結節性紅斑(けっせつせいこうはん)とは?すねにできる痛い赤いしこりの正体
ある日突然、足のすねに青あざや虫刺されのような赤いしこりができ、歩くたびにズキズキとした痛みを感じて驚かれた経験はないでしょうか。このように、主に足のすね(下腿伸側)などの皮膚の下にある脂肪組織に炎症が起こることで発症する皮膚の病気を、医学用語で「結節性紅斑(けっせつせいこうはん)」と呼びます。
結節性紅斑は、皮膚の表面的なトラブルと思われがちですが、実際には「脂肪織炎(しぼうしきえん)」という皮下組織の炎症の一種に分類されます。触れると強い痛みを感じる赤いふくらみ(結節)が複数同時に発生するのが特徴であり、単なる皮膚疾患にとどまらず、体内の免疫系の反応の結果として引き起こされるサイン(症候)であると考えられています。そのため、背後に別の重大な病気や感染症が隠れている可能性も少なくなく、皮膚科での適切な診断と全身状態の確認が非常に重要となる病気です。
結節性紅斑の基本的な特徴と皮膚の奥で起こるメカニズム
結節性紅斑の最も顕著な特徴は、皮膚の深い部分に生じる「しこりを伴う赤いふくらみ(紅斑性結節)」です。人間の皮膚は、表面から順に「表皮」「真皮」、そして最も深い部分にある「皮下組織(皮下脂肪)」という3つの層から成り立っています。この皮下組織の層は、「脂肪小葉(しぼうしょうよう)」という脂肪細胞の集まりと、それらを区切る「中隔(ちゅうかく)」と呼ばれる結合組織によって構成されています。
結節性紅斑は、何らかの抗原(アレルギーの原因物質や病原体の成分など)に対する「遅延型アレルギー反応」が関与して発症すると考えられています。このアレルギー反応によって、皮下脂肪を区切る中隔の部分を中心に炎症を引き起こす細胞(リンパ球や好中球など)が集中的に集まり、「中隔脂肪組織炎を主体とする脂肪織炎」を引き起こすのです。この皮膚の奥深くでの激しい炎症が、皮膚の表面からは赤くて硬いしこりとして触知されることになります。
一つひとつのしこりの大きさは様々ですが、大きくても「くるみ」程度のサイズにとどまることが一般的です。皮膚の表面そのものが破壊されるわけではないため、水ぶくれ(水疱)ができたり、皮がめくれたり、あるいは深くえぐれて潰瘍(かいよう)になったりすることは基本的にありません。発生しやすい部位としては、圧倒的に足のすね(下腿)が多く見られますが、太ももや腕などにいくつか同時に多発することもあります。一方で、お腹や背中といった体の中心部分(体幹)にできることは比較的まれであるという特徴を持っています。
単なる虫刺されや打撲(青あざ)との違い
一般の方にとって、すねにできた赤く痛いしこりは「強くぶつけたことによる打撲(青あざ)」や「毒虫による激しい虫刺され」と誤解されることが非常に多いです。しかし、結節性紅斑には外傷や虫刺されとは明確に異なる特徴があります。
まず、痛みの性質が異なります。虫刺されであれば強いかゆみを伴うことが多いのに対し、結節性紅斑の主な症状はかゆみではなく「痛み(圧痛および自発痛)」です。また、打撲の場合は「家具にすねをぶつけた」といった明確な外傷のきっかけがあり、時間経過とともに青紫色から黄色へと変化して治癒していきます。対して結節性紅斑は、ぶつけた記憶が一切ないにもかかわらず突如として出現し、しかも両足のすねに複数同時に発生することが多い点が異なります。
さらに、結節性紅斑は皮膚の局所的な症状だけでなく、発熱や体のだるさなどの「全身症状」を伴うケースが多い点も、単なる外傷とは大きく異なるポイントです。心当たりのない痛みを伴う赤いしこりがすねに現れた場合は、単なる皮膚の荒れやケガだと自己判断して放置せず、速やかに医療機関を受診することが強く推奨されます。
結節性紅斑の主な初期症状と経過:発熱や痛みの特徴を解説
結節性紅斑の症状は、単に皮膚が赤く腫れるだけでなく、痛みの性質や全身に現れる兆候、そして治癒していく過程での色の変化などに特徴的なパターンが存在します。皮膚表面に見える変化と、患者様自身が感じる自覚症状の両面から、どのような経過をたどるのかを詳しく解説します。
皮膚に現れる赤いふくらみと痛みの強さ
発症の初期段階では、皮膚の奥深くに硬い芯を持つような鮮やかな赤いしこり(結節)が出現します。このしこりは、指で軽く押すだけでも強い痛み(圧痛)を生じるのが特徴です。炎症の程度が強い重症例では、触れなくても常にズキズキ、ジンジンと痛む自発痛が現れることもあります。
