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スギ花粉症の舌下免疫療法

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最終更新日:2025-05-21
毎年辛いスギ花粉症や花粉皮膚炎にお悩みの方へ。皮膚科専門医が根本的な体質改善を目指す「舌下免疫療法(シダキュア)」について徹底解説します。薬の仕組みや期待できる効果、治療期間、月々の費用目安、知っておきたい副作用から正しい使い方まで、よくある質問も交えてわかりやすくご紹介。アトピー性皮膚炎への影響や最新の開始時期の情報も網羅しています。今年こそ花粉症を根本から治したい方は必見です。

スギ花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)とは?皮膚科専門医が解説
花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)で期待できる効果と持続期間
治療前に知っておきたいシダキュアの副作用とリスク
花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)を使用・開始できない方の条件
花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)の正しい使い方と毎日の注意点
花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)にかかる費用の目安(保険適用)
舌下免疫療法(シダキュア)に関するよくある質問(FAQ)

スギ花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)とは?皮膚科専門医が解説

舌下免疫療法とは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少しずつ継続的に体内に取り込むことで、免疫の過剰な反応を和らげ、アレルギー体質そのものを根本から改善していくことを目的とした治療法です。その中で、スギ花粉症の治療に特化して用いられる専用の薬剤が「シダキュア(スギ花粉舌下錠)」です。

シダキュア(アレルゲン免疫療法)の基本的な仕組み

シダキュアは、鳥居薬品株式会社が製造・販売しているスギ花粉成分を含んだアレルゲン免疫療法薬です。1日1回、錠剤を舌の下に含んで溶かすことで投与を行います。従来の皮下注射による免疫療法(減感作療法)とは異なり、注射の痛みが一切なく、初回投与時以外はご自宅で手軽に服用できるのが最大のメリットです。
体内に入ったスギ花粉成分は、アレルギー反応を引き起こす悪玉の「IgE抗体」の働きを徐々に抑え込み、代わりにアレルギー反応を抑制する善玉の「IgG4抗体」を増加させるなど、全身の免疫バランスを根本的に調整する働きを持ちます。これにより、本格的な花粉飛散シーズンになっても、体がスギ花粉を「攻撃すべき異物」として認識しにくくなり、結果としてアレルギー症状が発症しにくくなるというメカニズムです。

なぜ皮膚科で花粉症治療?皮膚症状と肥満細胞の関係

「花粉症の治療は耳鼻咽喉科や内科で受けるものではないのか」と疑問に思われる方も多いかもしれませんが、皮膚科において花粉症治療を行うことには極めて重要な医学的根拠が存在します。
アレルギー反応を引き起こす中心的な役割を担う免疫細胞に「肥満細胞(マスト細胞)」があります。この肥満細胞は、鼻の粘膜や気道だけでなく、「皮膚」にも無数に存在しています。スギ花粉が体に付着したり体内に侵入したりすると、IgE抗体がこの肥満細胞に結合し、ヒスタミンやロイコトリエンといった炎症を引き起こす化学伝達物質が一斉に放出されます。これが鼻で起きれば鼻水や鼻づまりとなり、皮膚で起きれば「花粉皮膚炎」と呼ばれる強いかゆみや赤み、ヒリヒリ感を引き起こすのです。
特に、まぶた、頬、口の周り、首元などは皮膚が非常に薄く、バリア機能が低下しやすいため、花粉によるダメージをダイレクトに受けやすい部位として知られています。皮膚科では、舌下免疫療法による体の中からアプローチする根本治療と並行して、外用薬(塗り薬)による皮膚の炎症抑制や、保湿剤を用いたスキンケア指導(バリア機能の回復)を同時に行うことができます。内側と外側の両面からアレルギーを総合的にコントロールできる点が、皮膚科でシダキュア治療を受ける最大の強みと言えます。

