春先など、一日の気温差が10度以上になる時期に発症しやすくなります 。気温が4~5度前後で、寒暖差が大きい環境が最もリスクが高いとされています 。このような環境では、血管の収縮と拡張が頻繁に繰り返され、調節機能にエラーが生じやすくなるのです。

汗や湿気

濡れた手袋や靴下は、しもやけの強力な誘因です 。皮膚についた水分が蒸発する際に、気化熱によって皮膚の温度が急激に奪われます 。この急激な冷えが血管の強い収縮を引き起こし、しもやけのサイクルを開始させてしまうのです 。

しもやけになりやすい個人の要因

同じ環境にいても、しもやけになる人とならない人がいます。これには、以下のような個人的な要因が関わっています。

靴などによる圧迫

先の細い靴やヒールの高い靴、サイズの合わない窮屈な靴は、足先の血管を物理的に圧迫し、血行を妨げます 。これは、ただでさえ起こりやすい血流の滞りをさらに悪化させる原因となります。

体質や遺伝

家族にしもやけになりやすい人がいる場合、自分もなりやすい傾向があります 。これは、末端の血流を調節する機能の特性が遺伝的に受け継がれるためと考えられています 。元々冷え性の人や、汗をかきやすい(多汗症)体質の人もリスクが高いとされています 。

このように、しもやけは単一の原因ではなく、**「環境要因(寒暖差・湿気)」という外的ストレスが、
「個人の要因(遺伝・服装)」**という内的システムの脆弱性と組み合わさったときに発生する、一種の「システム障害」と捉えることができます。この視点を持つことで、予防策を多角的に考えられるようになります。

しもやけの治し方:皮膚科での治療と市販薬(塗り薬・飲み薬)の選び方

しもやけになってしまった場合、適切な治療を行うことでつらい症状を早く和らげることができます。セルフケアで対応できる場合と、専門医の診察を受けるべき場合があります。

皮膚科での専門的な治療

セルフケアで改善しない場合や、症状が重い場合は、皮膚科を受診しましょう。特に、水ぶくれや潰瘍ができた場合、症状が1週間以上続く場合、暖かい季節になっても治らない場合は、早めに相談してください 。
皮膚科では、主に以下のような治療が行われます。

  • 塗り薬(外用薬):
  • ビタミンE製剤: 血行を促進する作用があり、しもやけ治療の基本となります 。
  • ヘパリン類似物質: 保湿作用に加え、血行を促進する効果があり、広く用いられます 。
  • ステロイド外用薬: 腫れやかゆみなどの炎症が強い場合に、炎症を速やかに抑える目的で処方されます 。
  • 飲み薬(内服薬):
  • ビタミンE製剤: 体の内側から血行を改善します。毎年しもやけを繰り返す人に処方されることが多いです 。
  • 漢方薬: 体を温め、血行を促進する漢方薬(例:当帰四逆加呉茱萸生姜湯、温経湯など)が体質に合わせて処方されることがあります 。

効果的な市販薬の選び方

ドラッグストアには多くのしもやけ用の薬が並んでいますが、どれを選べばよいか迷うこともあるでしょう。大切なのは、自分の「一番つらい症状」に合わせて有効成分を選ぶことです。以下の表を参考に、薬のパッケージ裏の成分表示を確認してみてください。

 主な症状  注目すべき有効成分  働き
 痛み・血行不良  ビタミンE (トコフェロール酢酸エステル)  末梢血管を広げ、血行を促進することで痛みを和らげ、回復を助けます。
 腫れ・強い炎症  ステロイド  炎症を強力に抑え、赤みや腫れを鎮めます。短期間の使用が原則です。
 かゆみ  抗ヒスタミン薬 (例: ジフェンヒドラミン)  かゆみの原因物質であるヒスタミンの働きをブロックし、つらいかゆみを抑えます。
 乾燥・保湿・血行促進  ヘパリン類似物質  高い保湿効果に加え、血行を促進する作用で皮膚の修復を助けます。

この表は、薬局で迷ったときの道しるべになります。例えば、「とにかく痛みがつらい」ならビタミンE配合のものを、「赤く腫れてかゆい」ならステロイドや抗ヒスタミン薬が配合されたものを選ぶ、というように、自分の症状と成分をマッチさせることが、効果的なセルフケアの鍵です。

しもやけの予防と対策:日常生活で気をつけたい5つのポイント

しもやけは治療も大切ですが、何よりも予防が重要です。日常生活の少しの工夫で、発症リスクを大きく減らすことができます。効果的な予防策は、単に寒さを避ける「防御」だけでなく、血行を良くしてしもやけになりにくい体を作る「攻め」の対策を組み合わせることです。