さらに患者様を悩ませるのが、姿勢による痛みの変化です。人間が立っている状態では、重力の影響によって血液や水分が下半身にたまりやすくなります(静脈圧の上昇)。結節性紅斑を発症している足のすねでは、ただでさえ炎症によって血管が拡張し組織が腫れているため、立位を続けることで炎症部位への内圧がさらに高まり、痛みが急激に強くなる傾向があります。そのため、立ち仕事が継続できなくなったり、歩行のたびに激痛が走って歩くのが困難になるほど、生活の質(QOL)に深刻な影響を及ぼすケースも報告されています。
これらのしこりが複数近くにできた場合、お互いがくっついて(融合して)大きな赤い斑点状のふくらみ(局面)を形成することもあります。
しこりが出る前に先行する全身症状(発熱や倦怠感)
結節性紅斑を見極める上で非常に重要なのが、「全身症状」の存在です。多くの場合、足のすねにしこりが出現する数日前から、あるいはしこりの出現とほぼ同時に、風邪に似た様々な全身の不調を伴う(随伴する)ことが確認されています。
| 症状の詳細と特徴 | ||
| 発熱・微熱 | 体内の免疫反応や炎症の強さを反映して、37度台の微熱から38度以上の高熱が出ることがあります。 | |
| 全身倦怠感 | エネルギーが完全に失われたような、強い体のだるさや疲労感を感じます。 | |
| 関節痛 | 足首や膝、手首などの関節に痛みや腫れが生じることがあります。歩行時の痛みをさらに悪化させます。 | |
| その他の症状 | 炎症が全身に及ぶことで、頭痛、咳、腹痛などが同時に現れることも報告されています。 | |
このような全身症状が先行する場合、患者様は「少し重い風邪をひいた」「関節を痛めてしまった」と勘違いし、まずは内科や整形外科を受診することがよくあります。そしてその後、少し遅れてすねに赤いしこりが出てきたことで、初めて皮膚科を受診し、結節性紅斑としての全貌が明らかになるという経過をたどる患者様も少なくありません 。皮膚の症状だけでなく、体全体の不調を見逃さないことが早期発見の鍵となります。
治るまでの期間と色素沈着(跡が残るか)の経過
結節性紅斑と診断された患者様が最も気にされることの一つが、「この痛いしこりはいつ治るのか」「足に跡が残ってしまうのではないか」という点です。結節性紅斑の経過は、典型的な急性期のものと、長引いてしまう慢性期のもので大きく異なります。
典型的な急性の結節性紅斑の場合、一つひとつのしこりの経過はおよそ「2〜4週間」でピークを越え、徐々に軽快に向かいます。治癒していく過程での「色の変化」も非常に特徴的です。発症初期の鮮やかな赤色から、時間の経過とともに暗赤色や赤紫色(紫がかった色)へと変化していき、まるで古い青あざが治っていく時のような色合いを見せます。新しい結節と古い結節が混在して見られることもあります。
2〜4週間でしこりの腫れや痛みが消退した後は、炎症が起きていた部位に「色素沈着」と呼ばれる茶色いシミのような痕(あと)がしばらくの間残ることがあります。しかし、重症化せず順調に回復した急性例であれば、この色素沈着も皮膚のターンオーバーとともに少しずつ薄れ、最終的には跡形もなく綺麗に治癒するケースがほとんどですので、過度な心配は不要です。
一方で、症状が長引いて「6ヶ月以上続く」ような慢性的な状態(慢性化)に陥った場合は注意が必要です。慢性化すると、黄褐色から暗赤色をした境界が不鮮明な硬い結節が次々と多発して融合し、皮下にびまん性の浸潤(腫れやしこりのような塊が広く存在する状態)や、瘢痕(はんこん:傷跡のような硬い組織)を残してしまうリスクが高まります。痛みが数ヶ月経っても引かない場合や、皮疹が慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返して出現し続ける場合は、後述する背景疾患(根本的な原因となっている別の病気)の精密検査が不可欠となります。
結節性紅斑の発症原因と関連する病気(感染症・お薬・自己免疫疾患)
結節性紅斑は、それ自体が単一の独立した病気というよりも、様々な原因に対して体内の免疫系が過剰に反応して生じる「症候群(アレルギー性の反応)」の一種と考えられています。詳しい検査を行っても直接的な原因が特定できない「特発性(原因不明)」のケースも多数存在しますが、背後に特定の病気や感染症、薬の影響が隠れている「続発性」のケースを見逃さないことが、医療において極めて重要とされています。
ここでは、結節性紅斑を引き起こす代表的な原因と関連する疾患について、カテゴリー別にさらに詳しく解説します。
| 原因のカテゴリー | 主な関連疾患・要因 | 概要・発症のメカニズム | |
| 感染症 | 溶連菌感染症、結核、ウイルス感染(B型肝炎など)、真菌 | 病原体そのものが皮膚にいるわけではなく、体内に侵入した病原体に対する免疫応答の余波が皮膚の脂肪組織に炎症を起こします。 | |