従来の対症療法(飲み薬・点鼻薬)との決定的な違い

スギ花粉症の一般的な治療に用いられる抗ヒスタミン薬(飲み薬)やステロイド点鼻薬・点眼薬は、あくまで「今起きている症状を抑え込む」ための対症療法です。これらは即効性があり、一時的に症状を和らげる効果に優れていますが、薬効が切れれば再び症状が現れます。また、根本的なアレルギー体質を変えるわけではないため、翌年以降も花粉シーズンが来るたびに同じように薬を使用し続ける必要があります。
対症療法が「燃え広がった火を消火器で消す」治療であるならば、シダキュアによる舌下免疫療法は「火事そのものを起きにくくする、燃えにくい体質を作る」治療と言えます。長期間の根気は必要ですが、治療が成功すれば、将来的にアレルギー治療薬そのものを減量、あるいは全く使用しなくても快適に過ごせるようになることが最大の魅力です。

花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)で期待できる効果と持続期間

舌下免疫療法は数年単位での継続が必要な治療ですが、正しく継続することで、他の治療法では得られない非常に大きなメリットを享受できる可能性があります。

スギ花粉症の症状(鼻水・くしゃみ・目のかゆみ)の根本改善

シダキュアによる治療の最大の目的は、アレルギー症状を根本から治癒に導く、あるいは長期にわたって症状を極めて軽い状態に抑え込むことです。個人差はありますが、正しく治療を受けた患者様の約8割において、症状の明らかな改善や消失といった高い有効性が確認されています。
具体的には、スギ花粉の飛散シーズンになっても「くしゃみや鼻水の回数が劇的に減った」「目のかゆみが気にならなくなった」「夜、鼻づまりで息苦しくて起きることがなくなり、睡眠の質が大幅に向上した」といった効果が期待できます。仮に症状が完全にはゼロにならなかった場合でも、症状の重症度を大幅に和らげることができ、シーズン中に内服する抗ヒスタミン薬などのアレルギー治療薬の量を減らすことが期待できます。

花粉皮膚炎やアトピー性皮膚炎に対する良い影響と相乗効果

皮膚科領域において、シダキュアによるアレルゲン免疫療法がもたらすメリットは、鼻炎や結膜炎の改善にとどまりません。スギ花粉症やダニアレルギーは、それ自体が「花粉皮膚炎」や「アトピー性皮膚炎」を悪化させる重大な要因(増悪因子)となることが明らかになっています。
春先にスギ花粉が飛散すると、アトピー性皮膚炎の患者様は、皮膚のバリア機能が低下している部分から花粉のタンパク質が侵入しやすく、強烈なアレルギー性炎症を引き起こして湿疹やかゆみが急激に悪化する傾向があります。シダキュアによって体全体のスギ花粉に対する免疫寛容(アレルギー反応を起こさない状態)が獲得されれば、皮膚における肥満細胞からのヒスタミン放出も抑制されます。
その結果として、スギ花粉の飛散時期に毎年起きていたアトピー性皮膚炎の悪化を防ぐ効果や、肌のかゆみの改善効果を実感される患者様も少なくありません。もちろん、アトピー性皮膚炎の治療の基本は、保湿剤やステロイド外用薬、コレクチム軟膏などを用いた「プロアクティブ療法(症状が落ち着いてからも定期的に外用を続け、炎症の再燃を防ぐ治療)」です。シダキュアはこれらを代替するものではありませんが、悪化因子を根本から排除するという意味で、非常に有意義な補助的アプローチとなり得ます。

治療期間(3年〜5年)と効果が持続する期間の目安

舌下免疫療法の効果を確実なものにするためには、年単位での継続的な服用が不可欠です。医学的に推奨される治療期間は「3年から5年」とされています。毎日の服用を長期間続けることは決して容易ではありませんが、治療を継続した期間と、その後の効果の持続性には明確な相関関係が示唆されています。

  治療を継続した期間  効果持続の目安・将来的な可能性
 約3年間  治療終了後も、約7年〜10年間にわたって効果が持続する可能性が期待できます。
 約5年間  治療終了後、10年以上、あるいは生涯にわたって良好な状態が持続する可能性が高まるとされています。
治療開始から数ヶ月〜半年程度で最初のスギ花粉シーズンを迎えた際、すでに症状の軽減を実感される方もいらっしゃいますが、そこで「治った」と自己判断して服用をやめてしまうと、すぐに元の状態に戻ってしまいます。根本的な体質改善を定着させるためには、花粉が飛散していないシーズンオフの時期(夏〜冬)も含めて、1日1回の服用を数年間休まず続けることが何よりも重要です。

