酒さ様皮膚炎とは
酒さ様皮膚炎とは
酒さ様皮膚炎の症状
主な症状は、顔の赤み、ニキビに似た赤いブツブツです。
特に鼻、頬、口の周りに症状が出やすく、見た目の悪化に加えて、ヒリヒリ感やかゆみを伴うこともあります。
赤みとほてり感
顔面の皮膚、特に口の周りや目の周りに、持続的な赤みが生じます 。ステロイドの長期作用により、皮膚の血管が拡張しやすくなっているため、熱を持ったようなほてり感を伴うことが多く、洗顔や温度変化によって症状が強くなる傾向があります。
赤いブツブツ
赤みのある部分に、小さな赤いブツブツや、先端に膿を持った膿疱が多発します 。
これらの症状は赤ニキビに似ていますが、白ニキビが混在しないことが鑑別点となります。
このニキビに似た症状のため、患者さんが自己判断でニキビ治療薬を試すことがありますが、それが刺激となり、かえって症状を悪化させることもあります。
かゆみ、ひりつき(刺激感)
ステロイドの作用により皮膚の表皮が薄くなり、皮膚が本来持っている外部刺激から防御する機能が低下しています。
そのため、洗顔料や化粧品、汗などのわずかな刺激に対しても過敏に反応し、かゆみやひりつき(刺激感)を感じやすくなります 。
酒さ様皮膚炎の原因
酒さ様皮膚炎の原因はステロイド外用薬の長期使用
血管への影響:
ステロイドは血管を収縮させる作用を持つため、使用中は赤みが目立たなくなります。
しかし、皮膚の血管がこの収縮作用に依存してしまい、薬を中止した時に異常に血管が拡張してしまい強い赤みやほてりの原因となります。
皮膚構造への影響:
ステロイドはコラーゲンなどの生成を抑制し、皮膚の真皮層や表皮層を薄く萎縮させる作用があります 。
これにより、皮膚の防御機構が弱まり、外部からの刺激やニキビダニなどの増殖をおこしやすくなります。
その他の悪化因子
紫外線(UV):
紫外線は皮膚の炎症を強くし、酒さ様皮膚炎の症状を悪化させる主要な要因の一つです 。
皮膚の乾燥:
バリア機能が低下している皮膚にとって、乾燥は外部刺激への感受性を高め、症状の悪化を招きます。適切な保湿は、治療中の皮膚保護に不可欠です 。
生活習慣の乱れ:
ストレスや睡眠不足は、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、皮膚の状態を悪化させるきっかけとなります 。
刺激物:
アルコール類や香辛料(唐辛子など)は、血管を拡張させる作用があり、顔面の赤みやほてり、かゆみを誘発・悪化させる場合があります 。
酒さ様皮膚炎の症例写真
酒さ様皮膚炎の実際の治療経過
ステロイド外用薬を中止します。
ステロイド外用薬を中止後は一時的に症状が悪化することがあります。
症状にあわせた治療を行います。(酒さの治療に似ています)