| 薬剤(お薬) | 経口避妊薬(ピル)、抗菌薬(サルファ剤など) | 特定の薬の成分に対する副作用やアレルギー反応として発症します。薬の服用中止により改善することが多いです。 | |
| 基礎疾患(全身の病気) | ベーチェット病、サルコイドーシス、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病) | 自己免疫の異常や全身の炎症を伴う難病の合併症(皮膚症状)として出現します。原疾患の病勢と連動することがあります。 | |
| その他 | 妊娠、悪性腫瘍(がん)、膠原病(SLE、関節リウマチなど) | ホルモンバランスの急激な変化や、自己抗体の産生、腫瘍に対する免疫の乱れが引き金となる場合があります。 | |
溶連菌やウイルスなどの「感染症」による免疫の過剰反応
結節性紅斑の誘因として日常の診療で非常に多く見受けられるのが「感染症」です。ここで理解しておくべき重要なポイントは、しこりの内部に細菌やウイルスが直接感染して膿んでいるわけではない、ということです。体内(例えば喉や肺など)に入り込んだ病原体に対して、体を守る免疫システムが戦った結果、その免疫反応(遅延型アレルギー)が皮膚の脂肪組織にも影響を及ぼし、離れた場所である足のすねに炎症を起こすというメカニズムが働いています。
最も代表的なのは「溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌)」による感染です。小児から大人まで広く見られる感染症で、喉の奥が赤く腫れて激しく痛む「扁桃炎」や、いわゆる「風邪」の症状を引き起こします。この溶連菌感染の症状が先行し、熱が引いた後や発熱と同時期(発症の約2週間後など)に、遅れてすねのしこりが出現するケースがよく見られます。
その他にも、以下のような多様な感染症が原因となり得ます。
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結核:過去には結節性紅斑の最も主要な原因とされており、現在でも長引く咳や微熱がある場合は、結核菌の関与を疑って検査が行われます。
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ウイルス感染症:B型肝炎ウイルスなどの感染が誘因となることがあります。特に小児が結節性紅斑を発症した場合、何らかのウイルス感染が背景にあるケースが多いとされています。
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真菌(カビの仲間)感染症:肺などに真菌が感染した場合に、それに対するアレルギー反応として結節性紅斑を伴うことが報告されています。
薬の副作用(ピルや抗生物質など)による発症リスク
病気の治療やコントロールのために服用している「お薬」が原因となって結節性紅斑が引き起こされることもあります。これを「薬剤性の結節性紅斑」と呼びます。
特に原因として報告されることが多いのは以下の薬剤です。
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経口避妊薬(ピル):女性ホルモンをコントロールするピルの服用が、免疫系や血管系の反応に影響を与え、しこりを誘発するリスク因子の一つとして知られています。結節性紅斑の患者様は男性よりも女性に圧倒的に多く見られますが、その一因として女性ホルモンやピルの影響が考えられています。
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抗菌薬(抗生物質):細菌感染を治療するための「サルファ剤」をはじめとする一部の抗生物質の副作用として、結節性紅斑ができることがあります。皮肉なことに、感染症を治すための薬が原因となって発症するケースもあるため、原因の特定には慎重な問診が必要です。
薬剤性が原因の場合、新しい薬の服用を開始してから数日〜数週間以内に症状が出現することが多く、原因となっている薬の特定と服用の中止によって、速やかに症状が改善に向かうのが特徴です。
ベーチェット病やクローン病などの「基礎疾患」が隠れているケース
全身の臓器に慢性的・再発性の炎症を引き起こす「自己免疫性疾患」や「炎症性疾患」の患者様において、その病気の症状(合併症)の一部として結節性紅斑が現れるケースが数多く存在します。皮膚のしこりが、これら全身の難病を発見する重要なサインとなることがあります。