受験生や屋外スポーツをする方への大きなメリット

舌下免疫療法は、将来のライフイベントを見据えた治療としても強く推奨されています。例えば、中学生や高校生にとって、スギ花粉が最も猛威を振るう2月〜3月は「受験シーズン」の真っただ中です。この時期に強いくしゃみや鼻水に悩まされたり、抗ヒスタミン薬の副作用による「強い眠気」や「集中力の低下」が生じたりすることは、受験生にとって致命的なハンデになりかねません。
早い段階からシダキュアによる体質改善を始めておくことで、薬の副作用による眠気に悩まされることなく、万全の体調で受験や大切な試験に臨むことができます。また、屋外で長時間のスポーツをする方や、外回りのお仕事をされている方にとっても、花粉の飛散量に左右されない快適な日常を取り戻すことができるため、非常に適した治療法です。

治療前に知っておきたいシダキュアの副作用とリスク

シダキュアは安全性の高い薬剤ですが、アレルギーの原因物質(スギ花粉のエキス)をあえて体内に取り込む治療であるという性質上、特に治療の導入初期には局所的なアレルギー反応(副反応)が生じやすい特徴があります。患者様が過度に不安を抱かないよう、あらかじめ起こりうる副作用について正しく理解しておくことが大切です。

治療開始初期に起こりやすい口腔内・喉の局所的な副作用

シダキュアの服用を開始してからの最初の1ヶ月間(特に服用直後から数時間以内)は、薬液が直接触れる口の中や、その周辺の粘膜において軽度のアレルギー症状が現れやすい傾向があります。

 副作用が現れやすい部位  具体的な症状の例
 口の中・舌  口内炎、口の中のむくみ・かゆみ、舌の裏側の違和感や軽い刺激感、口内の腫れ
 喉・唇  喉のかゆみ、イガイガする不快感、唇の腫れ(口唇の浮腫)
 耳・お腹 耳の奥のかゆみ、まれに腹痛などの軽い腹部症状

これらの症状は、体がアレルゲンに慣れようとしている過程で起こる正常な免疫反応の一部とも言え、ある程度はやむを得ないものです。多くの場合、症状は数時間以内に自然に治まり、治療を数週間継続して体が薬に慣れていくにつれて、これらの局所副反応も徐々に消失していきます。

極めてまれに発生するアナフィラキシーショックの危険性

ごくまれではありますが、最も警戒しなければならない重大な副作用が「アナフィラキシー」です。アナフィラキシーとは、薬を服用した直後に急激に発生する全身性の重度のアレルギー反応であり、生命を脅かす危険性がある状態(アナフィラキシーショック)に進行することがあります。
アナフィラキシーは、通常、シダキュアを服用してから30分以内に発現することが多いとされています。皮膚の強いじんましんや赤み、息苦しさや喘鳴(ゼーゼーという呼吸音)、激しい腹痛や嘔吐、そして血圧低下に伴う意識混濁などが主な症状です。
これらの重大なリスクを徹底的に回避するため、シダキュアの「初回の服用」は必ず医療機関にて医師の厳重な監督下で行われます。院内で薬を服用した後、最低30分間は待合室で待機していただき、体調に急変がないかを医師が経過観察します。初回投与で安全が確認されて初めて、2日目以降の自宅での服用が許可されます。

副作用を軽減するための抗アレルギー薬の併用と対処法

治療初期の局所的な不快感が強い場合や、アレルギー反応への不安がある場合、医師の判断により抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)を事前に内服しながら、無理なく体を慣らしていく処置が行われることがよくあります。特に服用開始からの1ヶ月間は慎重な経過観察が必要ですが、抗アレルギー薬を適切に併用することで、かゆみや腫れといった不快な症状を最小限に抑えつつ、安全に治療を軌道に乗せることが可能です。ご自宅での服用中に、もし口の中の強い腫れや息苦しさを少しでも感じた場合は、決して自己判断で放置せず、直ちに処方を受けた医療機関に相談してください。

