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酒さ様皮膚炎

ROSASEA-LIKE DERMATITIS
最終更新日:2026-04-30

「ニキビ治療をしているのに顔の赤みやブツブツが治らない」とお悩みではありませんか?それはステロイド外用薬の長期使用によって引き起こされる「酒さ様皮膚炎(ステロイド酒さ)」の可能性があります。本記事では、皮膚科専門医の監修のもと、酒さやニキビとの見分け方、レーザーや漢方を用いた最新の治療法、バリア機能を高める正しいスキンケア、避けるべき成分まで詳しく解説します。

酒さ様皮膚炎(ステロイド酒さ)とはどのような病気ですか?
酒さ様皮膚炎の症例写真
酒さ様皮膚炎でよく見られる主な症状とセルフチェック
酒さ様皮膚炎を引き起こす根本的な原因と悪化のメカニズム
似ている皮膚疾患との鑑別診断(専門医による見分け方)
皮膚科専門医による酒さ様皮膚炎の最新治療アプローチ
日常生活でのポイント

酒さ様皮膚炎(ステロイド酒さ)とはどのような病気ですか?

酒さ様皮膚炎(しゅさようひふえん、Rosasea-Like Dermatitis)とは、顔の皮膚が慢性的に赤くなり、ブツブツとした発疹や強い乾燥を引き起こす炎症性の皮膚疾患です。「酒さ(しゅさ)」という原因不明の赤ら顔の病気と症状が非常に似ていることから、この名前が付けられました。

ステロイド外用薬の長期使用によって引き起こされる特有の皮膚疾患

酒さ様皮膚炎の最も大きな特徴は、顔への「ステロイド外用薬」などの長期使用という明確な原因が存在することです。湿疹やアトピー性皮膚炎などの治療のために処方されたステロイド薬は、医師の指示通りに適切に使用すれば非常に優れた抗炎症作用を発揮します。しかし、自己判断で漫然と長期間塗り続けてしまうと、皮膚の構造に変化が生じ、血管が拡張したまま元に戻らなくなってしまう副作用が現れることがあります。このようにステロイドが原因で起こることから、「ステロイド酒さ」と呼ばれることもあります。

「酒さ」との違いと、ステロイド酒さと呼ばれる理由

本来の「酒さ」は、体質や加齢、環境要因などが複雑に絡み合って発症する原因不明の疾患です。一方で「酒さ様皮膚炎」は、ステロイド外用薬という強力な薬剤の副作用によって人工的に引き起こされた状態と言えます。症状の現れ方は似ていますが、発症のメカニズムが異なるため、治療へのアプローチも大きく変わってきます。まずはご自身の症状がどちらに当てはまるのかを正しく見極めることが、治療の第一歩となります。

酒さ様皮膚炎の症例写真

酒さ様皮膚炎の実際の治療経過

ステロイド外用薬を中止します。
ステロイド外用薬を中止後は一時的に症状が悪化することがあります。
症状にあわせた治療を行います。(酒さの治療に似ています)


受診時
ステロイド外用治療の中止。

ステロイド休薬1週間後
酒さの一過性の増悪。

ステロイド休薬1ヵ月後
病勢がピークアウト。

ステロイド休薬2ヵ月後
さらに改善。

ステロイド休薬3ヵ月後
落ち着いてきました。

治療内容:飲み薬、塗り薬などによる複合治療
費用:3,300~40,000円
リスク:赤み、腫れ、皮下出血、色素沈着

酒さ様皮膚炎でよく見られる主な症状とセルフチェック

酒さ様皮膚炎の症状は、単なる「赤み」だけにとどまらず、複数の不快な症状が同時に現れることが特徴です。ご自身の肌状態と以下の症状を照らし合わせてみてください。

持続する顔の強い赤み・ほてり・毛細血管の拡張

頬や鼻、額など、顔の中央部分を中心に強い赤みが現れます。皮膚のバリア機能が低下しているため、外部からのちょっとした刺激に対して過敏に反応し、毛細血管が過剰に拡張してしまいます。皮膚の表面から拡張した血管が糸状に透けて見える「毛細血管拡張」を伴うことも多く、触れると顔が熱くほてっているように感じる温熱感が持続するのも特徴です。