1. ベーチェット病(Behcet's disease)。この病気においては、皮膚症状の一つとして結節性紅斑様の皮疹がほぼ確実に出現するとされており、診断基準の重要な手がかりとなります。また、Sweet病(スウィート病)などの好中球という白血球が異常に集まる皮膚症を伴う疾患でも、同様の症状が見られます。
2. サルコイドーシス。特に初期症状として、肺の入り口のリンパ節が腫れる(両側肺門リンパ節腫脹)とともに、急激な関節痛や結節性紅斑を伴うことがあり、これを「レフグレン症候群」と呼びます。
3. 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)。腸の症状(激しい腹痛や下痢、血便)が悪化する時期に一致して、皮膚症状も出現しやすいという特徴があります。
4. 膠原病や悪性腫瘍。
結節性紅斑の検査方法と他の皮膚疾患との鑑別診断
すねに痛みを伴うしこりができた場合、それが本当に結節性紅斑であるのか、あるいは他の似たような皮膚疾患(細菌が直接皮膚に感染する蜂窩織炎や、単なる虫刺され、打撲など)であるのかを正確に区別(鑑別診断)する必要があります。さらに重要なのは、「なぜ結節性紅斑が起こったのか」という背後に隠れた原因疾患を突き止めることです。そのために、医療機関では複数のアプローチを組み合わせた検査が行われます。
皮膚科で行われる視診と問診のポイント
診察室に入ると、まず医師による詳細な問診と皮膚の視診、触診が行われます。下腿に見られる痛みを伴う赤い結節は、医師にとって診断の方向性を決定づける極めて重要な情報を持った徴候(サイン)です。
問診では、以下のような点が詳しく確認されます。
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いつからしこりが出現したか、痛みの程度はどのくらいか。
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しこりが出るおよそ1〜2週間前に、喉の痛み(扁桃炎)や風邪の症状、微熱などがなかったかどうか。これは溶連菌などの感染症を鑑別するために非常に重要な質問です。
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現在服用している薬やサプリメントはないか(ピルや抗生物質など)。
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口内炎がよくできる、お腹の調子が悪い、目がかすむといった他の全身症状はないか。
これらの情報を総合することで、原因が特発性なのか、あるいは何らかの病気が隠れている続発性なのかのアタリをつけていきます。
確定診断や類似疾患の鑑別のための「皮膚生検」
外観の評価(見た目と触診)によってある程度の診断をつけることは可能ですが、診断をより確実なものに確定させたり、他の重篤な皮膚疾患と明確に区別したりするために「皮膚生検(ひふせいけん)」と呼ばれる検査が行われることがあります。
皮膚生検とは、局所麻酔を注射して痛みを感じなくさせた上で、赤いしこりのある皮膚の一部をメスや専用の円筒状の器具(トレパン)を用いて数ミリ程度切り取り、顕微鏡で病理組織学的に詳しく調べる検査です。結節性紅斑の場合、採取した組織を顕微鏡下で観察すると、皮下脂肪組織の中隔(脂肪細胞の集まりを区切る部分)を中心に、リンパ球などの炎症細胞が集まって炎症を起こしている様子(中隔を主体とした脂肪織炎)が明確に確認されます。この細胞レベルの確認を行うことで、見た目だけでは判断が難しい他の病気と正確に鑑別することができます。採取した部位は縫合を行い、1週間程度で抜糸となります。
隠れた原因疾患を見つけるための血液検査・画像検査
皮膚の診断がついた後は、結節性紅斑の背景に隠れた特定の病気(原因疾患)がないかを探るための全身検索(精査)へと進みます。特に、一般的な治療を行っても治りにくい場合や、慢性的に何度も繰り返して皮疹が出現する場合は、これらの全身の検査が不可欠となります。
| 検査の種類 | 検査の目的とわかること | |
| 血液検査 | 体内の炎症の強さを示すCRPの上昇、白血球の増加、赤沈(赤血球沈降速度)の亢進などを確認します。また、溶連菌抗体(ASOなど)が陽性を示せば、最近溶連菌に感染していた証拠となります。膠原病を疑う自己抗体の検査なども行われます。 | |
| 胸部X線(レントゲン) | 肺の状態を確認します。結核菌の感染の有無や、サルコイドーシスに特有の肺の入り口のリンパ節の腫れがないかなどを調べます。 | |