花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)を使用・開始できない方の条件

優れた治療効果を持つシダキュアですが、すべての患者様が安全に治療を受けられるわけではありません。患者様の年齢や基礎疾患、また季節的な要因によって、治療が開始できない、あるいは医師による極めて慎重な判断が求められるケースが存在します。

年齢制限や基礎疾患など、絶対に治療を開始できない方の特徴

以下の条件に当てはまる方は、副作用のリスクが非常に高くなる、あるいは安全性が医学的に確認されていないため、シダキュアの服用を開始することができません。

  1. 5歳未満の乳幼児 現在、シダキュアの適応は「5歳以上」と定められており、それ未満のお子様には処方できません。また、5歳以上であっても、薬を舌の下で1分間じっと保持することが難しいお子様の場合は、誤嚥のリスクなどを考慮して治療を見送る場合があります。
  2. 重症の気管支喘息を合併している方 喘息の症状がコントロールされておらず頻繁に発作が起きている方は、万が一アナフィラキシー等のアレルギー反応が引き起こされた際に、命に関わる大発作を誘発するリスクがあるため治療を行うことができません。
  3. 重篤な自己免疫疾患や免疫不全疾患のある方 免疫系に直接作用する治療であるため、これらの疾患を持つ方への安全性は確立されていません。
  4. 妊娠中の方、または近い将来に妊娠を希望されている方(新規開始の場合) 治療によって万が一アナフィラキシーが起きた場合、母体や胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中に「新たに」治療を開始することはできません。ただし、すでに治療を開始して維持期に入っており、副作用なく安定している方が治療中に妊娠した場合は、医師の判断のもと治療を継続することが可能なケースもあります。
  5. 口腔内に重度な病変がある方 重度の口内炎がある、あるいは抜歯などの歯科手術を直近で受けたばかりの方は、口の中の傷口から薬の成分が急激に血中に吸収され、副作用が強く出る恐れがあるため、口腔内の状態が完全に治癒するまで服用を延期します。

スギ花粉の飛散時期(1月〜5月)に治療を開始できない理由

舌下免疫療法を開始するにあたって、最も重要なルールのひとつが「治療を開始できる時期が厳密に決まっている」ということです。シダキュアの初回投与は、スギ花粉が飛散している真っ最中(概ね1月から5月中旬頃まで)に行うことはできません。
この飛散時期は、患者様の体内でスギ花粉に対するアレルギー反応が最も過敏になっており、鼻の粘膜や皮膚に強い炎症が起きています。この極度に過敏な状態のときに、さらにスギ花粉のエキスであるシダキュアを体内に投与すると、アナフィラキシーショックを含む重篤な副作用を引き起こすリスクが飛躍的に高まってしまいます。
そのため、安全に治療を開始できるのは、スギ花粉の飛散が完全に終了し、患者様の免疫状態が落ち着いている「5月下旬から12月下旬頃まで(シーズンオフ)」の期間に限られます。治療をご希望の方は、この期間内に初回受診と予約を済ませる必要があります。

【2026年最新】初期薬(シダキュア2000JAU)の出荷調整と供給制限

これから舌下免疫療法を始めたいとお考えの患者様が、必ず知っておかなければならないのが「薬剤の供給制限」に関する状況です。シダキュアによる治療を開始する際、安全性の観点から、最初の1週間は成分量が少ない「シダキュア2,000JAU」という初期導入用の薬剤からスタートし、2週目以降に維持量である「シダキュア5,000JAU」へ切り替えていく手順が定められています。
しかし、治療を希望する患者様が全国的に急増したことに伴い、製造元である鳥居薬品からの「シダキュア2,000JAU」の出荷調整(限定出荷)が続いています。2024年に開始された出荷制限は2025年以降も継続する見込みとなっており、2026年現在においても依然として初期薬の流通が十分ではない状況が続いています。
そのため、多くのクリニックでは、新規の治療開始をご希望の患者様に対して、事前の適応検査を行った上で「入荷待ち(予約待ち)」の対応を取らざるを得ないケースが発生しています。例年、治療開始時期である5月中旬〜下旬頃から予約受付を開始し、在庫が確保できた患者様から順番に6月以降に初回投与をご案内する形式が一般的です。治療開始を強く希望される方は、スギ花粉の飛散が終わる5月頃に、お早めに医療機関を受診して適応検査と予約手続きを済ませておくことが推奨されます。なお、すでに治療を開始しており、維持量(5,000JAU)を服用中の方の薬剤供給には全く影響はありませんのでご安心ください。