受診時
ステロイド外用治療の中止。

ステロイド休薬1週間後
酒さの一過性の増悪。

ステロイド休薬1ヵ月後
病勢がピークアウト。

ステロイド休薬2ヵ月後
さらに改善。

ステロイド休薬3ヵ月後
落ち着いてきました。
治療内容:飲み薬、塗り薬などによる複合治療
費用:3,300~40,000円
リスク:赤み、腫れ、皮下出血、色素沈着
酒さと酒さ様皮膚炎の違い
酒さ様皮膚炎 | 酒さ | ||
主な原因 | ステロイド外用薬の長期使用 | 原因不明(遺伝、免疫異常、環境要因など) | |
発症のきっかけ | ステロイドの使用開始または中止 | 中年以降に自然発症が多い |
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病変の好発部位 | 口囲、目の周囲、鼻唇溝(ステロイド塗布部位に一致) | 頬、鼻、顎の中心部 | |
治療方針 | ステロイドの中止が必須 内服薬、外用薬、レーザー治療 |
内服薬、外用薬、レーザー治療 |
酒さ様皮膚炎の治療
酒さ様皮膚炎の治療は、一般的な皮膚疾患の治療とは異なり、原因であるステロイドからの離脱が中心となります。
ステロイドの中止後の増悪に対して、酒さと同様の治療を行うことが多いでです。
治療薬は、欧米での承認薬の多くが、日本では承認されていません。
当院では、基本的に保険診療での治療を行っています。
他院での保険診療治療が無効で受診をされる患者様には、海外で実績のある治療を自費診療でご提案することもございます。
病型、症状に合わせて患者様毎に治療をご提案しています。
1. 治療の基本:原因薬剤の中止
2. 反跳現象(リバウンド)への対処
イベルメクチンクリーム | 海外では第2度酒さの標準治療となっています。 治療改善後の再発防止のための維持治療にも有効であることがわかっています。 メトロニダゾールよりも効果が強いことが報告されています。 日本では承認がなく、自費診療となります。 |
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メトロニダゾール | 海外では第2度酒さの標準治療となっています。 日本でも2022年に保険適応となりました。 治療改善後の再発防止のための維持治療にも有効であることがわかっています。 |
アゼライン酸 | 海外では酒さの治療として推奨されています。 第2度酒さの治療として、多数の報告があります。 再発防止の維持治療としても有効です。 |
抗菌薬 | ニキビに準じた抗生剤治療が効果的です。 自然免疫が亢進した状態を抑制する働きもあると考えられています。 |
レーザー治療 | 酒さの治療ではVビーム(ダイレーザー)、IPL(フォト治療)、ロングパルスヤグレーザーの有効性が多く報告されており、当院では3種類全てのレーザー機器を取り揃えて対応しています。 その中でもVビーム治療が最も有効と考えています。 毛細血管拡張の減少・縮小することで、第1度酒さを改善します。 |
日常生活で気をつけるポイント
薬物療法と並行して、日々のスキンケアと生活習慣の改善は、皮膚のバリア機能を回復させ、症状の悪化を防ぐために不可欠な治療の一部です。
1. スキンケアの徹底
皮膚が極度に敏感になっている状態であることを踏まえ、常に刺激を最小限に抑えることが重要です 。
製品選びと洗顔方法
低刺激性の製品選択: | 「敏感肌用」「低刺激」「ノンコメドジェニック」などと書かれた製品を参考に、肌に合うものを選びます 。新しい製品を試す際は、必ずパッチテスト(目立たない場所で試す)を行ってから使用しましょう。 |
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摩擦の回避: | 洗顔時は、洗顔料を手のひらでしっかりと泡立て、顔をこすらず、泡で優しく押さえるように洗います。タオルで水気を拭き取る際も、肌に押し当てるようにし、絶対に摩擦を加えないように注意が必要です。 |
温度管理: | 熱いお湯は肌に必要な皮脂を奪い、乾燥を招くため、ぬるま湯(30~34℃程度)で丁寧にすすぎます。 |
適切な保湿ケア
皮膚の乾燥はバリア機能の低下に直結し、外部からの刺激に敏感になるため、適切な保湿が非常に重要です 。保湿は、乾燥を防ぐだけでなく、皮膚の防御機構を再構築するための積極的な治療行為です。
保湿成分: | 白色ワセリン、スクワラン、ヘパリン類似物質、尿素、ヒアルロン酸ナトリウム、グリセリン、リン脂質(天然型セラミドや類似セラミド)など、保湿効果が高い成分を含んだ製品を組み合わせるのが推奨されます 。 |
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塗布方法: | 化粧水や保湿剤は、手のひらにたっぷり取り、肌を優しくなじませます 。コットンは肌に摩擦を与える可能性があるため、ひりつきがある場合は手を使用することが推奨されます 。乾燥を感じる場合は、化粧水だけでなく、乳液やクリームなど剤形の違うものを重ねて使用し、保湿効果を高めましょう 。 |
2. 徹底した紫外線対策
紫外線は皮膚の炎症を強め、酒さ様皮膚炎の症状を悪化させる主要な悪化因子です 。日頃からの紫外線対策は必須です。
物理的な遮光を優先: | 皮膚が敏感な状態では、日焼け止めに含まれる成分で刺激を感じることがあります 。そのため、帽子(つばの広いもの、7cm以上推奨)、日傘、長袖、マスクなどで肌を物理的に覆うことが、最も安全で効果的な対策となります 。 |
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日焼け止めの選択と使用: | 日焼け止めを使用する場合は、「敏感肌用」「低刺激」「ノンケミカル(紫外線吸収剤不使用)」の製品を選びます 。通勤や買い物などの日常生活では、肌への負担を考慮し、SPF10~20、PA+~++程度の刺激の少ないものをこまめに塗る方が望ましいとされます 。効果を維持するためには、2~3時間おきに塗り直すことを心がけましょう 。 |
3. 生活習慣の見直し
皮膚の状態は、体内の環境、特にストレスやホルモンバランスの影響を強く受けます。
睡眠とストレス管理: | ストレスや睡眠不足はホルモンバランスの乱れを引き起こし、皮膚の状態を悪化させるきっかけになるため、十分な睡眠とストレスを溜めない生活習慣を心がける必要があります 。 |
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食事と栄養: | 規則正しい食生活を送り、ビタミン(特にビタミンB群やC)を十分に含んだバランスのよい食事を心がけることも大切です 。 |
刺激物の回避: | アルコールや香辛料(スパイス)は血管を拡張させ、顔の赤みやほてり、かゆみを誘発する場合があるため、治療期間中は摂取を控えることが推奨されます 。 |