| 皮膚テスト・その他 | 結核用の皮膚テスト(ツベルクリン反応など)や血液検査(IGRA)を行い、結核感染を鑑別します。また、必要に応じて胃カメラや大腸カメラ、眼科受診を案内することもあります。 | |
このように、結節性紅斑の検査は「皮膚の表面だけを診て終わり」ではありません。皮膚を窓口として、全身の健康状態を評価する重要なプロセスなのです。
結節性紅斑の治療法と治るまでの期間・自宅での痛みの対処法
結節性紅斑の治療戦略は、「現在起きている皮膚の炎症と激しい痛みを和らげるための対症療法」と、「根本的な原因となっている病気を見つけ出して治す原因療法」の2つの柱から成り立っています。また、病院で処方される薬だけでなく、患者様自身がご自宅で行う日常的なケア(安静などの応急処置)が、症状を早く治すために極めて重要です。
病院での薬物治療(痛み止め・ステロイドの使用)
明らかな原因疾患が見つからず、症状も比較的軽度な「特発性」の急性結節性紅斑の場合、後述する十分な安静を保つことで、特別な強い薬を使わなくても2〜4週間ほどで自然に治癒(軽快)することも少なくありません。しかし、歩行も困難なほどの痛みがある場合や、炎症が強い場合には、生活の質を維持するために積極的な薬物治療が行われます。
1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による痛みのコントロール。
2. ステロイド薬の使用。ただし、結節性紅斑の原因が「感染症」である場合に不用意にステロイドを内服すると、体の免疫力が抑えられてしまい、かえって元の感染症を悪化させてしまう危険性があります。そのため、ステロイドの使用は医師による慎重な原因検索と判断のもとで行われます。
3. 基礎疾患の治療(原因療法)
なお、適切な治療を受けていったん治ったように見えても、結節性紅斑は再発することがあります。自己判断で通院や服薬をやめず、医師の指示通りに最後まで経過を診てもらうことが大切です。
自宅での安静と足の挙上(今日からできる応急処置)
医療機関での治療と並行して、ご自宅での過ごし方が治癒までの期間を大きく左右します。結節性紅斑と診断された、あるいはその疑いがある場合、以下の「応急処置と生活上の注意点」を必ず守ってください。これらを行うか行わないかで、痛みの引き方が劇的に変わります。
安静と活動の制限。結節性紅斑はすねに好発するため、立っている時間が長かったり、歩き回ったり激しい運動をしたりすると、足の血管への圧力が高まり、炎症や痛みが劇的に悪化してしまいます。スポーツはもちろんのこと、不要不急の外出や長時間の立ち仕事を避け、可能な限り横になって安静に過ごす時間を確保してください。
足の挙上(足を高くして寝る)。重力によって下半身に滞りがちな血液やリンパ液の戻りを助けることで、足のむくみ(浮腫)が軽減され、ズキズキとした痛みを物理的に和らげることができます。
冷却による痛みの緩和。ただし、冷やし過ぎによる凍傷には十分注意してください。
圧迫包帯やサポーターの活用。ただし、締め付けが強すぎると血流障害を招くため、使用の可否については医師にご相談ください。
緊急度をチェック!すぐに医療機関を受診すべき危険なサイン
ご自宅で様子を見るべきではなく、直ちに皮膚科を受診(あるいはオンライン相談を活用)すべき「緊急度の高いサイン」が存在します。以下の項目に1つでも当てはまる場合は、早急な医療機関での対応が必要です。
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38度以上の高熱や、激しい関節痛などの全身症状を伴っている場合。
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足のしこりの痛みが激しく、自力で歩行するのが困難な場合。
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以前にも同じようなしこりができ、治っては出るという症状を繰り返している場合。
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足のすねだけでなく、太もも、腕、体幹など他の部位にもしこりが広がってきた場合。
結節性紅斑の再発を防ぐ予防方法と日常生活の注意点
結節性紅斑は、原因不明の特発性のケースを除き、ある程度の誘因(引き金)が存在することが多いため、日常生活の中でその要因を避けることが再発予防につながります。
感染症予防と免疫力の維持