花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)の正しい使い方と毎日の注意点

シダキュアの効果を最大限に引き出し、かつ安全に治療を進めるためには、患者様ご自身による「毎日の正しい服用方法の遵守」が不可欠です。ご自宅での管理が治療の成功を左右します。

自宅での毎日の正しい服用手順と舌下での保持(1分間)

初回投与を医療機関で安全に終えた後、2日目からはご自宅で毎日決まった時間に服用していただきます。服用の基本的な手順は以下の通りです。

  1. 薬を取り出す シダキュアは非常に湿気に弱いため、服用する直前にブリスター包装(アルミのシート)から錠剤を取り出します。濡れた手で触るとすぐに溶けてしまうため、必ず乾いた手で取り扱ってください。
  2. 舌の下に置く 錠剤を舌の下(舌下)のくぼみの部分に静かに置きます。
  3. そのまま1分間保持する 錠剤は唾液ですぐに崩けて溶けますが、すぐには飲み込まず、溶けた唾液ごと舌の下に「1分間」じっと保持します。舌の下は粘膜が薄く血管が豊富に集まっているため、この1分間の間に薬剤の有効成分が効率よく体内の免疫細胞へと吸収されていきます。
  4. ゆっくりと飲み込む 1分経過後、残った唾液をゆっくりと飲み込みます。

このプロセスを、花粉が飛散していない時期も含めて「1日1回、毎日」継続します。

服用前後(5分間・2時間)の飲食や入浴・運動の厳しい制限

シダキュアを安全に粘膜から吸収させ、予期せぬ副作用を防ぐために、服用前後の日常生活においていくつか厳守すべきルールがあります。

  • 服用後5分間の制限(飲食・うがいの禁止) 薬を飲み込んだ後の最初の5分間は、うがい、飲食(水やお茶などの水分補給を含む)を一切行わないでください。直後にうがいや飲食をしてしまうと、粘膜から吸収される前に成分が胃に洗い流されてしまい、免疫細胞への十分な効果が得られなくなってしまいます。
  • 服用前後2時間の制限(激しい運動・入浴・飲酒の禁止) 服用する前後(およそ2時間程度)は、激しい運動、熱いお風呂への入浴、アルコールの摂取を避ける必要があります。これらを行うと、全身の血行が急激に良くなり、舌下から吸収されたアレルゲン成分が急速に全身を巡ることで、強いアレルギー反応やアナフィラキシーを誘発するリスクが高まるためです。

特に小児や中高生が治療を受ける場合、学校から帰宅してすぐに外で激しいスポーツをするような生活習慣がある方は、服用タイミングに注意が必要です。朝起きてすぐの朝食前、あるいは夜寝る前のリラックスしている時間帯など、安静を保てる時間帯を服用タイミングとして習慣づけることが推奨されます。

飲み忘れを防ぐための工夫と、忘れてしまった際の正しい対応

何年にもわたって毎日同じ時間に薬を飲むことは、思いのほか大変な作業です。飲み忘れを防ぐために、「歯磨きの前に飲む」「朝起きてすぐ飲む」など、毎日のルーティンに組み込むことをお勧めします。スマートフォンのアラーム機能や、服薬管理アプリを活用するのも非常に有効です。
万が一、その日の服用を忘れてしまった場合は、その日のうちに気がつけば速やかに1回分を服用してください。しかし、翌日になってから飲み忘れに気付いた場合は、前日の分はスキップし、その日の分として通常通り1回分のみを服用してください。飲み忘れたからといって、2回分を一度にまとめて服用することは、副作用のリスクを高めるため絶対に避けてください。

花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)にかかる費用の目安(保険適用)