パート1:直接的な原因を避ける「防御」の対策

  1. 保温を徹底する: 体、特に末端を冷やさないことが基本中の基本です。外出時は手袋、厚手の靴下、耳当て、帽子、マフラーなどを活用し、体を冷気から守りましょう 。重ね着で空気の層を作ると保温効果が高まります。
  2. 体を濡らさず、乾いた状態を保つ: 汗や雨、雪で手袋や靴下が濡れたら、すぐに取り替えましょう 。水分は体を急激に冷やす最大の敵です。水仕事の後や入浴後も、指の間までしっかりと水分を拭き取ることが大切です 。
  3. 血管の圧迫を避ける: 血行を妨げるきつい靴や、先の細い靴は避け、足指が自由に動かせるゆとりのある靴を選びましょう 。

パート2:血行を良くして、なりにくい体を作る「攻め」の対策

  1. 血行を促進する食事を心がける:
    • ビタミンE: 「若返りのビタミン」とも呼ばれ、末梢血管を広げて血行を良くする働きがあります 。アーモンドなどのナッツ類、かぼちゃ、アボカド、うなぎ、植物油などに豊富に含まれています 。
    • ビタミンC: 毛細血管を丈夫に保つ働きがあり、ビタミンEと一緒に摂ることで相乗効果が期待できます 。緑黄色野菜や柑橘系の果物に多く含まれます。
  2. 正しい入浴とマッサージ:
    • 入浴: シャワーで済ませず、38~40度程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かり、体の芯から温まりましょう 。熱すぎるお湯は、かえって皮膚の乾燥を招き、かゆみを増強させることがあるので注意が必要です 。
    • マッサージ: 入浴中や、お風呂上がりに保湿クリームやビタミンE配合のクリームを塗る際に、指先から心臓に向かって優しくマッサージすると血行促進に効果的です 。ただし、水ぶくれができていたり、皮膚がただれていたり、炎症がひどい部分のマッサージは症状を悪化させる可能性があるので絶対に避けてください 
  3. 適度な運動を習慣にする: ウォーキングなどの軽い運動を日常的に行うことで、全身の血行が良くなり、心臓から末端まで血液を送り出す力がつきます 。これにより、血流を調節する体のシステム自体が強化され、しもやけになりにくい体質へと改善していくことが期待できます。

これらの「防御」と「攻め」の対策を組み合わせることで、しもやけのつらい季節をより快適に過ごすことができるでしょう。

よくある質問

Q
しもやけは大人でもなりますか?なりやすい人の特徴は?

A
はい、もちろんなります。
子どもに多いイメージがありますが、大人、特に女性で毎年悩まされている方は少なくありません 。 なりやすい方の特徴としては、
  • 家族にしもやけの人がいる(遺伝的素因)
  • いわゆる「冷え性」で、もともと手足の血行が悪い
  • 手足に汗をかきやすい
  • 水仕事が多い職業の方
  • 喫煙習慣がある、先の細い靴をよく履くなど、血行を妨げる生活習慣がある などが挙げられます。

 

Q
一度なると癖になりますか?毎年繰り返すのはなぜですか?

A
「癖になる」というよりは、「その人の体質や生活環境が、しもやけを起こしやすい条件を備えているため、冬になるたびに再発する 」と考えるのが正確です 。寒暖差に対して血管が過敏に反応しやすいという根本的な体質は、簡単には変わりません 。そのため、冬になり気温が下がって寒暖差が大きくなるという”引き金”が毎年やってくると、同じように症状が繰り返されるのです。皮膚が症状を記憶しているわけではありません。だからこそ、症状が出る前の秋ごろから予防的なケアを始めることが、毎年繰り返す方にとっては非常に重要になります 。
 

Q
しもやけは他の人にうつりますか?

A
いいえ、しもやけはうつりません
しもやけは、寒さという物理的な刺激に対する個人の体の反応(炎症)であり、ウイルスや細菌による感染症ではありません。そのため、患者に触れたり、同じ空間にいたりしても、他の人にうつることは一切ありません。
 

Q
 どの診療科を受診すればよいですか?

A
皮膚科 を受診してください 。
皮膚科は皮膚疾患の専門家であり、しもやけの正確な診断と治療はもちろんのこと、症状が似ている他の病気(前述の膠原病など)との鑑別も行ってもらえます。自己判断に迷う場合や、症状が長引く場合は、ためらわずに専門医に相談しましょう。
 
≪監修者プロフィール≫
監修医師うらた皮膚科 院長 浦田透
保有資格日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
経歴
平成23年 中京病院 研修医
平成25年 中京病院 皮膚科
平成26年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成27年 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科
平成28年 名古屋大学医学部附属病院 医員
平成30年 名古屋大学医学部附属病院 病院助教
平成31年 名古屋大学医学部附属病院 助教
令和3年4月 うらた皮膚科 副院長
令和3年11月 うらた皮膚科 院長