ニキビに似た赤いブツブツ(丘疹)と膿(膿疱)

赤みだけでなく、ニキビによく似た赤い盛り上がり(丘疹:きゅうしん)や、先端に白い膿を持ったブツブツ(膿疱:のうほう)が多発します。患者様の中にはこれを「大人ニキビ」と勘違いされる方が多くいらっしゃいます。しかし、ニキビ用の薬を塗っても治らない、あるいは逆に赤みが増して悪化してしまう場合は、酒さ様皮膚炎の症状である可能性が高いと考えられます。

深刻な乾燥、皮むけ、ピリピリとした強い刺激感

ステロイドの長期使用によって皮膚が極端に薄くなり(皮膚萎縮)、本来肌に備わっている水分保持能力が失われます。その結果、強い乾燥や皮むけ(落屑)が生じます。肌が極度に敏感な状態(敏感肌)になっているため、普段使っていた化粧水や洗顔料、さらには自分の汗や髪の毛が触れただけでも、ピリピリとした痛みや強いかゆみを感じることがあります。

酒さ様皮膚炎を引き起こす根本的な原因と悪化のメカニズム

酒さ様皮膚炎は、ただステロイド薬を数回使っただけで誰にでもすぐに起こるわけではありません。しかし、特定の条件が重なることで発症のリスクが跳ね上がります。

なぜ顔に症状が出やすいのか(顔面皮膚の高い吸収率)

人間の皮膚は、体の部位によって薬の吸収率が大きく異なります。顔の皮膚は、腕や足などの他の部位に比べて角質層が非常に薄く、毛穴も多いため、外用薬の吸収率が極めて高いという特徴があります。そのため、顔はステロイドの副作用が特に出やすい部位なのです。強いランクのステロイドを顔に使用したり、長期間ダラダラと使い続けたりすることが、発症の最大の引き金となります。

皮膚のバリア機能低下と血管拡張のメカニズム

ステロイド薬を長期使用すると、皮膚の細胞を作る働きが抑制され、皮膚が薄くペラペラになっていきます。これにより、肌の水分を守り、外部刺激を跳ね返す「バリア機能」が崩壊します。バリア機能が低下した肌は、少しの温度変化や摩擦、紫外線に対しても過剰な炎症を起こすようになり、その炎症を抑えるために血液が集まることで毛細血管が拡張し、慢性的な赤みとなって定着してしまうのです。

似ている皮膚疾患との鑑別診断(専門医による見分け方)

顔が赤くなったりブツブツができたりする病気はいくつかあり、一般の方が自己判断で見分けるのは非常に困難です。間違った自己ケアを続けると症状をこじらせてしまうため、以下の違いを理解し、皮膚科専門医による鑑別診断を受けることが重要です。

 疾患名 主な原因・きっかけ 特徴的な出やすい症状 専門医が見分ける際のヒント
酒さ様皮膚炎 顔へのステロイド外用薬などの長期使用 赤み、丘疹、膿疱、強い乾燥、皮むけ 顔面への外用薬(ステロイド等)の使用歴が重要
酒さ(赤ら顔) 明確な原因は不明(慢性的な炎症) 慢性的な赤み、ほてり、丘疹、膿疱 紫外線、寒暖差、アルコールなどの「悪化因子」で増悪しやすい
尋常性痤瘡(ニキビ) 毛穴のつまり、皮脂の過剰分泌、アクネ菌 コメド(白ニキビ)、面皰、丘疹、膿疱 面皰(毛穴の詰まり)が出やすく、皮脂が多い部位に出る

「酒さ(赤ら顔)」との違いと見分け方のヒント

「酒さ」も顔が赤くなりブツブツができる病気ですが、ステロイドの使用とは無関係に発症します。紫外線や温度変化、香辛料などの刺激によって悪化しやすい特徴があります。一方「酒さ様皮膚炎」は、症状自体は酒さとそっくりですが、「ステロイド等の外用薬を顔に長期間塗っていた」という明確な使用歴が存在することが最大の鑑別ポイントになります。