舌下免疫療法は、3年から5年という長期にわたる治療であるため、トータルの費用負担が気になるところです。シダキュアの治療は健康保険が適用されるため、比較的継続しやすい費用感となっています。以下は、一般的な3割負担の患者様における費用の目安です(※医療機関によって再診料や処方箋料などの細かな点数は異なります)。

治療開始時の初期費用(アレルギー血液検査代を含む)

治療を開始するにあたっては、「スギ花粉に対するアレルギーがあること」を血液検査などで医学的に証明する必要があります。他院で過去(一般的に2〜5年以内)に採血したデータをお持ちであれば、それを使用できる場合もありますが、データがない場合は初回受診時にアレルギー検査を実施します。
アレルギー検査には、主に以下の方法が採用されます。

  1. イムノキャップ(ImmunoCAP)法: スギ花粉を含む主要な8項目のアレルゲンを、指先からのごく微量の採血で調べる検査です。約20分で結果が判明し、小さなお子様でも痛みの負担が少ないのが特徴です。
  2. ドロップスクリーン(Drop Screen): 同じく指先の血液(わずか1滴、4μL)を使用し、注射器を使わずに41種類ものアレルゲンを網羅的に調べることができる最新の検査機器です。約30分で結果が出ます。
  3. 静脈採血(一般的な血液検査): 腕の静脈から注射器で採血を行う一般的な手法で、より詳細なアレルギー傾向を把握する際に用いられます。

検査費用を含む初月の費用は、3割負担の場合でおよそ約5,000円〜6,000円程度となります(診察料+検査代+薬局での薬代の合算)。

2ヶ月目以降にかかる1ヶ月あたり・年間を通じた継続費用

治療開始から2週目以降、成分量の多い維持量(シダキュア5,000JAU)に移行してからは、月に1回のペースでクリニックを受診し、処方箋を受け取って薬局で薬を購入するサイクルとなります。

 費用項目  費用の目安(3割負担の場合)
 クリニックでの再診料・処方料など  約600円〜1,500円程度(月1回)
 調剤薬局での薬代(シダキュア28日分)  約1,800円〜1,900円程度
 1ヶ月あたりのトータル費用  約2,300円〜3,000円前後

これらを合計すると、維持期における年間を通じた費用としては約30,000円前後 が目安となります。決して安価ではありませんが、シーズン中に複数の高額な抗アレルギー薬や点鼻薬・目薬を大量に購入する費用や、通院の手間、そして何より「花粉症の辛い症状から解放される」という生活の質の向上を考慮すれば、非常に価値のある投資と言えるでしょう。

小児医療費助成制度を活用したお子様の治療費用について

舌下免疫療法は5歳のお子様から治療が可能です。高校生まで(自治体によっては中学生まで)のお子様で、各自治体が発行する「子ども医療費助成制度(医療証)」をお持ちの場合は、保険適用の範囲内であればこれらの費用が無料、あるいは少額の一部負担金(1回数百円程度)のみで治療を受けることが可能です。
お子様が幼いうちにアレルギー体質を根本から改善しておくことは、将来の受験やスポーツ活動において計り知れないメリットをもたらします。医療費助成が適用される期間内に親子で一緒に治療を開始されるご家族も非常に多くいらっしゃいます。

よくある質問

Q
ダニアレルギーの舌下免疫療法(ミティキュア)との併用は可能ですか?

A
可能です。
スギ花粉症と同時に、ハウスダストやダニに対するアレルギー(通年性アレルギー性鼻炎)を併発している患者様は非常に多くいらっしゃいます。ダニアレルギーに対する舌下免疫療法の薬剤としては「ミティキュア」や「アシテア」というお薬があり、これらと「シダキュア」を同時に併用して治療を進めることは医学的に認められています。なお、ミティキュアの薬代は3割負担で約2,300円程度(薬局での支払い)となります。ダニによるアレルギー性鼻炎や、ダニを原因とするアトピー性皮膚炎のかゆみ改善にも効果が期待できます。
ただし、安全上の理由から、2つの薬を全く同じ日から同時にスタートすることは推奨されていません。万が一アナフィラキシーなどの副作用が出た際に、どちらの薬が原因かを特定しやすくするため、まずは一方の治療(たとえばシダキュア)を開始し、体が十分に慣れて状態が安定した数ヶ月後(一般的には約3ヶ月後)に、もう一方の治療を追加で開始するという「時期をずらす方法」が推奨されます。また、毎日の服用時も、2つの錠剤を同時に口に含むのではなく、朝と夕方に分けるか、一方を服用してから最低でも5分以上の間隔を空けてもう一方を服用するなどの指導が行われます。
 