最も一般的な誘因である溶連菌感染症や上気道炎(風邪)を防ぐために、日頃からの基本的な感染対策が重要です。外出後や食事前のこまめな「手洗い・うがい」を徹底し、喉や気道の粘膜をウイルスや細菌から守りましょう。また、睡眠不足や過労、強い精神的ストレスは免疫力のバランスを崩し、感染症にかかりやすくなるだけでなく、体内の異常なアレルギー反応を誘発しやすくします。規則正しい生活リズムを心がけ、十分な休養をとって自己免疫力を正常に保つことが、間接的ですが強力な予防策となります。
原因となる薬剤の把握と基礎疾患のコントロール
過去に結節性紅斑を発症した際、原因が特定の「薬剤(ピルや抗生物質など)」であると判明している場合は、そのお薬の名前を必ず「お薬手帳」に記載してください。そして、他の医療機関を受診する際にも必ず医師や薬剤師に「この薬で結節性紅斑の副作用が出たことがある」と伝えるようにしましょう。これにより、原因薬の再投与による再発を確実に防ぐことができます。
また、ベーチェット病や潰瘍性大腸炎、クローン病などの基礎疾患をお持ちの患者様は、原疾患の病勢が悪化(再燃)するタイミングで結節性紅斑が併発しやすい傾向があります。主治医の指示通りに免疫抑制剤などの処方薬を忘れずに服用し、定期的な通院検査を受けて、基礎疾患そのものを安定した状態(寛解状態)に維持し続けることが、皮膚症状の最大の予防策となります。
よくある質問
結節性紅斑は人にうつりますか?
結節性紅斑は、体内の免疫系の過剰反応(アレルギーのような反応)によって起きる皮膚の下の炎症であり、しこりの内部に細菌やウイルスが直接繁殖しているわけではありません。したがって、しこりに触れたり、お風呂の湯船を共有したりしても、家族や友人に結節性紅斑が感染することはありません。
ただし、「結節性紅斑を引き起こす引き金となった感染症(溶連菌感染症や風邪のウイルスなど)」が背景にある場合、その原因となる細菌やウイルス自体は、咳やくしゃみなどの飛沫を介して他人にうつる可能性があります。そのため、患者様ご自身に発熱や喉の痛みが伴っている時期は、マスクの着用や手洗いなどの一般的な感染対策を行うことをお勧めします。
完治するまでにどれくらいの期間がかかりますか?
適切な安静を保ち、必要に応じて痛み止めなどの治療を行うことで、発症から約2週間〜1ヶ月でしこりのふくらみや痛みは消失していきます。その後、しこりがあった場所に茶色い色素沈着(シミのような跡)が残りますが、時間をかけて皮膚が生まれ変わるにつれて少しずつ薄れていき、最終的には跡形もなく綺麗に治癒するケースがほとんどです。
しかし、基礎疾患が隠れている場合や、無理をして歩き回って治療が遅れた場合は、6ヶ月以上症状が長引く「慢性化」を招くことがあり、その場合は瘢痕(硬い傷跡)を残してしまうリスクがあります。痛みが長引く場合は必ず医師に相談し、背景にある病気の詳しい検査を受けてください。
歩けないほど痛い場合はどうすればよいですか?
無理に歩かず、まずは横になって足を高くし、速やかに医療機関を受診できる体制を整えてください。
結節性紅斑の痛みは、重力によって足に血液が集中し、炎症を起こしている組織の圧力が高まることで劇的に増強します。歩けないほどの激痛がある場合は、無理をして立ち仕事や家事、歩行を続けると症状が急速に悪化してしまいます。
ご自宅ではすぐに横になり、足元にクッションなどを入れて「心臓より足を高くして安静」に保ってください。痛みが少し落ち着いた段階で、ご家族に車で送ってもらうか、タクシーなどを利用して、極力足を下げて歩く時間を減らした状態で速やかに皮膚科を受診してください。歩行が全く不可能な緊急時には、近年普及しているオンライン診療などを活用して、初期対応のアドバイスや鎮痛剤の処方を受けるのも有効な手段です。医療機関では、強力に炎症を抑えるお薬(ステロイドなど)の処方や、適切な圧迫固定など、痛みを迅速に取り除くための専門的なアプローチを行います。
監修医師: うらた皮膚科 院長 浦田透
保有資格: 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
経歴:
平成23年 中京病院 研修医
平成25年 中京病院 皮膚科
平成26年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成27年 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科
平成28年 名古屋大学医学部附属病院 医員
平成30年 名古屋大学医学部附属病院 病院助教
平成31年 名古屋大学医学部附属病院 助教
令和3年4月 うらた皮膚科 副院長
令和3年11月 うらた皮膚科 院長