「尋常性痤瘡(大人ニキビ)」との違いと間違えやすいポイント

ニキビは毛穴に皮脂が詰まること(面皰:めんぽう、コメド)から始まり、そこにアクネ菌が繁殖して炎症を起こします。対して酒さ様皮膚炎のブツブツには、芯となるような毛穴の詰まりが見られないのが特徴です。「ニキビ用のスキンケアを使っているのに治らない」という場合、それはニキビではなく酒さの初期症状かもしれません。ニキビ用の殺菌成分やピーリング成分は、酒さ様皮膚炎の肌には強烈な刺激となり、真っ赤に腫れ上がる危険性があるため注意が必要です。

皮膚科専門医による酒さ様皮膚炎の最新治療アプローチ

酒さ様皮膚炎の治療は、自己流のスキンケアだけで完治させることは難しく、皮膚科専門医による根本的な治療計画が不可欠です。当クリニックでは、患者様の症状の段階に合わせて、以下のような治療を組み合わせてトータルケアをご提案します。

治療の第一歩となる外用薬の中止(脱ステロイド)とリバウンドへの対処

治療の絶対条件は、原因となっているステロイド外用薬の使用を中止することです。しかし、長期間使用していたステロイドを急にやめると、一時的に赤みやブツブツ、腫れ、ほてりが爆発的に悪化する「リバウンド現象」が起こることがほとんどです。この期間は患者様にとって精神的にも非常に辛い時期ですが、ここを乗り越えなければ根本的な解決には至りません。専門医の指導のもと、症状を和らげる他の薬剤を使いながら、安全かつ計画的にステロイドを離脱していくサポートを行います。

内服薬・非ステロイド外用薬を用いた炎症のコントロール

リバウンドによる激しい炎症やブツブツを抑えるために、抗生物質やアレルギーを抑える飲み薬(内服薬)を処方します。また、ステロイドを含まない酒さ専用の外用薬(アゼライン酸やメトロニダゾールなど)を用いることで、毛穴の炎症や赤みを効果的に鎮静化させます。これらは徐々に肌の環境を整え、健康な状態へと導く力があります。

レーザー治療(Vビーム等)による赤み・拡張血管への根本治療

飲み薬や塗り薬だけでは、一度拡張してしまった毛細血管を完全に元に戻すのが難しい場合があります。そのような「持続する赤み」に対しては、血管に直接作用する医療用レーザー「Vビーム」などの照射治療が有効です。Vビームは、血液中の赤い色素(ヘモグロビン)にのみ反応して熱を発し、異常に広がった毛細血管を安全に縮小させることで、透けて見える赤みを根本から改善する効果が期待できます。

漢方薬を用いた体質改善(身体の内側からのアプローチ)

一般的な皮膚科治療で改善が見られにくい場合や、体質から根本的に見直したい場合、漢方治療を使うこともあります。漢方薬の治療は優先順位としては低く、当院では他の標準治療とされるより有効な治療をまず行います。
漢方医学では、顔の赤みやほてりを皮膚だけの問題とは捉えず、体内にこもった余分な「熱」、血の巡りが悪くなる「瘀血(おけつ)」、水分の巡りが悪化する「水滞(すいたい)」といった身体全体のバランスの崩れと考えます。

  • 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう): 化膿しやすい皮膚疾患に広く使われる漢方薬で、炎症を抑えながら、ブツブツやジュクジュクとした滲出液の排出を助けます。
  • 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう): 体内にこもった熱を発散させながら、余分な水分の排出を促す作用があります。赤みが強く、顔にむくみ感がある場合に適しています。

漢方薬は、その人の体力や体質(証)に合わせて最適なものを選ぶ必要があるため、自己判断ではなく専門医にご相談ください。

日常生活で気をつけるポイント

薬物療法と並行して、日々のスキンケアと生活習慣の改善は、皮膚のバリア機能を回復させ、症状の悪化を防ぐために不可欠な治療の一部です。

1. スキンケアの徹底

皮膚が極度に敏感になっている状態であることを踏まえ、常に刺激を最小限に抑えることが重要です 。

製品選びと洗顔方法

低刺激性の製品選択:

 「敏感肌用」「低刺激」「ノンコメドジェニック」などと書かれた製品を参考に、肌に合うものを選びます 。新しい製品を試す際は、必ずパッチテスト(目立たない場所で試す)を行ってから使用しましょう。

摩擦の回避: 

洗顔時は、洗顔料を手のひらでしっかりと泡立て、顔をこすらず、泡で優しく押さえるように洗います。タオルで水気を拭き取る際も、肌に押し当てるようにし、絶対に摩擦を加えないように注意が必要です。

温度管理: 

熱いお湯は肌に必要な皮脂を奪い、乾燥を招くため、ぬるま湯(30~34℃程度)で丁寧にすすぎます。

適切な保湿ケア

皮膚の乾燥はバリア機能の低下に直結し、外部からの刺激に敏感になるため、適切な保湿が非常に重要です 。保湿は、乾燥を防ぐだけでなく、皮膚の防御機構を再構築するための積極的な治療行為です。

保湿成分: 

白色ワセリン、スクワラン、ヘパリン類似物質、尿素、ヒアルロン酸ナトリウム、グリセリン、リン脂質(天然型セラミドや類似セラミド)など、保湿効果が高い成分を含んだ製品を組み合わせるのが推奨されます 。

塗布方法: 

化粧水や保湿剤は、手のひらにたっぷり取り、肌を優しくなじませます 。コットンは肌に摩擦を与える可能性があるため、ひりつきがある場合は手を使用することが推奨されます 。乾燥を感じる場合は、化粧水だけでなく、乳液やクリームなど剤形の違うものを重ねて使用し、保湿効果を高めましょう 。

2. 徹底した紫外線対策

紫外線は皮膚の炎症を強め、酒さ様皮膚炎の症状を悪化させる主要な悪化因子です 。日頃からの紫外線対策は必須です。

物理的な遮光を優先:

 皮膚が敏感な状態では、日焼け止めに含まれる成分で刺激を感じることがあります 。そのため、帽子(つばの広いもの、7cm以上推奨)、日傘、長袖、マスクなどで肌を物理的に覆うことが、最も安全で効果的な対策となります 。

日焼け止めの選択と使用: 

日焼け止めを使用する場合は、「敏感肌用」「低刺激」「ノンケミカル(紫外線吸収剤不使用)」の製品を選びます 。通勤や買い物などの日常生活では、肌への負担を考慮し、SPF10~20、PA+~++程度の刺激の少ないものをこまめに塗る方が望ましいとされます 。効果を維持するためには、2~3時間おきに塗り直すことを心がけましょう 。

3. 生活習慣の見直し

皮膚の状態は、体内の環境、特にストレスやホルモンバランスの影響を強く受けます。

睡眠とストレス管理: 

ストレスや睡眠不足はホルモンバランスの乱れを引き起こし、皮膚の状態を悪化させるきっかけになるため、十分な睡眠とストレスを溜めない生活習慣を心がける必要があります 。

食事と栄養: 

規則正しい食生活を送り、ビタミン(特にビタミンB群やC)を十分に含んだバランスのよい食事を心がけることも大切です 。

刺激物の回避:

 アルコールや香辛料(スパイス)は血管を拡張させ、顔の赤みやほてり、かゆみを誘発する場合があるため、治療期間中は摂取を控えることが推奨されます 。

≪監修者プロフィール≫
監修医師うらた皮膚科 院長 浦田透
保有資格日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
経歴
平成23年 中京病院 研修医
平成25年 中京病院 皮膚科
平成26年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成27年 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科
平成28年 名古屋大学医学部附属病院 医員
平成30年 名古屋大学医学部附属病院 病院助教
平成31年 名古屋大学医学部附属病院 助教
令和3年4月 うらた皮膚科 副院長
令和3年11月 うらた皮膚科 院長