Q
シダキュア治療中も、他の花粉症の薬(抗ヒスタミン薬や外用薬)は併用できますか?

A
併用可能です。
舌下免疫療法は根本的な体質改善を目指す治療ですが、効果が十分に現れるまでには数ヶ月から数年の時間がかかります。したがって、治療を開始して間もない1〜2年目のスギ花粉飛散シーズンにおいては、まだ十分な免疫寛容が獲得されておらず、くしゃみや目のかゆみといったアレルギー症状が出てしまうことがよくあります。
そのような場合は決して我慢せず、従来の対症療法である抗ヒスタミン薬の内服、ステロイド点鼻薬、点眼薬を併用して症状をしっかり抑えることが推奨されます。花粉皮膚炎による顔や首のかゆみ・肌荒れが出ている場合は、皮膚科にてステロイド外用薬や保湿剤、非ステロイド性抗炎症薬(プロトピック軟膏など)を処方し、しっかりと皮膚の炎症をコントロールします。対症療法の薬を併用したからといって、シダキュアの体質改善効果が薄れることはありません。治療を継続していく年数に比例して、併用する薬の量や強さを徐々に減らしていくことが最終的な目標となります。
 

Q
重症でシダキュアが効かない場合、ゾレア(注射治療)などの代替治療はありますか?

A
舌下免疫療法は非常に有効な治療法ですが、重症の患者様の中には、数年継続しても期待したほどの効果が得られない方(全体の2〜3割程度)がいらっしゃいます。その原因として、スギ花粉だけでなくヒノキ花粉やダニなど複数種類のアレルゲンが複雑に絡み合っているケースや、患者様自身のベースとなるアレルギー体質が極めて強いケースなどが挙げられます。
また、前述の通り、重症喘息をお持ちの方や、1月〜5月の花粉飛散期にどうしても即効性のある治療を始めたい方は、シダキュアを使用することができません。
そのような「既存の治療で効果が不十分な最重症のスギ花粉症」の患者様に対する強力な代替選択肢として、近年皮膚科やアレルギー科で取り入れられているのが、生物学的製剤「ゾレア(一般名:オマリズマブ)」による注射治療 です。 ゾレアは、アレルギー反応の根源である体内の「IgE抗体」そのものに直接結合し、その働きを強力にブロックする最先端の注射薬です。これにより、花粉が体内に侵入しても肥満細胞からのヒスタミン放出が起こらなくなり、劇的な症状改善が期待できます。ゾレアは、特発性慢性蕁麻疹(治りにくい慢性のじんましん)の治療薬としても皮膚科で広く使用されており、強力なアレルギー抑制効果を持ちます。
シダキュアが適応とならない場合や、シーズン中の辛い症状を今すぐどうにかしたいという場合には、こうした高度な治療法を含めて、アレルギーを内と外から総合的に診察できる皮膚科専門医にご相談いただくことを強くお勧めいたします。スギ花粉症は決して「我慢する病気」ではありません。ご自身のライフスタイルや症状に合った最適な治療法を見つけ、快適な春の日常を取り戻しましょう。
≪監修者プロフィール≫
監修医師うらた皮膚科 院長 浦田透
保有資格日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
経歴
平成23年 中京病院 研修医
平成25年 中京病院 皮膚科
平成26年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成27年 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科
平成28年 名古屋大学医学部附属病院 医員
平成30年 名古屋大学医学部附属病院 病院助教
平成31年 名古屋大学医学部附属病院 助教
令和3年4月 うらた皮膚科 副院長
令和3年11月 うらた皮膚科 院長